老年症候群の特徴で誤っているのはどれか。
- 転倒
- 嚥下障害
- 体重増加
- 認知障害
- 歩行障害
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
3.体重増加
解説
✔ 老年症候群とは?:加齢に伴う心身の“注意信号” 👴🏻👵🏻
老年症候群とは、加齢に伴う体力や認知機能の低下が背景となり、特定の病気とは断定できないものの、日常生活に支障をきたす様々な症状や状態の総称です。 原因は一つではなく、身体的・精神的・社会的な要因が複雑に絡み合って発生します。一つの症状が次の不調を招く「負の連鎖」に陥りやすいのが特徴で、高齢者の生活の質(QOL)を大きく左右します。
✔ 主な老年症候群と放射線技師の関わり

この表からも分かる通り、老年症候群では「体重減少」や低栄養が問題となるのが一般的であり、「体重増加」は当てはまりません。
✔ 各選択肢について
1. 転倒
- ❌ 誤り (正しい)
- 筋力低下、バランス能力の低下、多剤服用によるふらつきなど、複合的な要因で発生しやすくなります。
2.嚥下障害
- ❌ 誤り (正しい)
- 飲み込みに関わる筋力の低下や、反射の遅れによって生じます。
3.体重増加
- ✅ 正解 (誤り)
- 老年症候群では、食欲不振や筋肉量の減少(サルコペニア)による体重減少や低栄養が特徴です。体重増加は、むしろ生活習慣病などの別の病態を示唆します。
4.認知障害
- ❌ 誤り (正しい)
- 認知症や、入院などをきっかけに一時的に混乱する「せん妄」は、代表的な老年症候群です。
5.歩行障害
- ❌ 誤り (正しい)
- 変形性関節症や筋力低下、神経疾患など、様々な原因によって歩行が不安定になります。
出題者の“声”

この問題の狙いは、「加齢に伴う生理的な変化の“方向性”」を、正しく理解しておるかを問うことにある。
原則として、加齢に伴う変化は「増える」方向ではなく「減る」方向に向かう。筋肉の量、骨の密度、認知機能、身体の予備能力…すべてが減少していく。 「老年症候群」とは、この様々な“減少”が絡み合って現れる状態の総称なのじゃ。
一方で「体重増加」は、エネルギーの消費量が摂取量を下回ることで起こる現象。これは加齢そのものの変化というよりは、生活習慣病の文脈で語られるべきものじゃ。
この「減少の症候群」と「過剰の病態」とを、明確に区別できるかがポイントじゃな。
臨床の“目”で読む

ー射線技師が実践すべき、高齢者への安全なケアー
高齢の患者さんが検査室に来られた際、私たちは老年症候群の可能性を常に念頭に置き、安全な検査環境を提供する責任があります。
- ① 転倒・転落の徹底予防
- 最も注意すべきは転倒です。検査台への乗り降りは、必ず声をかけ、必要であれば複数人で介助します。CTの寝台のように細く不安定な場所では、決して患者さんから目を離してはいけません。
- ② 認知障害への配慮
- 認知機能が低下している患者さんには、「合図に合わせて息を吸って、止めてください」といった複雑な指示は一度に伝わらないことがあります。「まず、大きく息を吸って〜」「はい、止めて〜」のように、短く、具体的に、ゆっくりと話す工夫が必要です。
- ③ 体位保持の工夫
- 筋力低下や関節の痛みにより、同じ姿勢を保つのが困難な患者さんも多くいます。クッションや枕を効果的に使い、安楽な体位を保てるように配慮し、検査時間を可能な限り短縮する努力も重要です。
- ④ 嚥下障害のリスク管理
- 上部消化管造影検査などでバリウムを飲んでもらう際は、誤嚥のリスクに注意が必要です。むせ込みがないか、しっかりと飲み込めているかを注意深く観察し、必要であれば検査体位を調整します。
これらの配慮は、単なる「親切」ではなく、安全な医療を提供するための専門的なスキルなのです。
今日のまとめ
- 老年症候群とは、加齢に伴う心身の機能低下によって生じる、転倒、嚥下障害、認知障害、低栄養などの複合的な症状群である。
- 老年症候群では体重減少が問題となることが多く、「体重増加」は誤り。
- 放射線技師は、老年症候群の知識を基に、転倒予防、認知機能への配慮、安楽な体位保持など、安全な検査を遂行するための専門的な配慮が求められる。



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