Cushing〈クッシング〉病で過剰分泌されるのはどれか。
- 成長ホルモン
- 抗利尿ホルモン
- 性腺刺激ホルモン
- 甲状腺刺激ホルモン
- 副腎皮質刺激ホルモン
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
5.副腎皮質刺激ホルモン
解説
✔ クッシング病とは?:脳からの「過剰な命令」が原因 🧠
クッシング病とは、脳の下にある「下垂体」にできた良性の腫瘍(腺腫)から、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌される病気です。 この過剰なACTHの命令によって、腎臓の上にある「副腎」が過剰に刺激され、コルチゾールというホルモンが大量に作られてしまいます。
✔ クッシング「病」とクッシング「症候群」の違い
この2つの用語はしばしば混同されますが、原因によって明確に区別されます。

つまり、「クッシング病」は、数あるクッシング症候群の原因の中の一つであり、「下垂体が原因であるもの」を特に指す、という関係です。
✔ 各選択肢について
1. 成長ホルモン
- ❌ 誤り
- 同じ下垂体前葉から分泌されますが、クッシング病とは直接関係ありません。
2.抗利尿ホルモン
- ❌ 誤り
- これは下垂体後葉から分泌され、体内の水分バランスを調節するホルモンです。
3.性腺刺激ホルモン
- ❌ 誤り
- 同じ下垂体前葉から分泌されますが、クッシング病ではむしろ抑制されることがあります。
4.甲状腺刺激ホルモン
- ❌ 誤り
- 甲状腺を刺激するホルモンであり、副腎皮質とは異なる系統です。
5.副腎皮質刺激ホルモン
- ✅ 正解
- クッシング病では、下垂体の腫瘍からこのホルモンが過剰に分泌され、副腎からのコルチゾール過剰を引き起こします。
出題者の“声”

この問題の狙いは、「クッシング病」と「クッシング症候群」の違いを、その原因とホルモン動態に基づいて正確に理解しておるか、という点にある。 病態を理解する上で、「どこが病気の“親玉”か」を見極めることは極めて重要じゃ。
- 下垂体が親玉 → ACTH↑ → コルチゾール↑ → クッシング病
- 副腎が親玉 → ACTH↓(命令不要のため)→ コルチゾール↑ → クッシング症候群(副腎性)
この、ホルモンのフィードバック機構まで含めた因果関係を整理できれば、内分泌疾患の多くはスッキリ理解できるはずじゃ。
臨床の“目”で読む

ー放射線技師は、原因究明の「目」となるー
クッシング症候群が疑われた患者さんに対して、その原因が「クッシング病(下垂体由来)」なのか、「副腎腫瘍」なのかを特定するために、画像診断は決定的な役割を果たします。
- ① 下垂体MRI検査
- 「クッシング病」を疑う場合、その原因である下垂体の微小な腺腫(マイクロアデノーマ)を見つけるために、造影剤を用いたダイナミックMRI検査が行われます。数ミリ程度の非常に小さな腫瘍を見つけるためには、高度な撮影技術と装置の性能が求められます。
- ② 副腎CT/MRI検査
- 下垂体に異常が見つからない場合や、血液検査でACTHが低い場合は、「副腎腫瘍」を疑い、副腎のCTやMRI検査が行われます。これにより、副腎にコルチゾールを産生する腫瘍がないかを確認します。
- ③ 患者さんへの配慮
- コルチゾールの過剰により、患者さんは骨がもろくなっていたり(骨粗鬆症)、皮膚が薄く傷つきやすくなっていたりすることがあります。検査の際に、体位変換などで体をぶつけたりしないよう、普段以上に丁寧な介助を心がけることも重要です。
今日のまとめ
- クッシング病は、下垂体の腫瘍が原因で副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰になる病気である。
- 過剰なACTHの刺激により、副腎からコルチゾールが過剰に分泌され、特徴的な症状(満月様顔貌など)が現れる。
- 「クッシング病」は、コルチゾールが過剰になる状態の総称である「クッシング症候群」の一種である。
- 放射線技師は、原因を特定するための下垂体MRIや副腎CTといった精密な画像検査を通じて、診断に大きく貢献する。



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