胃部X線造影検査で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 検査後は飲水を制限する。
- 胃小区の描出は二重造影で行う。
- 炭酸ガスを使用して胃を膨らませる。
- 硫酸バリウムの使用量は500 mL 程度である。
- Brown(ブラウン)法による前処置を実施する。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.胃小区の描出は二重造影で行う。
3.炭酸ガスを使用して胃を膨らませる。
解説
この問題は、胃バリウム検査の「撮影の原理(どうやって撮るか)」と「安全管理(検査前後の注意)」を正しく理解しているかを問う問題です。
✔ 胃透視の主役:「二重造影法」とは? 📸
昔の胃透視は、バリウムで胃を満たして影を見るだけ(充満法)でしたが、今は「二重造影法(ダブルコントラスト)」が主役です。これは、胃の中に「バリウム(白)」と「空気(黒)」の2つを入れて撮影する方法です。
- バリウム:ペンキのように胃の壁に薄く塗る。
- 空気(炭酸ガス):風船のように胃をパンパンに膨らませて、シワを伸ばす。
この2つが揃うことで、胃の粘膜の非常に細かい凹凸模様である「胃小区(いしょうく)」までクッキリと写し出すことができます。
✔ 各選択肢について
1.検査後は飲水を制限する。
- ❌ 誤り
- 真逆です。バリウムは腸の中で水分を吸収されると、セメントのようにカチカチに固まります。放っておくと腸閉塞(イレウス)や穿孔の原因になるため、下剤を飲むとともに、「コップ2杯以上の水」を飲んで、早く出し切ることが鉄則です。
2.胃小区の描出は二重造影で行う。
- ✅ 正解
- 解説の通り、バリウムと空気の力で、1〜2mm程度の微細な粘膜模様(胃小区)を描出するのが二重造影の最大の目的です。
3.炭酸ガスを使用して胃を膨らませる。
- ✅ 正解
- 検査前に飲む「発泡剤(粉)」は、胃酸と反応して炭酸ガス(CO₂)を発生させます。これによって胃を風船のように膨らませ、ヒダの裏側まで観察できるようにします。(ゲップを我慢するのは、このガスを逃がさないためです)
4.硫酸バリウムの使用量は500 mL 程度である。
- ❌ 誤り
- 500 mLはペットボトル1本分です。これではお腹がいっぱいで動けません。 現在の高濃度バリウムを使用した二重造影法では、150 mL前後(コップ1杯弱)の少量で十分です。
5.Brown(ブラウン)法による前処置を実施する。
- ❌ 誤り
- これは最大のひっかけです。 Brown法(ブラウン変法)とは、「大腸(注腸)検査」のための、強力な下剤と水による前処置法です。 胃の検査の前処置は、単純に「絶飲食(ご飯を抜く)」だけです。
出題者の“声”

この問題の狙いは、「胃の検査と大腸の検査を混同していないか?」という点にある。
特に選択肢5のBrown法。これは大腸を空っぽにするためのキツイ前処置じゃ。「消化管の前処置=Brown法」と丸暗記している学生は、ここで引っかかる。
そして、「二重造影法」の意味。 バリウムを飲むだけじゃない。「膨らませて(ガス)、塗る(バリウム)」。 このセットがあって初めて、ミクロな「胃小区」が見える。この原理を知っているかが、胃透視を理解しているかの分かれ道じゃ。
臨床の“目”で読む

ーなぜ、あんなにグルグル回らされるのか?ー
胃透視を受けたことがある人は、「右向いて!一回転して!」と指示され、アクロバティックに動かされた経験があると思います。 あれは、少量のバリウムを胃の壁全体にまんべんなく塗りたくる(コーティングする)ために必要な動きなのです。
- ゲップ我慢の重要性
- 技師が一番恐れるのは、患者さんが「ゲップ」をしてしまうことです。ガスが抜けると胃がしぼんでしまい、シワが寄って、病変なのかシワなのか区別がつかなくなります(=二重造影の失敗)。 「ゲップを我慢してくださいね」という声かけは、単なるお願いではなく、診断価値のある写真を撮るための必須条件なのです。
今日のまとめ
- 胃小区(微細な粘膜模様)を見るためには、二重造影法が必須。
- 二重造影では、発泡剤(炭酸ガス)で胃を膨らませる。
- バリウムの量は150mL前後。
- 検査後は、腸閉塞予防のために水をたくさん飲む。
- Brown法は大腸検査の前処置であり、胃ではない。



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