X線透視撮影装置で正しいのはどれか。
- 近接式は術者のX線防護が不要である。
- 近接式は遠隔式に比べ患者の正確な整位変換が困難である。
- 透視積算タイマは連続して15分まで警告なしで使用できる。
- アンダーテーブルX線管形はオーバーテーブルX線管形に比べ術者の被ばくは少ない。
- オーバーテーブルX線管形はアンダーテーブルX線管形に比べ患者の体位変換が困難である。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
4.アンダーテーブルX線管形はオーバーテーブルX線管形に比べ術者の被ばくは少ない。
解説
この問題は、透視装置のX線管が「上にあるか(オーバー)」、「下にあるか(アンダー)」によって、術者の被ばくや使い勝手がどう変わるかを問うています。
✔ アンダーテーブル vs オーバーテーブル:被ばくの分かれ道 🛡️
X線透視で、術者(医師や技師)が被ばくする最大の原因は、患者さんの体から跳ね返ってくる「散乱線」です。 X線管の位置によって、この散乱線の飛び方が全く異なります。
- アンダーテーブル方式(X線管が下 👇)
- 構造
- X線管がベッドの下、検出器(I.I./FPD)が患者の上にあります。
- 散乱線の行方
- X線は下から患者に入射します。散乱線の多くは、入ってきた方向(つまり下方向)に強く跳ね返ります。
- 術者への影響
- 散乱線は足元(床方向)に向かって飛ぶため、術者の重要臓器(水晶体や甲状腺)への被ばくは少なくなります。散乱線の発生源(患者下面)から術者の頭部までの「距離」を確保できるため、線量が下がります(防護の三原則:距離)。
- 主な用途
- 術者が患者のすぐそばに立つ血管造影(アンギオ)、心カテ、手術用Cアームなどは、この方式が鉄則です。
- 構造
- オーバーテーブル方式(X線管が上 👆)
- 構造
- X線管が患者の上、検出器がベッドの下にあります。
- 散乱線の行方
- X線は上から患者に入射します。散乱線は、入ってきた方向(つまり上方向)に跳ね返ります。
- 術者への影響
- 散乱線のシャワーを上半身に直接浴びる形になり、術者の被ばくが多くなります。だからこそ、近接操作する際は防護衝立や防護カーテンが必須です。
- 主な用途
- 消化管造影(胃バリウム)や内視鏡検査で使われます。垂直方向のスペースが広く、内視鏡・処置具の操作がしやすいベッド周りに十分な作業空間が取れる患者の体位変換が容易 といったメリットがあるためです。
- 構造
✔ 各選択肢について
1. 近接式は術者のX線防護が不要である。
- ❌ 誤り
- 「近接式」とは、術者が患者のすぐそばで操作するタイプです。散乱線を直接浴びるリスクが高いため、防護エプロンや防護メガネなどの徹底的な防護が必須です。
2.近接式は遠隔式に比べ患者の正確な整位変換が困難である。
- ❌ 誤り
- 近接式は、術者が患者に直接触れて体位を直せるため、微調整や整位は容易です。
3.透視積算タイマは連続して15分まで警告なしで使用できる。
- ❌ 誤り
- 医療法施行規則により、透視時間が「5分」を超えると、警告音(ブザーなど)が鳴るように義務付けられています。
4.アンダーテーブルX線管形はオーバーテーブルX線管形に比べ術者の被ばくは少ない。
- ✅ 正解
- 解説の通り、散乱線が足元(床方向)へ逃げる上に、散乱線源からの距離も取れるため、術者の上半身への被ばくは大幅に少なくなります。
- ただし手技の特性上(心臓カテーテルや脳血管カテーテルなど)、透視時間は長くなりやすく術者被ばくは多い傾向にあります。
5.オーバーテーブルX線管形はアンダーテーブルX線管形に比べ患者の体位変換が困難である。
- ❌ 誤り
- オーバーテーブル方式(X線TV装置など)は、広い天板上で患者さんが動けるように設計されており、体位変換は容易です。
出題者の“声”

この問題の狙いは、「なぜ血管造影室の装置は下がX線管、胃透視の装置は上がX線管なのか?」という、臨床現場の当たり前を、理屈で説明できるかを問うことにある。
- アンダーテーブル
- 術者が患者の横に立ち、「Cアーム(機械)を動かす」手技 → 被ばく低減とアームの自由度が優先。
- オーバーテーブル
- 患者自身が「ゴロゴロ動く(体位変換)」、あるいはベッド上で内視鏡などを操作する手技 → ベッド上の広さと作業性が優先。
この「使い分けの理由」さえ分かっていれば、4番が正解であることは常識として判断できるはずじゃ。そして「透視タイマーは5分」。これは法律で決まったルールじゃから、数字そのものを覚えておくこと。
臨床の“目”で読む

ーなぜ、被ばくが多い「オーバーテーブル」がなくならないのか?ー
「被ばくが少ないなら、全部アンダーテーブルにすればいいじゃないか」と思うかもしれません。実際アンダーテーブルのX線TVシステムもあります。しかし、臨床にはオーバーテーブルの方が合理的な場面があります。
- ① 内視鏡検査(ERCPなど)の作業性
- 内視鏡医は、患者さんの口からカメラを入れ、ベッドの上で細かい処置を行います。 オーバーテーブルなら、X線管は高い位置にあるため、ベッド上の「ワーキングスペース」が広く確保でき、医師はストレスなく検査ができます。
- ② 圧迫筒の存在
- 胃のバリウム検査では、お腹を上からグッと押す「圧迫筒」を使います。これは構造上、X線管側(オーバーテーブル)についている方が、重力を利用でき、操作もしやすいため合理的です。
- ③ アンダーテーブルの「距離」の恩恵
- 一方、IVR(カテーテル治療)では、術者は長時間そばに立ち続けます。アンダーテーブルなら、最も強い散乱線源(患者の背中側)から術者の頭部までの距離が物理的に遠くなります。放射線防護において「距離」は最強の盾です。だからこそ、IVRではアンダーテーブルが絶対なのです。
このように、装置の形は「被ばく防護」と「手技のやりやすさ(操作性)」の天秤にかけて選ばれているのです。
今日のまとめ
- アンダーテーブル方式(管球が下)は、散乱線が下向きに飛び、線源からの距離も取れるため、術者の被ばくが少ない。→ IVR・心カテ向き。
- オーバーテーブル方式(管球が上)は、ベッド上の空間が広いため処置がしやすいが、術者の被ばくは多い。→ 消化管造影・内視鏡向き。
- 透視積算タイマーの警告義務は「5分」である。
- 装置の方式は、「誰がどこで操作するか(被ばくリスク)」と「手技の邪魔にならないか(操作性)」で選ばれている。



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