フーリエ変換で正しいのはどれか。
- 非線形変換である。
- 余弦関数は実部と虚部がある。
- 矩形波関数はsinc 関数になる。
- デルタ関数はガウス関数になる。
- 離散フーリエ変換は実空間領域への変換である。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
3.矩形波関数はsinc 関数になる。
解説
✔ フーリエ変換とは?:「成分分析」をするための数学的な道具 🔬
フーリエ変換とは、複雑な波(信号や画像など)が、どのような単純な波(周波数成分)の集まりで出来ているのかを明らかにする、いわば「成分分析」のための数学的な手法です。 これにより、時間や空間といった「実空間」の情報を、周波数の世界である「周波数空間(k-spaceなど)」の情報へと変換します。
✔ 覚えるべき3大変換ペア
国家試験対策としては、まず以下の基本的な「変換ペア」を覚えることが最も重要です。

✔ その他の基本ルール
- 線形性
- フーリエ変換は線形変換です。これは、入力信号を足し算したり、定数倍したりした結果が、変換後の世界でも保たれる、という素直な性質を意味します。
- 変換の方向
- フーリエ変換は「実空間」→「周波数空間」への変換です。逆に戻すのが逆フーリエ変換です。
✔ 各選択肢について
1. 非線形変換である。
- ❌ 誤り
- フーリエ変換は、重ね合わせの理が成り立つ線形変換です。
2.余弦関数は実部と虚部がある。
- ❌ 誤り
- 余弦関数(cos波)は、数学的に虚数成分を含まない実関数です。
3.矩形波関数はsinc 関数になる。
- ✅ 正解
- 上記の3大変換ペアの通り、矩形関数をフーリエ変換するとsinc関数になります。
4.デルタ関数はガウス関数になる。
- ❌ 誤り
- デルタ関数をフーリエ変換すると定数になります。
- ガウス関数をフーリエ変換するとガウス関数になる、という別のペアと混同しないように注意が必要です。
5.離散フーリエ変換は実空間領域への変換である。
- ❌ 誤り
- 離散フーリエ変換(DFT)は、実空間のデジタル信号を、離散的な周波数空間へ変換する手法です。実空間に戻すのは逆離散フーリエ変換(IDFT)です。
出題者の“声”

この問題は、フーリエ変換の「3大変換ペア」と「基本的な性質」を、正確に記憶しておるかを問う、知識問題のド定番じゃ。
- 矩形 ↔ sinc
- デルタ ↔ 定数
- ガウス ↔ ガウス
この対応関係が頭に入っておらん者は、4番のような典型的なひっかけ問題にまんまとやられる。 さらに、フーリエ変換が「線形」であること、そして「実空間 → 周波数空間」への変換であること。これらは、全ての画像原理を学ぶ上での出発点となる知識じゃ。
難しい数式を覚える前に、まずこの基本のキを確実に得点源にすること。それが合格への近道じゃ。
臨床の“目”で読む

フーリエ変換の考え方は、私たちが日常的に扱う医療画像の画質を理解する上で、モダリティを横断する「共通言語」となります。
- MRIの画質とフーリエ変換
- MRIで得られる生データ(k-space)は、まさにフーリエ変換された周波数空間そのものです。k-spaceの中心部は画像のコントラストを、辺縁部は画像の細かさ(空間分解能)を担っています。また、k-spaceのデータを有限の範囲で収集(矩形関数を掛けることに相当)するため、画像のシャープな境界部分にsinc関数状の波うち(ギブスアーチファクト)が現れます。
- CT再構成とフーリエ変換
- CTの画像再構成で用いられるフィルタ関数(カーネル)は、周波数空間で特定の周波数成分を強調・抑制する操作を行っています。例えば、骨用のシャープなカーネルは高周波成分を強調するため、空間分解能は上がりますが、ノイズも増えます。
このように、画像の分解能、ノイズ、アーチファクトといった要素は、すべて周波数空間の操作として説明でき、フーリエ変換の理解は、画質を深く知るための第一歩なのです。
今日のまとめ
- フーリエ変換は、信号や画像を周波数成分に分解する数学的な手法である。
- 覚えるべき3大変換ペア: 矩形 ↔ sinc、 デルタ ↔ 定数、 ガウス ↔ ガウス。
- フーリエ変換は線形変換であり、「実空間」から「周波数空間」への変換である。
- MRIのk-spaceやCTの再構成フィルタなど、多くの画像原理の根底にフーリエ変換の考え方が応用されている。
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