腎臓で血液のろ過を行うのはどれか。
- 糸球体
- 腎盂
- 腎静脈
- 尿管
- 尿細管
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
1.糸球体
解説
✔ 腎臓の働き:血液の「ろ過」と「再利用」 💧
腎臓の最も重要な役割は、血液をキレイにすることです。この働きは、腎臓の中にある「ネフロン」という小さな機能単位で行われます。ネフロンは、大きく2つのパーツで構成されています。
- 糸球体(しきゅうたい)
- 血液を「ろ過」する、目の細かい“ザル”の役割。
- 尿細管(にょうさいかん)
- ろ過された液体から、体に必要なものを「再利用(再吸収)」する役割。
血液はまず、毛細血管が糸玉のようになった糸球体に送り込まれ、血圧によって水分や老廃物、小さな栄養素などが押し出されて「原尿」が作られます。これが血液のろ過です。 その後、原尿は尿細管を通過する過程で、体に必要な水分や栄養素が丁寧にもう一度回収され、残った不要なものだけが尿として排泄されます。
✔ 各選択肢について
1. 糸球体
- ✅ 正解
- 毛細血管の塊で、血液を物理的にろ過し、原尿を作る場所です。
2.腎盂
- ❌ 誤り
- できあがった尿を集めて、尿管へ送り出すための通り道です。
3.腎静脈
- ❌ 誤り
- ろ過されてキレイになった血液を、心臓へ戻すための血管です。
4.尿管
- ❌ 誤り
- 腎盂から膀胱まで尿を運ぶための管です。
5.尿細管
- ❌ 誤り
- ろ過された原尿から、体に必要な水分や栄養素を再吸収する場所です。ろ過そのものは行いません。
出題者の“声”

この問題の狙いは、腎臓の機能を、「どの場所で、何が行われているか」という機能解剖学の視点で、正しく整理できているかを問うことにある。
「腎臓=尿を作る」という大雑把な理解では、臨床で通用せん。
- 糸球体 = ろ過するザル
- 尿細管 = 必要なものを再利用する工場
- 腎盂・尿管 = 完成品を運ぶパイプ
この役割分担が分かっていれば、これはサービス問題じゃ。
この区別は、特に造影剤や核医学検査薬が、体内でどう処理されるかを理解する上での大前提。放射線技師を目指すなら、絶対に落としてはならん知識じゃ。
臨床の“目”で読む

ーなぜ放射線技師が「糸球体」を知る必要があるのか?ー
この知識は、日々の業務、特に造影検査の安全管理と核医学検査の原理を理解する上で、極めて重要です。
- ① 造影剤の安全な使用に直結(eGFR)
- 造影CT検査の前には、必ず患者さんの腎機能を示すeGFR(推算糸球体濾過量)の値を確認します。この「G」はGlomerular(糸球体の)の頭文字。つまり、eGFRは糸球体がどれだけ効率よく血液をろ過できるかを示す指標なのです。この値が低いということは、糸球体の“ザル”の目が詰まっている状態であり、造影剤がうまく排泄されずに腎臓にダメージを与える「造影剤腎症」のリスクが高まります。
- ② 核医学検査の原理そのもの
- 腎臓の機能を評価する核医学検査(腎シンチグラフィ)では、目的によって異なる薬剤を使い分けます。
- ⁹⁹ᵐTc-DTPA:主に糸球体でろ過されるため、GFRの評価に用います。
- ⁹⁹ᵐTc-MAG3:主に尿細管から分泌されるため、有効腎血漿流量(ERPF)という、より腎臓全体の血流に近い指標の評価に用います。 この薬剤の使い分けは、まさに糸球体と尿細管の機能分担を応用したものです。
- 腎臓の機能を評価する核医学検査(腎シンチグラフィ)では、目的によって異なる薬剤を使い分けます。
今日のまとめ
- 腎臓で血液のろ過を行うのは糸球体である。
- ろ過された原尿から、体に必要なものを回収(再吸収)するのが尿細管である。
- 放射線技師にとって、eGFR(推算糸球体濾過量)は造影検査の安全性を判断するための最重要指標であり、その「G」は糸球体を意味する。
- 糸球体:ろ過、尿細管:再吸収、腎盂・尿管:尿の通り道、と機能と場所をセットで理解することが重要。



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