第77回 午後 98

放射線安全管理学

電離放射線障害防止規則で正しいのはどれか。

  1. 皮膚の等価線量は 500 mSv/月 を超えないようにする。
  2. 眼の水晶体の等価線量は 150 mSv/年 を超えないようにする。
  3. 妊娠可能な女性の実効線量は 5 mSv/3月 を超えないようにする。
  4. 眼の水晶体の等価線量は 6か月ごとに算定、記録および保存する。
  5. 妊娠中の女性の腹部表面に受ける等価線量は 2 mSv/3月 を超えないようにする。

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


3.妊娠可能な女性の実効線量は 5 mSv / 3月 を超えないようにする。


解説

✔ 「誰を」守るためのルールか?を考える

放射線業務従事者の線量限度には、大きく分けて「一般の従事者(男性・妊娠していない女性)」「特別な配慮が必要な従事者(妊娠可能な女性・妊婦)」の枠組みがあります。

特に女性の基準が厳しいのは、「本人が気づかないうちに妊娠している可能性」を考慮しているからです。 胎児は放射線の影響(奇形発生など)を受けやすいため、妊娠が判明する前の段階から、被ばくを低く抑える必要があります。その基準となる期間が「3ヶ月(四半期)」なのです。


✔ 各選択肢について

1.皮膚の等価線量は 500 mSv/月 を超えないようにする。

  • 誤り
  • 数字の「500」は合っていますが、単位が違います。
  • 皮膚の線量限度は「500 mSv / 年(1年間につき)」です。ここは単純な単位のひっかけです。

2.眼の水晶体の等価線量は 150 mSv/年 を超えないようにする。

  • 誤り
  • これは2021年の法改正以前の古い数値です! 現在は、国際的な基準に合わせて大幅に厳しくなっています。
  • 「5年間で100 mSv」かつ「1年間で50 mSv」 もはや「150」という数字は過去のものです。この改正は国試でも頻出の狙われポイントです。

3.妊娠可能な女性の実効線量は 5 mSv/3月 を超えないようにする。

  • 正解
  • 「妊娠の可能性がないと診断された女性」以外の女性(つまり多くの女性技師)は、3ヶ月(四半期)につき 5 mSv という限度が設けられています。 これは、もし妊娠していたとしても、胎児への影響がほぼないレベルに抑えるための数値です。

4.眼の水晶体の等価線量は 6か月ごとに算定、記録および保存する。

  • 誤り
  • 算定・記録のタイミングは、基本的に「3ヶ月ごと(四半期ごと)」です。
  • さらに重要ポイントとして、2021年の改正電離則により、眼の水晶体については「3か月・1年・5年の合計」での算定・記録が必要になりました。 これは、選択肢2で解説した「5年間で100mSv」という長期的な線量限度を守るために、「5年管理」という概念が追加されたからです。

5.妊娠中の女性の腹部表面に受ける等価線量は 2 mSv/3月 を超えないようにする。

  • 誤り
  • 「妊婦」と申告した後のルールです。 腹部表面の等価線量限度は 2 mSv ですが、期間は「3ヶ月ごと」ではなく「妊娠中(本人の申出等があった時から出産までの間)」です。 妊娠期間トータルで 2 mSv 以内に抑える必要があります。

出題者の“声”

この問題は、受験生が「数値」だけを丸暗記して、「単位(期間)」を無視していることを見透かしておる。

「皮膚は500!」「妊婦は2!」と数字だけ覚えて安心しておらんか?

そして、この問題の裏テーマは「2021年の法改正」じゃ。 水晶体の限度が引き下げられたことで、管理方法も「5年単位」の視点が加わった。 選択肢2や4は、その改正内容を正確に理解しているかを試すための、非常に巧妙な選択肢なんじゃよ。

法令問題で最も多いひっかけパターンは、「数値は合ってるけど、単位(年・月・期間)が違う」というやつじゃ。勉強するときは、「数値」と「期間」を必ずセットで覚えるんじゃぞ!


臨床の“目”で読む

現場に出ると、この「3ヶ月」という区切りは非常にリアルなものになります。

  • ガラスバッジの交換と通知
    • 皆さんが実習や就職先で胸につける「個人被ばく線量計(ガラスバッジなど)」。あれは、病院によって「毎月交換」のところと「3ヶ月に1回交換」のところがあります。 法律上の算定期間である「3ヶ月ごと(4月1日、7月1日、10月1日、1月1日)」に必ず区切りをつけて測定・記録されます。 特に水晶体に関しては、改正以降、レポートに「1年の累積」だけでなく「5年の累積」の欄も意識してチェックするようになりました。
  • 「妊娠しました」の報告の重要性
    • 選択肢3(妊娠可能な女性)から、選択肢5(妊婦)への切り替えは、「本人からの申し出」がスイッチになります。 上司に「妊娠しました」と報告したその日から、線量限度は「3ヶ月で5mSv」から「出産まで2mSv」に激変します。 そのため、現場では業務内容の調整(CT介助や透視室業務から外れるなど)が行われる場合もあります。 このルールの違いを知っておくことは、自分自身と、将来の赤ちゃんを守るためにとても大切なんですよ。

今日のまとめ

  1. 妊娠可能な女性:実効線量 5 mSv / 3ヶ月
  2. 妊婦(申出後):腹部表面 2 mSv / 妊娠期間中
  3. 皮膚:等価線量 500 mSv / 年
  4. 眼の水晶体:法改正により5年で100 mSv & 1年で50 mSvとなった。
  5. これに伴い、水晶体の線量は「3ヶ月・1年・5年の合計」で算定・記録・保存される。

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