99Mo–99mTcジェネレーターで99mTcを溶出するのに用いられるのはどれか。
- 蒸留水
- 生理食塩水
- 5%ブドウ糖液
- 10%アミノ酸液
- 0.1 mol/L 塩酸水溶液
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.生理食塩水
解説
✔ 99Mo–99mTcジェネレーターとは?
- 親核種の99Mo(モリブデン)が放射壊変して娘核種の99mTc(テクネチウム)を生成。
- この娘核種をアルミナカラムから溶出液で洗い流して取り出す装置です。
- 通称「ミルキング(milking)」と呼ばれ、まるで乳搾りのように99mTcを定期的に“搾り取る”操作が行われます。
✔ どうやってTcを取り出す?
- ジェネレーター内では、⁹⁹Mo(MoO₄²⁻)は強くアルミナに吸着。
- 一方、99mTc(TcO₄⁻)は弱く吸着しているため、イオンを含む流体で溶出可能。
- この「洗い流す溶媒(溶出液)」として使うのが、「0.9% 生理食塩水(NaCl)」。
✔ なぜ生理食塩水が最適なのか?
- 等張性:赤血球を壊さず、生体適合性が高い。
- 中性pH:TcO₄⁻の安定性が保たれ、標識反応にも有利。
- 無菌製剤対応:そのまま静脈注射用に使用可能。
✔ 各選択肢について
1. 蒸留水
- ❌ 誤り
- イオンがほとんど含まれておらず、脱離効率が悪い。
- 浸透圧も低く、生体適合性にも問題あり。
2.生理食塩水
- ✅ 正解
- Na⁺・Cl⁻を含み、適切なイオン強度とpHを持つ理想的な溶出液。
3.ブドウ糖液
- ❌ 誤り
- 電解質がなく、TcO₄⁻の溶出効率が不十分。
4.アミノ酸液
- ❌ 誤り
- 溶液中の成分がpHや安定性に悪影響を及ぼす可能性がある
5.塩酸水溶液
- ❌ 誤り
- 強酸性(pH約1)であり、TcO₄⁻が還元されたり沈殿したりする恐れがある。
- 装置のカラムや生成物の安定性にも悪影響を与える。
出題者の“声”

この問題では、「⁹⁹Mo–⁹⁹ᵐTcジェネレーターの構造と溶出のしくみ」がきちんと理解できているかを試しておるのじゃ。
“塩酸の方が溶けそうじゃ”という化学的直感だけで選ぶと、カラム損傷・不安定化という落とし穴にハマるぞい。
理想の溶出液には3つの条件がある:
① 等張性
② 中性付近のpH
③ 無菌性(静注対応)
これらをすべて満たしておるのが、「生理食塩水」というわけじゃ。
カラムにもTcにも患者にもやさしい、理想的な選択肢なんじゃよ。
臨床の“目”で読む

⁹⁹ᵐTcは、シンチグラフィで最も広く使われている放射性核種です。
その供給源となるジェネレーターの溶出操作は、放射性医薬品調製の基本中の基本。
この作業は完全無菌環境で行い、生理食塩水以外の溶媒は品質と安全性に直結するリスクがあります。
とくに、塩酸や蒸留水では化学的安定性や浸透圧の面で大きな問題があり、
正しい知識を持っておくことが、製剤ミスや事故を防ぐうえで非常に重要です。
ちなみに、生理食塩水は病院内で最も多用途に使われる液体でもあり、薬剤希釈、静注、補液などあらゆる場面で登場します。
きっと、臨床の現場に出れば「毎日どこかで目にする液体」になるはずです。
この問題は、そんな「ありふれていて、でも非常に重要」な存在の意味を、放射性医薬品という視点からあらためて考えさせてくれる問題ですね。
キーワード
- ⁹⁹Mo–⁹⁹ᵐTcジェネレータ
- ミルキング
- 生理食塩水
- 放射性医薬品調製
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