放射性医薬品の投与前に甲状腺ブロックが必要な検査はどれか。
- 肝胆道シンチグラフィ
- 甲状腺シンチグラフィ
- 唾液腺シンチグラフィ
- 副甲状腺シンチグラフィ
- 副腎皮質シンチグラフィ
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
5.副腎皮質シンチグラフィ
解説
✔ 甲状腺ブロックの必要性
ヨウ素標識放射性医薬品(¹²³Iや¹³¹I標識化合物)は、体内で代謝される過程で遊離ヨウ素が生じることがあります。
この遊離ヨウ素は甲状腺に集積し、不要な被ばくにつながるため、あらかじめヨウ化カリウム(KI)やルゴール液を投与して甲状腺のヨウ素取り込みを抑える=「甲状腺ブロック」を行います。
✔ 副腎皮質シンチグラフィでブロックが必要な理由
副腎皮質シンチグラフィでは ¹³¹I-アドステロール や ¹²³I-アドステロール が使われます。
これらは副腎皮質に集積する薬剤ですが、代謝過程で遊離ヨウ素が生じるため、甲状腺ブロックが必須となります。
✔ 各選択肢について
1. 肝胆道シンチグラフィ
- ❌ 誤り
- ⁹⁹ᵐTcで標識された薬剤を用います。ヨウ素ではないためブロックは不要です。
2.甲状腺シンチグラフィ
- ❌ 誤り
- 甲状腺がヨウ素を取り込む能力そのものを見る検査です。
- 「駐車場」に車が入るかを見る検査なので、ブロックして満車にしてしまっては検査の意味がありません。
3.唾液腺シンチグラフィ
- ❌ 誤り
- ⁹⁹ᵐTcO₄⁻を用います。ヨウ素ではないためブロックは不要です。
4.副甲状腺シンチグラフィ
- ❌ 誤り
- ⁹⁹ᵐTc-MIBIなどを用います。ヨウ素ではないためブロックは不要です。
5.副腎皮質シンチグラフィ
- ✅ 正解
- アドステロール(¹²³Iまたは¹³¹I標識)というヨウ素標識薬剤を用いるため、遊離した放射性ヨウ素から甲状腺を守るブロックが必須です。
出題者の“声”

この問題の狙いは、「なぜ、なんのために甲状腺ブロックが必要か」という、その理由を正しく理解しておるかを試すことにある。
学生がひっかかりやすいのは、「甲状腺シンチ」や「副甲状腺シンチ」。
「甲状腺」という言葉が入っておるから、ついブロックが必要だと錯覚してしまう。 しかし、本質はそこではない。
ブロックの要否は、「使用する薬剤が、遊離する可能性のある放射性ヨウ素で標識されているか」、ただ一点で決まるのじゃ。
「副腎の検査 → アドステロールを使う → あれは¹³¹I標識だ → ヨウ素が遊離する可能性がある → だから甲状腺を守る必要がある!」
この、臨床的な思考プロセスを身につけておるか。それを確かめるための問題じゃ。
臨床の“目”で読む

ー患者安全のための必須手順ー
副腎皮質シンチグラフィ(アドステロールシンチ)は、クッシング症候群や原発性アルドステロン症といった内分泌疾患の診断に欠かせない検査です。
この検査で、もし事前の甲状腺ブロックを忘れてしまうと、遊離した¹³¹Iが甲状腺に集積し、患者さんに不必要な甲状腺被ばくを与えてしまいます。これは、将来的な甲状腺機能低下症や、発がんリスクの増加に繋がりかねない、重大なインシデントです。
検査前の甲状腺ブロックの指示と確認は、単なる試験知識ではなく、患者さんの安全を守るための、絶対に忘れてはならない実務的な手順なのです。
今日のまとめ
- 甲状腺ブロックは、ヨウ素(
I
)を含む放射性医薬品を使用する際に、甲状腺への不要な被ばくを防ぐために行う。 - 副腎皮質シンチグラフィでは
¹³¹I
-アドステロールを使用するため、ブロックが必須である 🛡️。 - 甲状腺シンチグラフィは甲状腺のヨウ素取り込みを見る検査なので、ブロックは禁忌。
- 肝胆道、唾液腺、副甲状腺シンチでは、⁹⁹ᵐTc製剤などヨウ素を含まない薬剤を用いるため、ブロックは不要。
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