インバータ式X線高電圧装置で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 単相電源ではフィードバック制御はできない。
- 単相電源で三相X線装置並みの線質を得られる。
- 装置の定格出力は電源インピーダンスに依存する。
- インバータ回路は半導体制御素子6個をブリッジ形に接続する。
- 非共振形装置の管電圧制御はインバータ周波数を変化させることで行う。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.単相電源で三相X線装置並みの線質を得られる
3.装置の定格出力は電源インピーダンスに依存する
解説
回路やインバータと聞いただけでアレルギー反応が…という学生さん、わかります。 この問題は、丸暗記ではなく、「なぜインバータ式が発明されたのか?」という目的で考えると、驚くほど簡単に解けます。
✔ インバータ式とは?:「家庭用電源」で「業務用パワー」を出す魔法
昔のX線装置は、高いX線品質(安定した電圧)を得るために、「三相200V」のような強力な業務用電源(三相電源)が必須でした。そのため、装置は巨大で高価、設置場所も限られました。
そこで登場したのがインバータ式です。 インバータとは、一言でいえば「電気をものすごい速さで刻む装置」です。
- 家庭用の「単相電源」(50/60Hzのゆるい波)を取り込む。
- インバータが、この電気を数千〜数万Hz(ヘルツ)の超高速な波に作り変える(高周波化)。
- この「高周波」の電気を使うと、非常に小型の変圧器で、非常に滑らか(低リプル)な高電圧を作り出せる。
この「高周波化」という魔法のおかげで、インバータ式は「家庭用電源(単相)なのに、業務用(三相)並みのキレイなX線が出せる」という革命を起こしました。
✔ 各選択肢について
1. 単相電源ではフィードバック制御はできない。
- ❌ 誤り
- むしろ逆です。インバータは、電気を高速でON/OFFする「超高性能な電子スイッチ」です。そのため、出力される電圧や電流を常に監視し、ズレがあれば瞬時に補正する「フィードバック制御」が大の得意です。
2.単相電源で三相X線装置並みの線質を得られる。
- ✅ 正解
- これがインバータ式の最大のメリット(発明された理由)です。 高周波化により、電圧が非常に安定(低リプル)するため、単相電源でも三相電源並みの高品質なX線(線質)が得られます。
3.装置の定格出力は電源インピーダンスに依存する。
- ✅ 正解
- これがインバータ式の唯一ともいえる弱点です。 「電源インピーダンス」とは、簡単に言えば「その電源コンセントの底力」です。 インバータ装置自体は高性能でも、繋ぐコンセントが弱かったり(古い建物の細い配線など)、細長い延長コードを使ったりすると、装置は全力を出せません。 (※インピーダンスが高い=力が弱い→装置の最大パワー(定格出力)が落ちる)
4.インバータ回路は半導体制御素子6個をブリッジ形に接続する。
- ❌ 誤り
- 「素子6個のブリッジ接続」は、インバータではなく、古い「三相整流回路」の特徴です。インバータ回路(単相の場合)は、通常4個の素子で構成されます。
5.非共振形装置の管電圧制御はインバータ周波数を変化させることで行う。
- ❌ 誤り
- 管電圧の制御方法には2種類あります。
- 周波数を変える → 「共振形」
- ON/OFFの時間幅(デューティ比)を変える → 「非共振形」
出題者の“声”

この問題の狙いは、「インバータ式の強みと弱みを、正しく理解しているか」を問うことにある。
この装置の強みは「単相電源で三相並みの線質」。 そして弱みは、「電源の強さ(インピーダンス)に性能が左右される」こと。 この2つが、インバータ式の本質じゃ。
4番や5番は、整流回路や制御方式の知識とわざと混同させて、受験生の理解の正確さを見ようというワナ。インバータの本質さえ掴んでいれば、迷うことはないはずじゃ。
臨床の“目”で読む

ーなぜ放射線技師がインバータを理解する必要があるのか?ー
この「強み」と「弱み」は、臨床現場でのあるあるに直結しています。
- 強み
- インバータ式のおかげで、X線装置は小型・軽量化し、特別な電源工事が不要になりました。ポータブル撮影装置や、健診車(レントゲンバス)、小規模なクリニックで高品質なX線撮影ができるのは、すべてインバータのおかげです。
- 弱み
- 電源に依存: 「この病室のコンセントから電源を取ると、なぜか最大パワーが出ない…」 「古い棟で撮影すると、露出不足になることがある…」 といったトラブルは、まさにこの「電源インピーダンス」が原因です。装置の性能は、壁のコンセントの底力に依存することを、私たちは知っておかなければなりません。
今日のまとめ
- インバータ式は、電気を高周波に変換する魔法の装置。
- 強み:単相電源でも、三相電源並みの高品質なX線が出せる。
- 弱み:性能が電源の強さ(電源インピーダンス)に左右される。



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