頭部CTで正しいのはどれか。
- 上肢を挙上させた体位とする。
- 白質のCT値は灰白質より高い。
- スライスの基準線は耳垂直線とする。
- Perfusion CT によって脳循環動態を把握できる。
- 造影検査ではイオン性モノマー型造影剤を使用する。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
4.Perfusion CT によって脳循環動態を把握できる。
解説
この問題は、頭部CT検査における「撮影の基本」「画像の読み方」「造影剤の知識」「最新の解析技術」を網羅的に問う、総合力チェック問題です。
✔ Perfusion CT(CT灌流画像)とは?:脳の血の巡りを「見える化」する 🧠🩸
CTは形を見るだけの検査ではありません。Perfusion CTは、造影剤を使って「脳の血流(循環動態)」を解析し、カラーマップで表示する技術です。
- 何が分かる?
- 脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、平均通過時間(MTT)など。
- 最大の目的
- 急性期脳梗塞において、「もう死んでしまった脳(虚血コア)」と「まだ救える仮死状態の脳(ペナンブラ)」を見分けること。
- 臨床的意義
- 「この患者さんにカテーテル治療(血栓回収療法)をすれば、脳を救えるか?」という重大な判断に直結します。
✔ 各選択肢について
1.上肢を挙上させた体位とする。
- ❌ 誤り
- 頭部CTでは、腕は体側(体の横)に下ろします。バンザイ(挙上)をするのは、腕がアーチファクトの原因になる胸部・腹部CTの場合です。
2.白質のCT値は灰白質より高い。
- ❌ 誤り
- 灰白質
- 神経細胞の本体が詰まっている → 密度が高い → 白く見える(CT値が高い:約35〜45HU)
- 白質
- 神経線維(脂質を含む髄鞘)が多い → 密度が低い(油は水より軽い) → 黒っぽく見える(CT値が低い:約20〜30HU) 「白質なのに黒く(暗く)見える」という逆転現象をしっかり覚えましょう。
3.スライスの基準線は耳垂直線とする。
- ❌ 誤り
- 頭部CTの標準的な基準線は、OMライン(眼窩外耳孔線)です。眼の外側と耳の穴を結んだラインです。
4.Perfusion CT によって脳循環動態を把握できる。
- ✅ 正解
- 解説の通り、血流情報を解析する高度な検査です。
5.造影検査ではイオン性モノマー型造影剤を使用する。
- ❌ 誤り
- 現在、血管内投与に使われるのは、副作用が少なく安全性が高い「非イオン性」ヨード造影剤が標準です。イオン性は過去のものです。
出題者の“声”

この問題は、頭部CTに必要な「解剖・撮影・解析・薬剤」の最低限の知識が整理できているか、を確かめる良問じゃ。
特に選択肢2の「白質と灰白質のCT値」。 「名前が“白”質だから白いだろう」と単純に考えて引っかかる者が後を絶たん。 CTでは「脂質(油)は黒く写る」という原則がある。白質は脂質(ミエリン鞘)を多く含むから、灰白質よりCT値は低くなるのじゃ。この理屈で覚えておけば、もう間違えることはないはずじゃ。
そして、Perfusion CT。これは近年の脳卒中診療の要。ただの形態画像だけでなく、「CTで機能(血流)まで分かる」という概念を知っているか、その感度を試しておるのじゃよ。
臨床の“目”で読む

ー「時間との勝負」で輝くPerfusion CTー
Perfusion CTは、どこの施設でもルーチンで行う検査ではありませんが、「脳卒中センター」などの救急最前線では、強力な武器となります。
- MRIが撮れない時の切り札
- 脳梗塞の診断にはMRI(DWI)が強力ですが、ペースメーカーが入っていたり、患者さんが不穏で動いてしまったりしてMRIが撮れないことがあります。そんな時、CT室だけで完結し、短時間で「救える脳があるか」を判定できるPerfusion CTは、患者さんの予後を左右する重要な情報を与えてくれます。
- 技師のスキル
- この検査は、造影剤の急速注入と連続撮影を行うため、確実なルート確保と、被ばく低減を考慮した撮影条件の設定が求められます。「ただ撮る」のではなく、「解析に耐えうる質の高いデータを撮る」という意識が重要です。
今日のまとめ
- Perfusion CTは、脳血流や血液量を解析し、脳循環動態を把握できる(特に脳梗塞のペナンブラ評価に有用)。
- CT画像では、白質(脂質多い)の方が灰白質(細胞多い)よりもCT値が低く(暗く)なる。
- 頭部CTの基準線はOMラインであり、上肢は体側に下ろす。
- 造影剤は、安全性の高い非イオン性を使用する。



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