歯科用X線撮影で正しいのはどれか。
- セファロ撮影は2倍拡大撮影である。
- セファロ撮影は歯髄観察目的で行われる。
- パノラマX線撮影ではスリットが用いられる。
- 口内法用X線撮影は2方向撮影によって行われる。
- 口内法X線撮影装置の管電圧は100 kVを用いる。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
3.パノラマX線撮影ではスリットが用いられる
解説
この問題は、歯科で使われる3大撮影法(パノラマ・セファロ・口内法)の、それぞれの特徴を正しく理解しているかを問う問題です。
✔ パノラマ撮影とは?:「歯並び」を広げて見せる断層撮影 🦷
パノラマ撮影は、馬の蹄(ひづめ)のような形をした顎の骨と歯列を、1枚の平らな写真に展開して写す技術です。 この撮影の正体は、実は「断層撮影(トモグラフィ)」の一種です。
- 原理
- X線管とフィルムが、患者さんの顔の周りをグルっと回ります。
- スリットの役割
- このとき、広いX線(コーンビーム)を使ってしまうと、余計な骨(頸椎など)が重なって何も見えません。そこで、「スリット(細い隙間)」を使ってX線を細いビームにし、見たい歯列のライン(断層面)だけを少しずつスキャンするように撮影します。
つまり、「パノラマ = スリットを使った曲面断層撮影」。これがこの撮影の最大の特徴です。
✔ 各選択肢について
1. セファロ撮影は2倍拡大撮影である。
- ❌ 誤り
- セファロ(頭部規格撮影)の目的は、矯正治療のために「骨格のサイズや角度」を正確に測ることです。
- 2倍に拡大してしまったら、計算が面倒で使い物になりません。 焦点-フィルム間距離(FFD)を150cm以上と長く取り、拡大率をできるだけ小さく(約1.1倍程度)、かつ一定(規格化)にして撮影します。
2.セファロ撮影は歯髄観察目的で行われる。
- ❌ 誤り
- 歯髄(歯の神経)のような細かい部分を見るのは、口内法(デンタル)の仕事です。
- セファロは、「顔の骨格」や「顎の成長」を見るための、いわば「設計図」のような写真です。
3.パノラマX線撮影ではスリットが用いられる。
- ✅ 正解
- 解説の通り、余計な像を消して歯列だけを浮かび上がらせるために、スリットの使用は必須です。
4.口内法用X線撮影は2方向撮影によって行われる。
- ❌ 誤り
- 口内法(小さなフィルムを口の中に入れる撮影)は、基本的に1方向のみです。 整形外科のように「正面・側面」と撮ることはありません。
5.口内法X線撮影装置の管電圧は100 kVを用いる。
- ❌ 誤り
- 100 kVは胸部や骨盤などを撮る時の「高圧撮影」の条件です。
- 歯は小さく、エナメル質や象牙質の微細な違いを見分ける必要があるため、「高コントラスト」が求められます。 そのため、管電圧は60〜70 kV程度の低圧で撮影するのが鉄則です。 (※ 低電圧 = 高コントラスト)
出題者の“声”

この問題の狙いは、歯科撮影の「目的と手段」が頭の中でつながっているかを確かめることじゃ。
- 全体を見たい(パノラマ) → 邪魔な骨を消したい → スリット断層撮影を使う。
- 長さを測りたい(セファロ) → 拡大させたくない → 距離を離して規格撮影をする。
- 細かく見たい(口内法) → コントラストを上げたい → 低電圧(60kV)で撮る。
この「〜したいから、〜する」という理屈さえ分かっていれば、数字の丸暗記など不要じゃよ。
臨床の“目”で読む

ー歯科・口腔外科領域での「使い分け」ー
放射線技師が歯科撮影を行う際、医師が「何を見たいか」を理解しておくことが重要です。
- ① パノラマ(地図)
- 「親知らずがどこにあるか」「永久歯は揃っているか」「顎関節の形はどうか」といった、全体像(地図)を把握するために撮ります。スリットのおかげで、邪魔な背骨などが消え、歯列がきれいに並んで見えます。
- ② 口内法(顕微鏡)
- 「虫歯の深さ」「根っこの先の膿(うみ)」など、局所の微細な病変を見るために撮ります。低電圧撮影による高いコントラストのおかげで、歯の微妙な溶け具合まで診断できます。
- ③ セファロ(定規)
- 矯正歯科医が、治療の前と後で「顎がどう動いたか」「骨がどう成長したか」をミリ単位で計測(分析)するために撮ります。だからこそ、毎回同じ倍率で撮れる「規格性」が命なのです。
今日のまとめ
- パノラマ撮影は「曲面断層撮影」であり、スリットを使って歯列だけを描出する。
- セファロ撮影は「頭部規格撮影」であり、計測のために拡大率を一定にする。
- 口内法は、高コントラストを得るために低管電圧(60〜70 kV)を用いる。
- 歯科撮影は「全体(パノラマ)」「詳細(口内法)」「計測(セファロ)」と役割が明確に分かれている



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