肺の区域で存在しないのはどれか。
- 右肺 S3
- 右肺 S5
- 左肺 S1+2
- 左肺 S7
- 左肺 S9
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
4.左肺 S7
解説
✔ 肺区域とは?:気管支と動脈で区切られた「機能ユニット」 🫁
肺区域とは、肺を機能的な小単位に分割したものです。1本の区域気管支と、それに伴走する区域肺動脈によって養われる範囲を1つの区域とし、それぞれS(Segment)+ 番号で表します。 この区域の概念は、CT画像で病変の位置を正確に表現したり、肺がんの手術(区域切除)を行ったりする上で、極めて重要な解剖学の基礎知識です。
✔ 右肺と左肺の区域の違い
肺は、右が上葉・中葉・下葉の3つ、左が心臓のスペース分だけ小さく上葉・下葉の2つに分かれています。この葉の数の違いが、区域の構成にも反映されています。

最大のポイントは、左肺では心臓の影響で、S1とS2が融合して「S1+2」となり、S7(内側基底区)が欠損している点です。
出題者の“声”

この問題の狙いは、肺の解剖を、ただ「右は3葉、左は2葉」という大雑把なレベルではなく、区域レベルの左右差まで正確に理解しておるかを問うことにある。
特に、「左肺ではS1とS2が融合する」ことと、「左肺にはS7が存在しない」こと。この2点は、解剖学、画像診断、そして外科手術のすべての領域で問われる、超頻出の知識じゃ。
CTレポートに書かれた「左S6に結節影」という一文を読んだとき、頭の中に瞬時にその場所が三次元的に思い浮かぶか。肺区域は、呼吸器領域に関わる医療者にとっての「共通言語」。この言語を使いこなせるかが、臨床能力の第一歩なのじゃ。
臨床の“目”で読む

ーなぜ放射線技師が肺区域を知る必要があるのか?ー
私たち放射線技師にとって、肺区域の知識は、単なる暗記項目ではなく、日々の業務で画像情報を正確に扱い、チーム医療に貢献するための実践的なスキルです。
- ① 医師とのコミュニケーション
- 読影中の医師から「このS3の病変、MPRで別の断面も見せて」と指示された際、技師が区域を理解していれば、意図を即座に汲み取り、最適な画像を提供できます。区域の知識は、円滑なコミュニケーションの土台となります。
- ② 外科医のための「手術の地図」作り
- 肺がんの手術では、病変を含む区域だけを切除する「区域切除術」が行われます。その際、外科医は切除すべき区域気管支や動脈・静脈の位置関係を正確に把握する必要があります。私たち放射線技師は、CTデータから高精細な3D画像やMPR像を作成し、外科医が手術をシミュレーションするための「手術用地図」を提供するという、極めて重要な役割を担います。
- ③ 病変の理解
- 例えば、寝たきりの患者さんが誤嚥して起こる誤嚥性肺炎は、重力の影響で気管支に入ったものが流れ込みやすい、下葉の上区(S6)に好発します。区域と病態の関連を知っていると、画像を見る目が一段と深まります。
今日のまとめ
- 肺区域は、区域気管支と区域肺動脈の支配領域で区分される機能的な単位である。
- 左肺は右肺に比べて心臓の分だけ小さく、S1とS2が融合(S1+2)し、S7(内側基底区)が欠損しているのが最大の特徴。
- 肺区域の知識は、CT読影における病変の正確な位置特定や、肺外科手術の支援において不可欠な「共通言語」である。



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