焦点検出器間距離を100 cmから120 cmに変え、その他の条件を同一としてX線撮影を実施した。
受像面のX線量の倍数で最も近い値はどれか。
- 0.69
- 0.83
- 1.20
- 1.44
- 2.00
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
1.0.69
解説
この問題は、放射線物理学の絶対ルール、「逆二乗則」を使った計算問題です。 公式を覚える前に、まずは懐中電灯をイメージしてください。
✔ イメージで解く:光は離れると“急激に”暗くなる 🔦
壁に懐中電灯を向けて、後ろに下がっていくと、光の輪は大きくなりますが、明るさは暗くなりますよね? X線も同じです。
- 距離が伸びる(100cm → 120cm)
- → 線量は絶対に減る(1.0未満になる)。
- この時点で、増えている選択肢 3, 4, 5 は即座に消去できます。

✔ 計算テクニック:分数の「2乗」を恐れるな
線量の変化は、距離の比率の「2乗」に反比例します。 新しい線量を求める式はこうです。
新しい線量 = (元の距離 / 新しい距離)2
今回の数字を当てはめます。 (100 / 120)2 →ここで、いきなり2乗せず、約分するのがコツです。
(5 / 6)2 = 25/36 = 0.693
よって、正解は 0.69(選択肢1) です。
出題者の“声”

この問題の狙いは、「逆二乗則の計算ができるか」以上に、「物理的な直感を持っているか」を試しておる。
距離が 100cm から 120cm に伸びた。 この瞬間、「線量は減るはずだ(答えは1より小さい)」と直感できないと、平気で 1.44 を選んでしまう。
計算する前に、「増えるか?減るか?」を予想する。これが計算ミスをなくす最強の検算じゃ。
臨床の“目”で読む

ーポータブル撮影で「写真がザラザラ!」失敗を防ぐー
病室でのポータブル撮影では、ベッドの配置などで毎回距離(SID)が変わります。 普段 100cm で撮っている条件(mAs)のまま、うっかり 120cm の距離で撮影してしまったらどうなるでしょう?
この問題の通り、線量は 0.69倍(約7割) にまで落ち込みます。 その結果、写真は「濃度不足(真っ白)」で、ノイズだらけの失敗写真になります。
- 距離が伸びたら: 線量が減る → mAsを増やす必要がある。
- 距離が縮んだら: 線量が増える → mAsを減らす必要がある。
この「距離補正」を瞬時にできるのが、技師の腕の見せ所です。
今日のまとめ
- X線の強さは、距離の逆2乗に比例する(距離が伸びると、急激に減る)。
- 計算式は (元の距離 / 新しい距離)2
- まず約分してから2乗すると計算が楽になる。
- 距離が伸びたのに「1.0以上」の答えを選んだら、その時点で間違い!



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