散乱線除去グリッドで正しいのはどれか。
- 平行グリッドには使用距離限界がある。
- グリッド露出係数は全放射線透過率の逆数で表す。
- グリッド密度は中心部1 cmの吸収はくの重さで表す。
- グリッド比は中心部の吸収はくの高さに対するはくの間隔の比で表す。
- イメージ改善係数は全放射線透過率に対する一次放射線透過率の比で表す。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.グリッド露出係数は全放射線透過率の逆数で表す。
解説
この問題は、きれいなX線写真を撮るための必須アイテム「グリッド」の性能を表す数字(定義)を、正しく言えますか?という問題です。 文字で覚えると必ず混乱するので、「ブラインド(窓の遮光カーテン)」をイメージして理解しましょう。
✔ グリッドとは?:X線の「ブラインド」
グリッドは、鉛の薄い板(吸収はく)がブラインドのように並んでいる板です。 これを使うと、真っ直ぐ飛んでくる良いX線(一次線)だけを通し、斜めから来る邪魔なX線(散乱線)をカットしてくれます。
✔ グリッドとは?:X線の「ブラインド」
- グリッド比
- ブラインドの深さ:鉛の板がどれくらい「背が高い」かを示します。背が高い(比が高い)ほど、斜めの散乱線を強力にカットできます。
- 式: 高さ (h) ÷ 隙間 (D)
- グリッド密度
- ブラインドの細かさ:1cmの幅の中に、鉛の板が「何本」入っているかを示します。
- 重さではありません。「本数」です。
- グリッド露出係数
- X線がどれだけ減っちゃうか:グリッドを使うと、散乱線だけでなく良いX線も少しカットされてしまうため、全体的にX線量が減ってしまいます。「グリッドなしの時と比べて、何倍のX線が必要になるか」を示すのがこの係数です。
- 式: 1 ÷ 全透過率 (Tt)(※全透過率が 0.2 (20%) なら、露出係数は 1 ÷ 0.2 = 5倍 必要ということ)
✔ 各選択肢について
1. 平行グリッドには使用距離限界がある。
- ❌ 誤り
- 鉛の板がすべて平行に並んでいる「平行グリッド」は、距離に関係なく使えます。 距離の制限があるのは、鉛の板が一点に向かって傾いている「集束(フォーカス)グリッド」の方です。
2.グリッド露出係数は全放射線透過率の逆数で表す。
- ✅ 正解
- 「どれだけX線が通り抜けたか(全透過率)」の逆数が、「どれだけX線を増やさなきゃいけないか(露出係数)」になります。
3.グリッド密度は中心部1 cmの吸収はくの重さで表す。
- ❌ 誤り
- 密度と聞くと「重さ」を想像しがちですが、グリッドの場合は「本数(本/cm)」のことです。
4.グリッド比は中心部の吸収はくの高さに対するはくの間隔の比で表す。
- ❌ 誤り
- これは分母と分子が逆です。 グリッド比 = 高さ (h) ÷ 間隔 (D) です。
5.イメージ改善係数は全放射線透過率に対する一次放射線透過率の比で表す。
- ❌ 誤り
- イメージ改善係数は、その名の通り「どれだけ画像(イメージ)が良くなったか」、つまり「コントラストが何倍よくなったか」を表す指標です。透過率の比ではありません。
出題者の“声”

この問題の狙いは、「定義をあいまいに覚えている学生をふるい落とす」ことじゃ。 特に「グリッド比」の分母分子を逆にするひっかけや、「密度」を重さと言い換えるひっかけは、国家試験の伝統芸能みたいなものじゃ。
- 比 = 高さ ÷ 隙間
- 密度 = 本数
- 露出係数 = 逆数
このキーワードだけを、呪文のように覚えておくのじゃ。そうすれば、どんなひっかけ問題が来ても怖くないぞ。
臨床の“目”で読む

ー「グリッドなし」でもグリッドの知識が必要?ー
近年、FPDの進化とともに「バーチャルグリッド(仮想グリッド処理)」という技術が普及しています。これは、物理的なグリッドを使わずに、画像処理(AIなど)で散乱線成分を除去する技術です。
「じゃあ、グリッドの知識なんてもう要らないじゃん!」 と思うかもしれませんが、それは大きな間違いです。
- ① ソフトウェア上で「グリッド比」を選ぶ
- バーチャルグリッドを使う際、装置のメニューで「グリッド比(6:1, 8:1, 10:1など)」を選択しなければならないことが多くあります。
- 「グリッド比」の定義(高さ÷隙間)と効果を知っていれば、「腹部で散乱線が多いから、高比率(10:1相当)を選んでコントラストを上げよう」と判断できます。
- 逆に知識がないと、不必要に高い比率を選んでしまい、画像がザラザラ(ノイズ過多)になるリスクがあります。
- ② 「露出係数」の概念は消えない
- 物理的なグリッドを使わないため、X線が遮られることはありませんが、散乱線を除去する処理を行うと、見かけ上のS/N比(信号対雑音比)は変化します。
- 「バーチャルだから線量は適当でいい」わけではなく、きれいな散乱線除去画像を得るためには、「露出係数」の考え方に基づいた十分な線量(mAs)を担保する必要があります。
最新技術を使いこなすためにも「グリッド比が高いとどうなるか」「露出係数とは何か」という基礎知識が、今まで以上に重要になっているのです。
今日のまとめ
- グリッド露出係数は、全透過率の逆数(どれだけX線を増やす必要があるか)。
- グリッド比は、高さ ÷ 隙間。
- グリッド密度は、1cmあたりの本数。
- 平行グリッドに距離の制限はない。(制限があるのは集束グリッド)
- 現場では「グリッドを使う=X線量を増やす(mAsを上げる)」という判断が瞬時に求められる。



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