第76回 午前 6

エックス線撮影機器学

回転陽極 X 線管を使用した骨撮影用 X 線装置の最大 X 線照射野と焦点外 X 線による半影を図に示す。 JIS 規格の許容値内で焦点外 X 線による半影が最大となるのはどれか。 ただし、図中の単位は cm、実線を最大 X 線照射野、破線を焦点外 X 線による半影とする。

  1. A
  2. B
  3. C
  4. D
  5. E

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


3.C


解説

✔ そもそも「焦点外X線」のルールとは?

X線はターゲット(焦点)から出るのが理想ですが、実際にはターゲット以外の場所(陽極のステム部分など)からも微量なX線が出てしまいます。これを「焦点外X線(ステム放射線)」と呼びます。 これが患者さんに届くと、本来写るはずのない範囲がうっすら写ってしまう「ゴースト像」の原因になります。

これを防ぐため、JIS規格(日本産業規格)では厳格なルールが決められています。 「焦点外X線による半影(ズレ)は、焦点受像面間距離(SID)1m において、照射野外 15cm(150mm)を超えてはならない」

つまり、「1m の位置で 15cm までは(ギリギリ)セーフ!」 というのがボーダーラインです。

✔ 図を見て素直に選ぶだけ!

このルールを頭に入れた上で、選択肢を見てみましょう。

  • A・B・C:距離は 100cm(1m) です。
    • Aの半影:8 cm
    • Bの半影:10 cm
    • Cの半影:14 cm
  • D・E:距離は 150cm(1.5m) です。
    • Dの半影:10 cm
    • Eの半影:13 cm

問題文は「JIS規格の許容値内(つまり15cm以下)で、最大のもの」を聞いています。

  1. 規格チェック
    • 1m地点での値であるA(8)、B(10)、C(14)は、すべて「15cm以下」なので合格です。
    • (※DとEは1.5m地点での値なので、1m地点に換算するともっと小さくなります。当然合格です)
  2. 最大値チェック
    • 合格者の中で一番数字が大きいのは?
    • Cの「14 cm」 ですね。

疑心暗鬼にならず、「15cmを超えていない一番デカい数字」を選ぶだけ。 正解は C となります。


出題者の“声”

この問題の意図は、学生の「自信」を試すことじゃ。

図を見れば「14cm」が一番大きいのは小学生でも分かる。 しかし、問題文にわざわざ「JIS規格の許容値内で」と書いておくことで、 「待てよ…14cmって大きすぎないか? 規格オーバーで引っかけじゃないのか?」 と、学生を疑心暗鬼にさせるのが狙いじゃ。

もしここに「半影 16cm」という図があったら、それは規格違反(15cm超え)だから選んではいけん。 しかし、今回は最大でも14cm。 「JIS規格は1mで15cmまで許容」という知識さえしっかりしていれば、「14cm? ギリギリセーフじゃん! じゃあこれが最大だ!」と胸を張って答えられるはずじゃ。

知識は、迷いを断ち切るためにあるんじゃよ。


臨床の“目”で読む

「焦点外X線なんて、臨床に関係あるの?」と思うかもしれませんが、実は「画質」「被ばく」に直結する大問題です。

  • ゴーストが出る!
    • 例えば、レントゲンを撮った時。 しっかりコリメータ(絞り)で照射野を絞ったはずなのに、なぜか画像の外側にうっすらとした影が写り込んでしまう…。 これが焦点外X線の仕業です。 診断に関係ない余計な情報が写るだけでなく、画像全体のコントラスト(メリハリ)を低下させてしまいます。
  • 対策としての「多重絞り」
    • この図のようなシンプルな絞り(コーン)だけでは、焦点外X線を防ぎきれません。 そのため、現在のX線装置には「多重絞り(マルチリーフコリメータ)」が搭載されています。 特に重要なのが、X線管の出口すぐそばにある「近接絞り(最深部シャッター)」です。 発生源(焦点)のすぐ近くでカットすることで、余計なX線が広がるのを根元で食い止めているのです。

この問題の図Cのような状態(半影14cm)は、臨床的に見れば「かなり性能の悪い(あるいは対策されていない)絞り」と言えますが、規格上はギリギリセーフ。そんな「機械の限界」を知っておくことも重要です。


今日のまとめ

  1. 焦点外X線(ステム放射線)の半影許容値は、「SID 1m で 15cm 以下」
  2. 問題文の「許容値内で」は、数字が15を超えていないか確認させるための誘導。
  3. 14cmはギリギリセーフ。自信を持って最大値を選べ!

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