NEW!第77回 午後 97

放射線安全管理学

医療法施行規則の診療用放射線に係る安全管理体制で誤っているのはどれか。

  1. 医療放射線安全管理責任者を配置する
  2. 診療用放射線の安全利用のための指針を策定する。
  3. 全身用X線CT診断装置の線量管理および線量記録を行う。
  4. 放射線の過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時の対応等に関する研修を行う。
  5. 放射線診療に従事する者に対する診療用放射線の安全利用のための研修を2年に1回行う。

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


5.放射線診療に従事する者に対する診療用放射線の安全利用のための研修を2年に1回行う。


解説

この問題は、最近の医療法施行規則改正で「義務化(やらなきゃいけないこと)」された、放射線安全管理のルールを正確に知っているかを問う問題です。

✔ 医療被ばく安全管理の「4本柱」 🏛️

医療機関が放射線を安全に使うために、法律で「絶対にやりなさい」と決められた4つの柱があります。

  • 責任者を置く(医療放射線安全管理責任者)
    • 「誰が責任取るの?」を明確にします。医師、歯科医師、または診療放射線技師がなれます。
  • 指針(ルールブック)を作る(安全利用のための指針)
    • 「どうやって安全を守るの?」というマニュアルを作成します。
  • 研修をやる(従事者に対する研修)
    • 「みんな知ってる?」を確認します。年1回以上の実施が義務です。
  • 線量を管理・記録する(線量管理・線量記録)
    • 「どれだけ被ばくさせた?」を記録します。特に被ばくが多いCTや血管造影(透視)などが対象です。

✔ 各選択肢について

1.医療放射線安全管理責任者を配置する

  • 誤り(正しい)
  • 安全管理の司令塔です。これを置かないと違法になります。

2.診療用放射線の安全利用のための指針を策定する。

  • 誤り(正しい)
  • 現場のルールブック(指針)を作り、スタッフ全員が見られるようにしておく必要があります。

3.全身用X線CT診断装置の線量管理および線量記録を行う。

  • 誤り(正しい)
  • これが近年の改正の目玉です。CTや血管造影装置など、高線量になりうる装置については、患者さんの被ばく線量を記録・管理することが義務化されました。

4.放射線の過剰被ばくその他の放射線診療に関する事例発生時の対応等に関する研修を行う。

  • 誤り(正しい)
  • 研修の内容として、「もし事故が起きたらどうするか(事例対応)」を含めることが決められています

5.放射線診療に従事する者に対する診療用放射線の安全利用のための研修を2年に1回行う。

  • 正解(誤り)
  • 法律では「年度ごとに1回以上」と決められています。

出題者の“声”

この問題の狙いは、「最近ルールが変わったけど、ちゃんとアップデートできてこの問題の狙いは、ズバリ「法律のアップデートについて来れておるか?」を試すことじゃ。

医療法施行規則の改正は、近年の放射線業界で最も大きなニュースじゃった。 出題者側からすれば、「現場の常識が変わったのに、昔の知識のままの学生を合格させるわけにはいかん」と考えるのは当然じゃろう? だから、この分野は今後も手を変え品を変え、必ず出題されると思っておくのじゃ。

  • 研修 = 毎年やる(年1回以上)
  • 線量記録 = 義務(努力目標ではない)

この2点は、今の臨床現場では「知らなかった」では済まされない、絶対のルールじゃぞ。


臨床の“目”で読む

ー現場は「線量管理」で大忙し!?でも、それが技師の価値になる。ー

この法改正により、臨床現場の放射線技師の業務は大きく変わりましたが、それは技師の専門性がより認められたということでもあります。

  • ① 「撮りっぱなし」はもう許されない
    • 以前はきれいな画像が撮れればOKでしたが、今は「線量記録」が義務です。CTや血管造影が終わるたびに、「今回の被ばく(DLPなど)」を記録・管理システム(PACS等)に残さなければなりません。これにより、「無駄な被ばくを減らす(最適化)」という意識が、現場全体で劇的に高まりました。
  • ② 「年1回」は法律で決まったノルマ
    • 病院で行われる安全研修会。「忙しいからパス」は通用しません。これは法律で決まった義務(年1回以上)だからです。実施記録がないと、保健所の立入検査で病院が指導を受けてしまいます。
  • ③ 技師が「安全の責任者」になる時代
    • 法律にある「医療放射線安全管理責任者」。これには医師だけでなく、診療放射線技師が任命されるケースが非常に増えています。 つまり、皆さんは将来、「病院全体の放射線安全を守るリーダー」として活躍することが、法律レベルで期待されているのです。

今日のまとめ

  1. 医療法施行規則により、放射線安全管理体制の整備が義務化されている。
  2. 従事者への研修は、「毎年1回以上」行わなければならない(2年に1回はダメ)。
  3. CT透視などの高線量検査は、線量管理・記録が義務である。
  4. 医療放射線安全管理責任者は、医師・歯科医師・診療放射線技師のいずれかがなる。

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