腹部大動脈から直接分岐するのはどれか。
- 空腸動脈
- 子宮動脈
- 卵巣動脈
- 固有肝動脈
- 浅大腿動脈
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
3.卵巣動脈
解説
✔ 腹部大動脈の分岐:4つのグループで整理する 🩸
腹部大動脈は、胸部大動脈が横隔膜を通って腹腔に入った部分で、腹部の臓器や下肢に血液を供給します。
その分岐は「前枝」「側枝」「後枝」「終枝」の4群に整理できます。
🔸 主な腹部大動脈の分枝
- 前枝(消化器系へ)
- 腹腔動脈(胃・肝・脾へ)
- 上腸間膜動脈(小腸・右結腸などへ)
- 下腸間膜動脈(左結腸・直腸へ)
- 側枝(腎・性腺などへ)
- 腎動脈(左右1本ずつ)
- 副腎動脈
- 卵巣動脈(または精巣動脈)
- 後枝(体壁へ)
- 腰動脈、下横隔動脈など
- 終枝
- 総腸骨動脈(左右に分かれ、下肢や骨盤へ分布)
この分類から、卵巣動脈は、腹部大動脈から左右一対で直接分岐する「側枝」であることが分かります。
✔ 各選択肢について
1. 空腸動脈
- ❌ 誤り
- 小腸の一部である空腸を栄養する動脈で、上腸間膜動脈から分岐します。
2.子宮動脈
- ❌ 誤り
- 子宮を栄養する動脈で、骨盤内の内腸骨動脈から分岐します。
3.卵巣動脈
- ✅ 正解
- 腹部大動脈の側枝として、腎動脈の少し下から直接分岐します。
4.固有肝動脈
- ❌ 誤り
- 腹部大動脈 → 腹腔動脈 → 総肝動脈 → 固有肝動脈、というように孫世代の枝にあたります。
5.浅大腿動脈
- ❌ 誤り
- 腹部大動脈の終枝である総腸骨動脈がさらに分岐した、下肢の動脈です。
出題者の“声”

この問題の狙いは、「腹部大動脈の分岐構造を、その規則性に基づいて立体的に理解しているか」を確認することじゃ。 多くの枝をバラバラに暗記しようとすると混乱するが、
- 消化器系(お腹側)
- 泌尿生殖器系(横側)
- 体壁(背中側)
というように、どの臓器を栄養する枝なのか、そのグループ分けで整理すれば、格段に覚えやすくなる。
特に、本問の「卵巣動脈/精巣動脈」は、性腺動脈として必ずセットで問われる超定番問題じゃ。「腎動脈のすぐ下から、直接分岐する長い血管」という位置関係を、CT画像のようにイメージで覚えておくのが、合格への近道じゃぞ。
臨床の“目”で読む

ー血管解剖は、造影CT・IVRの「地図」であるー
私たち放射線技師にとって、腹部大動脈とその主要な分岐の知識は、日々の業務、特に造影CTや血管造影(IVR)において、安全かつ正確な検査・治療を行うための「地図」となります。
- ① 血管の同定
- 3D-CTA画像などを作成・読影する際、「この血管は何という名前か?」を同定するには、その血管がどこから分岐しているかを追跡するのが基本です。「腹部大動脈から直接出ているから腎動脈だ」「上腸間膜動脈から出ているから回腸動脈だ」というように、起始部を確認することで、血管を正確に同定できます。
- ② カテーテル治療の理解
- 肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓術(TACE)や、子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(UAE)など、特定の臓器を栄養する血管だけを選択的に治療するIVRにおいて、その血管がどこから分岐しているかを知っていることは、手技を理解する上での大前提となります。
- ③ 病変の評価
- 腹部大動脈瘤(AAA)の範囲を評価する際、腎動脈や主要な分岐血管との位置関係を正確に把握することが、治療方針(ステントグラフトのサイズ決定など)に直結します。
血管解剖の知識は、ただの暗記ではなく、私たちが扱う画像を深く理解し、チーム医療に貢献するための実践的な武器なのです。
今日のまとめ
- 腹部大動脈の分岐は、「前枝(消化器)」「側枝(泌尿生殖器)」「後枝(体壁)」「終枝(下肢)」の4グループで整理して覚える。
- 卵巣動脈(精巣動脈)は、腹部大動脈の側枝として直接分岐する。
- 空腸動脈は上腸間膜動脈から、子宮動脈は内腸骨動脈から分岐するため、直接分岐ではない。
- 血管の起始部と走行を理解することは、造影CTやIVRにおける安全で正確な手技の基礎となる。



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