ヒトパピローマウイルスが関与することが多いのはどれか。2つ選べ。
- 上咽頭癌
- 中咽頭癌
- 肝細胞癌
- 大腸癌
- 子宮頸癌
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.中咽頭癌
5.子宮頸癌
解説
✔ ヒトパピローマウイルス(HPV)と発がんのメカニズム
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、皮膚や粘膜に感染する非常にありふれたウイルスです。ほとんどの場合は自然に排除されますが、一部のハイリスク型(特に16型、18型など)の感染が持続すると、がんを引き起こすことがあります。
そのメカニズムは、HPVが作り出すウイルス蛋白(E6、E7)が、ヒトの細胞が本来持っているがん抑制遺伝子(p53やRbなど)の働きを失わせることにあります。これにより、細胞増殖のブレーキが効かなくなり、無秩序な増殖が続いてがん化に至ると考えられています。
✔ ウイルスとがんの主な組み合わせ
- ヒトパピローマウイルス (HPV)➡子宮頸癌、中咽頭癌
- EBウイルス (EBV)➡上咽頭癌、バーキットリンパ腫
- B型/C型肝炎ウイルス (HBV/HCV)➡肝細胞癌
✔ 各選択肢について
1. 上咽頭癌
- ❌ 誤り
- EBウイルスとの関連が非常に強いがんです。
2.中咽頭癌
- ✅ 正解
- 特に扁桃や舌根にできる中咽頭癌は、HPV感染が原因であることが近年増加しています。
3.肝細胞癌
- ❌ 誤り
- 主な原因は、B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染です。
4.大腸癌
- ❌ 誤り
- 主に食生活などの生活習慣や遺伝的な要因が関与しており、ウイルスとの直接的な関連は知られていません。
5.子宮頸癌
- ✅ 正解
- 発生のほとんどにHPV感染が関与していることが明らかになっており、HPVワクチンによる予防が可能です。
出題者の“声”

この問題は、「ウイルスとがんの正しい組み合わせを、正確に記憶しているか」を試す、知識問題の基本じゃ。
学生が混乱しやすいのは、同じ「頭頸部がん」でも、部位によって関連するウイルスが違う点。
- 中咽頭癌 → HPV
- 上咽頭癌 → EBウイルス
「子宮頸癌=HPV」は多くの者が知っておる。だからこそ、もう一つの正解として中咽頭癌を選べるか、そして上咽頭癌というワナにひっかからないか、そこが合否の分かれ目じゃ。
この問題は、知識の正確性と、特に近年重要性が増しているHPV関連がんへの理解度を測るためのものなのじゃ。
臨床の“目”で読む

HPVが関連するがんは、その生物学的な特性から、診断や治療方針の決定においても特別な意味を持ちます。
ーHPVと子宮頸癌:予防と検診の重要性ー
子宮頸癌は、原因がHPV感染であることが明確なため、HPVワクチンの接種によって、がんそのものを予防できる可能性が高い、数少ないがんです。また、検診(細胞診やHPV検査)による早期発見と早期治療が極めて有効です。
ーHPVと中咽頭癌:予後と治療方針への影響ー
中咽頭癌において、HPVが原因のがん(HPV陽性)は、従来の喫煙や飲酒が原因のがん(HPV陰性)に比べて、放射線治療や化学療法の感受性が高く、予後が良いことが知られています。 このため、治療方針を決定する際には、まずHPVの感染の有無を調べることが標準的になっています。
将来的には、予後が良いHPV陽性のがんに対しては、副作用を軽減するために治療を弱める(治療強度のデ・エスカレーション)といった、個別化治療も検討されています。
今日のまとめ
- ヒトパピローマウイルス(HPV)との関連が強いがんは、中咽頭癌と子宮頸癌である。
- 上咽頭癌はEBウイルス、肝細胞癌はB型・C型肝炎ウイルスが主な原因である。
- HPV関連中咽頭癌は、非関連のがんに比べて予後が良好な傾向がある。
- 子宮頸癌は、HPVワクチンによって予防が可能な代表的ながんである。
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