第77回 午後 47

基礎医学大要

正常月経周期の順序で正しいのはどれか。

  1. 月経 → 黄体期 → 排卵 → 卵胞期 → 月経
  2. 月経 → 黄体期 → 卵胞期 → 排卵 → 月経
  3. 月経 → 排卵 → 卵胞期 → 黄体期 → 月経
  4. 月経 → 卵胞期 → 黄体期 → 排卵 → 月経
  5. 月経 → 卵胞期 → 排卵 → 黄体期 → 月経

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


5.月経 → 卵胞期 → 排卵 → 黄体期 → 月経


解説

✔ 月経周期とは?:4つのステップで理解する 🌙

月経周期とは、月経の開始から次の月経が始まるまでの約28日間のサイクルです。この期間中、女性の体の中では、妊娠に備えて卵巣と子宮が変化しています。
このサイクルは、大きく4つのステップに分けられます。

  • ① 月経期 (リセット)
    • 妊娠が成立しなかったため、不要になった子宮内膜が血液と共に剥がれ落ちる時期。次のサイクルの準備が始まります。
  • ② 卵胞期 (卵を育てる時期)
    • 脳からの命令(FSH: 卵胞刺激ホルモン)を受け、卵巣の中で卵子を包む袋(卵胞)が成熟していきます。卵胞からはエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌され、子宮内膜を厚くしていきます。
  • ③ 排卵期 (卵が飛び出す時期)
    • 十分に成熟した卵胞から、脳からの命令(LH: 黄体形成ホルモンの急上昇=LHサージ)を合図に、卵子がポンっと飛び出します。
  • ④ 黄体期 (着床を待つ時期)
    • 排卵後の卵胞は「黄体」という組織に変化し、プロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。プロゲステロンは、厚くなった子宮内膜を受精卵が着床しやすいフカフカのベッドのような状態に整えます。

この流れから、正常な月経周期の順序は「月経 → 卵胞期 → 排卵 → 黄体期」となります。


出題者の“声”

この問題の狙いは、月経周期の4つの時期を、単なる単語の暗記ではなく、一連の流れとして理解しておるかを問うことにある。

「卵胞期」と「黄体期」は名前が似ていて混乱しやすいが、

  • 卵胞が育つ時期だから → 卵胞期
  • 排卵して排卵後の抜け殻が黄体になるから → 黄体期

という因果関係で捉えれば、決して間違うことはない。 この「流れ」を理解していれば、どのホルモンがどの時期に活躍するかも、自然と頭に入ってくるはずじゃ。


臨床の“目”で読む

ー月経周期と放射線検査:現代の考え方ー

放射線技師にとって、月経周期の知識は、患者さんの安全を守り、より質の高い検査を提供するために重要です。ただし、かつて重視された「10日ルール」の扱いは、現在では大きく変化しています。

  • ① 「10日ルール」の歴史と現在地
    • かつて、妊娠に気づいていない時期の胎児被ばくを避けるため、「月経開始日から10日以内(排卵前)に骨盤周辺のX線検査を行う」という「10日ルール」が提唱されていました。 しかし、ICRP(国際放射線防護委員会)は後の勧告で、診断域のX線線量では胎児への確定的影響のリスクは極めて低いこと、またルールを厳格に適用すると診断が遅れる不利益があることなどから、このルールを画一的に適用する必要はないとの見解を示しています。
  • ② 現代の放射線防護の原則
    • 現在の主流は、日付で一律に判断するのではなく、以下の原則に基づき個々の患者さんごとに判断することです。
      • 正当化: そのX線検査は、本当に今すぐ必要か?
      • 最適化: 検査が必要な場合、線量を可能な限り低減する工夫はされているか?
      • 妊娠の可能性の確認: 最も直接的な方法として、問診や掲示で患者さんに妊娠の可能性を確認する。
      • 代替法の検討: MRIや超音波など、放射線被ばくのない他の検査で代替できないか?
  • ③ 検査の質を向上させるための知識(マンモグラフィ)
    • 一方で、乳房撮影(マンモグラフィ)においては、月経周期の知識が検査の質と快適性に直結します。月経終了後から排卵前までの期間(卵胞期)は、ホルモンの影響で乳腺の張りが少なく、圧迫による痛みも比較的軽いため、検査に最適な時期とされています。

今日のまとめ

  1. 正常な月経周期の順序は、「月経 → 卵胞期 → 排卵 → 黄体期」である。
  2. かつて存在した「10日ルール」は、現在では画一的に適用されず、検査の正当化・最適化、妊娠の可能性の直接確認が重視される。
  3. マンモグラフィにおいては、卵胞期(月経終了後~排卵前)が、痛みが少なく画質の良い検査に適した時期である。
  4. 放射線技師は、月経周期に関する最新の防護の考え方と、検査の質向上に繋がる知識の両方を理解しておく必要がある。

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