目的とする放射性核種の沈殿を防ぐために加えるのはどれか。
- 還元剤
- 共沈剤
- 捕集剤
- 保持担体
- スカベンジャ
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
4.保持担体
解説
✔ RIは「寂しがり屋」? 担体(キャリア)の役割
放射性同位元素(RI)は、重さにすると目に見えないほどごく微量(トレーサ量)であることが多いです。 この微量なRIを溶液の中で扱おうとすると、ビーカーの壁にくっついたり、予期せぬ動きをしたりしてしまいます。
そこで、RIと同じ元素の「安定同位体(普通の元素)」を大量に混ぜてあげます。これを「担体(キャリア)」と呼びます。 担体は、微量なRIの「保護者」や「道案内役」のような存在で、RIの化学的な挙動をコントロールするために使われます。
✔ 「沈める」のか「残す」のか?
担体には、目的によって使い分けがあります。
- 一緒に沈めたい時 ➡ 共沈剤
- 目的のRIを沈殿として取り出したい時に使います。RIと一緒に沈んでくれるパートナーです。
- 溶液に残したい時 ➡ 保持担体
- 例えば、不純物を沈殿させて取り除きたいけれど、目的のRIは溶液の中に残しておきたい(沈殿させたくない)時に使います。
- 「お前はここに留まれ(保持されろ)!」と、RIが沈殿に巻き込まれるのを防ぐガードマンの役割を果たします。
✔ 各選択肢について
1.還元剤
- ❌ 誤り
- 酸化還元反応を起こして、原子の「原子価」を変えるための試薬です。沈殿を防ぐ直接の役割ではありません。
2.共沈剤
- ❌ 誤り
- 目的の物質と一緒に沈殿を作るためのものです。「沈殿を防ぐ」のとは真逆の役割ですね。
3.捕集剤
- ❌ 誤り
- 目的の微量物質を吸着したり取り込んだりして集める(捕集する)ためのものです。一般的には沈殿や固相抽出などで「集める」側に回ります。
4.保持担体
- ✅ 正解
- 他の物質が沈殿する際に、目的のRIが一緒に連れて行かれる(共沈する)のを防ぎ、溶液中に留まらせる(保持する)ために加える担体です。
5.スカベンジャ
- ❌ 誤り
- 「掃除屋」という意味です。放射線化学の分野では、放射線分解で生じた「ラジカル(活性種)」を除去する物質のことを指すのが一般的です。沈殿操作とは文脈が異なります。
出題者の“声”

この問題は、用語の定義を「漢字の意味」から推測できるかを試しておる。
- 共に沈むから「共沈剤」。
- (溶液に)保持するから「保持担体」。
そのまんまじゃな。 しかし、試験本番で焦っていると「えーっと、沈殿に関係あるのは…共沈!」と飛びついてしまう学生が多いのじゃ。
問題文の「沈殿を防ぐ」という部分をしっかり読んでいるか。 「沈める側」なのか「浮かす側」なのか、ベクトルの向きを間違えないことが重要じゃぞ。
臨床の“目”で読む

この「分離」の考え方は、核医学で使う「ジェネレータ(放射性同位元素生成装置)*の原理に通じています。
例えば、病院で毎日使う「テクネチウム(99mTc)」は、「モリブデン(99Mo)」から生まれます。 この時、親であるモリブデンはカラム(柱)の中に残り、娘であるテクネチウムだけが生理食塩水に溶けて出てきます。
これは「沈殿」とは少し違う「吸着」という現象を利用していますが、「必要なものと不要なものを、化学的な性質の違いで分ける」という点ではで同様です。
また、我々が扱う放射性医薬品は、副作用をなくすために「キャリアフリー(担体が入っていない)」が理想とされることが多いです。 「担体を入れることの意味」を知っているからこそ、「担体が入っていないことの価値(比放射能の高さ)」も理解できるのです。
今日のまとめ
- 微量なRIの挙動を安定させるのが「担体(キャリア)」。
- 目的のRIを沈殿させたい時 ➡ 「共沈剤」を使う。
- 目的のRIの沈殿を防ぎたい(溶液に残したい)時 ➡ 「保持担体」を使う。
- 漢字の意味(共に沈む vs 保持する)を考えれば間違えない!



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