10 MV X線を用いて照射野が10 cm × 10 cm のときの基準点の吸収線量が 1 MU あたり 1 cGy であった。
照射野 20 cm × 20 cm、深さ 5 cm の点に 2 Gy 照射するとき、MU 値で最も近いのはどれか。
ただし,照射野 20 cm × 20 cm、深さ 5 cm の組織最大線量比(TMR)を 0.8,照射野 10 cm × 10 cm に対する出力係数を 1.2とする。
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出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
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解説
✔ MU計算の基本:SAD設定における線量計算 🧮
この問題は、放射線治療におけるモニターユニット(MU)値を、与えられた条件から正しく算出できるかを問う、典型的な計算問題です。 問題文に組織最大線量比(TMR)が与えられていることから、これは線源-軸間距離(SAD)が一定の治療法における計算であると判断します。
✔ 計算式と手順
SAD設定におけるMU計算の基本式は以下の通りです。

この式に、問題文の数値を当てはめていきます。
【Step 1】 条件を整理する
- 処方線量 (Dose):2 Gy = 200 cGy
- 基準点での線量率:1 cGy/MU (基準照射野 10×10 cm² のとき)
- 出力係数 (Scp):1.2 (照射野 20×20 cm² のとき)
- 組織最大線量比 (TMR):0.8 (照射野 20×20 cm², 深さ 5 cm のとき)
【Step 2】 数値を式に代入する
- MU=200/1×1.2×0.8
【Step 3】 計算を実行する
- MU=200/0.96≈208
出題者の“声”

この問題は、数ある線量計算式の中から、「与えられた条件に最適な式を、正しく選択できるか」が9割を占める。
問題文にTMRと出力係数が登場した時点で、「これはSAD設定のTMR法で解く問題だ」と見抜けねばならん。ここで、知識が曖昧な者はPDDや距離の逆二乗則といった、関係ない要素を持ち込もうとして混乱する。
正しい式さえ選べれば、あとは単純な掛け算と割り算。計算自体は難しくない。 この問題は、様々な線量計算の体系を、頭の中で正しく整理できているかを試す、思考の整理能力を問う問題なのじゃ。
臨床の“目”で読む

ー実際のMU計算との違いー
実際の臨床現場でのMU計算は、この基本式に加えて、
- ウェッジ係数
- シャドウブロックトレイ係数
- オフアクシス(照射野中心を外れた点)の補正
- 不等辺照射野の等価正方形照射野への換算 など、さらに多くの補正係数が関わってきます。
ー品質管理の重要性ー
しかし、どれだけ複雑な計算を行っても、その大元となる「基準点での線量率(1 MUあたり1 cGyなど)」が、日々の品質管理(QA)によって正確に維持されていなければ、全ての計算結果は信頼性を失います。
リニアックの出力が安定していること、線量計が正しく校正されていること。そうした地道な精度管理の上に、初めて正確な治療が成り立つのです。
国家試験の問題は、この複雑な現実から、本質的な部分だけを抜き出して作られています。
今日のまとめ
- TMRと出力係数が与えられたMU計算は、SAD設定の基本式を用いる。
- 問題文にPDDやSSDに関する情報がなければ、SSD設定の計算と混同しないこと。
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