第77回 午後 65

理工学・放射線科学

電界と磁界に関する量と単位の組合せで誤っているのはどれか。

  1. 透磁率 — H/m
  2. 導電率 — S/m
  3. 誘電率 — F/m
  4. 磁気抵抗 — A・Wb
  5. 電界の強さ — V/m

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


4.磁気抵抗 — A・Wb


解説

✔ 物理単位:「丸暗記」から「理解」へ 🧠

電磁気の単位は、一見すると複雑な記号の羅列に見えます。しかし、その多くは「電気回路(オームの法則)」との対比で、意味を理解しながら覚えることができます。

✔ まずは簡単なものから

  • 電界の強さ (E) → V/m
    • 「電界」とは、電気が流れる「坂道」のようなものです。その強さは、「どれだけ急な坂道か」で決まります。 坂道の急さは、1メートル(m)あたりに、どれだけの電圧(V)がかかっているかで表せます。 よって、単位は V/m(ボルト毎メートル)となります。

✔ 似たもの同士で覚える

  • 誘電率 (ε) → F/m
    • 物質がどれだけ電気(電界)を蓄えられるかを示す能力です。電気を蓄える能力を持つ素子は「コンデンサ」で、その単位はF(ファラド)です。誘電率は、その物質が1メートル(m)あたりに持つ蓄電能力なので、F/m(ファラド毎メートル)となります。
  • 透磁率 (μ) → H/m
    • 物質がどれだけ磁気(磁界)を通しやすいかを示す能力です。磁気を蓄える能力を持つ素子は「コイル(インダクタ)」で、その単位はH(ヘンリー)です。透磁率は、その物質が1メートル(m)あたりに持つ磁気を通す能力なので、H/m(ヘンリー毎メートル)となります。

✔ 誤りの選択肢:「磁気抵抗」

ここで、電気回路と磁気回路のそっくりさん関係を使います。

この対比から、磁気抵抗 (Rₘ) は以下のように導けます。

  •     Rₘ = F / Φ

したがって、その単位は [A / Wb](アンペア毎ウェーバー)となるはずです。 (※ちなみに、H(ヘンリー)の定義は [Wb/A] なので、[A/Wb] は [H⁻¹](ヘンリーの逆数)とも表せ、これも正しい単位です)


出題者の“声”

この問題の狙いは、電磁気の「量と単位」の対応関係を、丸暗記ではなく、その物理的な意味や他の法則との関連性で理解しておるかを問うことにある。

特に、電気回路と磁気回路のそっくりさん関係は、この分野を理解する上で最強の武器じゃ。

  • 電圧 ↔ 起磁力
  • 電流 ↔ 磁束
  • 電気抵抗 ↔ 磁気抵抗

この対比さえ頭に入っておれば、磁気抵抗の単位が「起磁力 ÷ 磁束」すなわち「A / Wb」であることは、オームの法則(R = V / I)から導き出せる。選択肢の「A・Wb」が誤りであることは一目瞭然サービス問題じゃ。


臨床の“目”で読む

ーなぜ放射線技師が「電磁気単位」を知る必要があるのか?ー

これらの単位は、私たちが毎日使うMRIやX線装置の動作原理そのものだからです。

  • ① MRIの原理(透磁率・磁気抵抗)
    • MRIの強力な静磁場や、RFパルスを発生させるコイルは、まさに磁気回路の塊です。透磁率 (H/m)や磁気抵抗 (H⁻¹)は、磁場をいかに効率よく発生・制御できるかを決める基本パラメータです。
  • ② MRIのRFコイル(誘電率)
    • RFコイル(アンテナ)は、電気回路におけるコンデンサとコイルの共振回路です。誘電率 (F/m)は、患者さんの体(特に脂肪など)がコンデンサとしてどう作用するかに関わり、画像のノイズや均一性に影響します。
  • ③ X線装置の高電圧回路(誘電率)
    • コンデンサ式X線装置などは、エネルギーを一時的に蓄えるためにコンデンサを用います。その性能は誘電率 (F/m)に関連するコンデンサの容量(F)によって決まります。

このように、一見すると臨床と無関係な物理単位が、実は高度な医療機器の性能を支える土台となっているのです。


今日のまとめ

  1. 電磁気の単位は、丸暗記ではなく「何を表す量か」で理解する。
  2. 電界の強さ: V/m (電気の坂道の急さ)
  3. 誘電率: F/m (電気の蓄えやすさ)
  4. 透磁率: H/m (磁気の通しやすさ)
  5. 磁気抵抗の単位は、電気のオームの法則との対比かA/Wb (または H⁻¹)

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