成人女性の基準値より低い値の血液検査項目はどれか。
- 赤血球数 400万/μL
- ヘモグロビン 8.0 g/dL
- ヘマトクリット 40.0%
- 白血球数 5,000/μL
- 血小板数 20万/μL
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.ヘモグロビン 8.0 g/dL
解説
✔ 血液検査の基本:まず何を見るか? 💉
血液検査には多くの項目がありますが、貧血や出血を評価する上で最も基本となるのが、赤血球数、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)の3つの値です。 中でも、貧血の診断に最も直接的に用いられるのがヘモグロビンの値です。
✔ ヘモグロビンとは?:酸素を運ぶ「トラック」の量
ヘモグロビンとは、赤血球の中に含まれる、酸素と結合する赤い色素タンパク質です。全身の細胞に酸素を送り届けるという、生命維持に不可欠な役割を担っています。 血液検査におけるヘモグロビンの値は、この「酸素を運ぶ能力」がどれだけあるかを直接示す指標です。
✔ 成人女性の基準値と比較
一般的な成人女性の血液検査の基準値は以下の通りです。(施設により多少の差があります)
- 赤血球数:380~500 万/μL
- ヘモグロビン (Hb):11.5~15.0 g/dL
- ヘマトクリット (Ht):35~45 %
- 白血球数:3,500~9,000 /μL
- 血小板数:15~40 万/μL
ヘモグロビン 8.0 g/dL は基準値を大きく下回っており、中等度から重度の貧血状態であることを示します。
出題者の“声”

この問題の狙いは、数ある血液検査項目の中から、「特に重要な基準値を覚えているか」という、臨床における必須知識を問うことにある。
学生の多くは、たくさんの基準値を丸暗記しようとして混乱する。しかし、臨床現場でまず重要視されるのはヘモグロビンじゃ。
「Hb(ハーベー)いくつ?」という会話は、病棟や救急外来で日常的に飛び交う。なぜなら、Hbの値は「体内の酸素運搬能力」そのものを表す、生命維持のバロメーターだからじゃ。
この問題は、ただの数字の暗記ではなく、「どの数値が、患者さんの状態で何を意味するのか」という、数字の裏側を読む力を試しておるのじゃ。
臨床の“目”で読む

ー「ヘモグロビン低値」は、現場での“警戒警報” 🚨ー
私たち放射線技師も、特に造影CTや血管造影(アンギオ)検査など、患者さんの状態が変化しやすい検査を行う際には、ヘモグロビンの値に注意を払う必要があります。
- ① 急変時の指標として
- 検査中に患者さんの顔色が悪くなったり、血圧が低下したりした場合、体内で見えない出血が起きている可能性があります。その際、Hbの値が低いことは、出血性ショックを疑う重要な根拠の一つとなります。
- ② 造影検査のリスク評価
- もともと重度の貧血(Hbが極端に低い)がある患者さんは、体の予備能力が低下しており、造影剤の投与が心臓などに大きな負担をかける可能性があります。検査前にHbの値を確認し、リスクが高い場合は担当医に報告・相談することも、安全管理の一環です。
- ③ 治療効果の判定
- 血管造影室で行われる出血に対する塞栓術(止血治療)の後などに、Hbの値が回復しているかを見ることで、治療の効果を客観的に評価します。
このように、ヘモグロビンの値は、放射線技師にとっても、患者さんの状態を把握し、安全な検査を遂行するための重要な情報なのです。
今日のまとめ
- 成人女性のヘモグロビン(Hb)の基準値は、おおよそ 11.5~15.0 g/dL である。
- 提示された値 8.0 g/dL は基準値を大きく下回っており、中等度以上の貧血を示す。
- ヘモグロビンは全身への酸素運搬能力を直接反映する指標であり、その低下は出血や貧血のサインとして臨床で最も重視される項目の一つ。
- 放射線技師も、安全な造影検査などのために、ヘモグロビンの値とその意味を理解しておく必要がある。
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