第77回 午後 86

エックス線撮影技術学

X線撮影体位を示す。撮影法で正しいのはどれか。

  1. Lorenz〈ローレンツ〉法
  2. Guthmann〈グースマン〉法
  3. Anthonsen〈アントンセン〉法
  4. Rosenberg〈ローゼンバーグ〉法
  5. Lauenstein〈ラウェンシュタイン〉法

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


4.Rosenberg〈ローゼンバーグ〉法


解説

この問題は、写真の体位を見て「これは何の病気を見るための、何という撮影法か?」を答える問題です。

写真を見ると、患者さんは「立ったまま(荷重)」、膝を少し「曲げて(屈曲)」います。まるでスキーのジャンプ姿勢のようなこの独特なポーズ。 これが、Rosenberg(ローゼンバーグ)法です。

✔ Rosenberg法とは?:「隠れた膝のすり減り」を見つける 🦴

変形性膝関節症(OA)では、軟骨がすり減って関節の隙間が狭くなります。しかし、普通の「膝立ち正面」撮影では、初期のすり減りを見逃してしまうことがあります。 なぜなら、膝の軟骨は「後ろ側」からすり減りやすいからです。

そこでRosenberg法の出番です。

  • 立位(荷重): 体重をかけて、隙間を狭くする。
  • 膝屈曲(約30〜45°): 膝を曲げることで、すり減りやすい「後ろ側」をX線の通り道に持ってくる。
  • 斜入(10°尾頭方向): 関節の隙間に合わせてX線を撃ち込む。

この3点セットにより、初期の変形性膝関節症を鋭敏に見つけることができます。

✔ 紛らわしいカタカナ名を「部位」で仕分ける!

  • Rosenberg(ローゼンバーグ)
    • 立位・屈曲位
    • OA(変形性膝関節症)を見る。
  • Lauenstein(ラウェンシュタイン)
    • カエル足(開排)
    • 大腿骨頭〜頸部を側面から見る。
  • Lorenz(ローレンツ)
    • 股カエル足の親戚(軸位)
    • 股関節脱臼などを見る。
  • Guthmann(グースマン)
    • 骨盤産科計測
    • お産ができるか骨盤の広さを測る。
  • Anthonsen(アントンセン)
    • 踵(かかと)の関節(距骨下関節)を見る。

✔ 各選択肢について

1. Lorenz〈ローレンツ〉法

  • 誤り
  • 股関節の撮影法です。Lauenstein法と似ていますが、X線の入射角などが異なります。

2.Guthmann〈グースマン〉法

  • 誤り
  • 骨盤計測(ザイツ法、マルティウス法、グースマン法)の一つです。妊婦さんの骨盤の入口・出口の広さを測るためのもので、膝ではありません。

3.Anthonsen〈アントンセン〉法

  • 誤り
  • 足首(距骨下関節)を見る撮影法です。

4.Rosenberg〈ローゼンバーグ〉法

  • 正解
  • 解説の通り、膝関節の荷重屈曲撮影です。

5.Lauenstein〈ラウェンシュタイン〉法

  • 誤り
  • 股関節の撮影法です。仰向けで膝を曲げてガバっと開く(カエル足)姿勢が特徴的です。

出題者の“声”

この問題の狙いは、カタカナの名前をただ暗記しているかではなく、「実際のポジショニング(患者さんのポーズ)」が頭に入っているかを問うことにある。

写真の患者さんは、「立って、膝を曲げている」。 この「荷重」と「屈曲」というキーワードから連想できるのは、膝のRosenberg法しかない。

  • Lauenstein(ラウェンシュタイン)やLorenz(ローレンツ)は、寝て、股を開くポーズ。
  • Rosenberg(ローゼンバーグ)は、「立って、膝を曲げる」ポーズ。

この「ポーズの違い」さえイメージできていれば、名前が似ていても迷うことはないはずじゃ。


臨床の“目”で読む

ー整形外科医が「ローゼンバーグで!」と頼む理由ー

膝が痛い患者さんが来たとき、普通のレントゲン(立位正面)では「異常なし」に見えることがあります。 しかし、患者さんは「階段を降りる時(=膝を曲げて体重がかかる時)が痛い」と訴えます。

まさにその「痛い姿勢」を再現して撮影するのがRosenberg法です。

この撮影をすると、普通のレントゲンでは見えなかった「関節の隙間の消失(軟骨のすり減り)」がハッキリ写ることが多々あります。 「早期発見のための、決定的な一枚」。それがRosenberg法なのです。


今日のまとめ

  1. Rosenberg法は、膝関節の立位・荷重・屈曲(30〜45°)撮影である。
  2. 目的は、変形性膝関節症(OA)の早期発見(膝の後ろ側の観察)。
  3. LauensteinとLorenzは「股関節」
  4. Guthmannは「骨盤計測」
  5. Anthonsenは「足首(距骨下関節)」

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