【第76回 午前 9】比例・反比例がごちゃ混ぜ⁉学生泣かせのグリッド問題!

エックス線撮影機器学

散乱線除去用グリッドで正しいのはどれか。

  1. グリッド露出係数は一次 X 線透過率の逆数で表される。
  2. 同一グリッドにおいては管電圧が高いほど選択度は大きい。
  3. グリッド密度はグリッド中心部の 1 mm 当たりの鉛はくの数で表す。
  4. 同一グリッドにおいては管電圧が高いほどコントラスト改善比は大きい。
  5. グリッド密度が同じであればグリッド比が大きいほどグリッド露出係数は大きい。

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


5.グリッド密度が同じであればグリッド比が大きいほどグリッド露出係数は大きい。


解説

✔ グリッドの性能を決める「4つの鉄則」

グリッドの問題は、個別に覚えるのではなく、以下の4つの物理法則を理解すればすべて解けます。

  • ① 「グリッド露出係数(B)」は全X線で決まる
    • グリッド露出係数(露出倍率)とは、「グリッドを使うとX線が減っちゃうから、あと何倍余計にX線を出さなきゃいけないの?」という指標です。 グリッドは、散乱線だけでなく、必要な一次X線も少しカットしてしまいます。つまり、フィルムに届く「全X線透過率(一次+散乱)」が分母になります。
    • B = 1 / 全X線透過率
  • ② グリッド比(r)が高い=「壁」が高い
    • グリッド比が高いということは、鉛の壁が高い(または通路が狭い)ということです。
    • メリット:散乱線を強力にカットする(選択度 Σ ↑コントラスト改善係数 K ↑)。
    • デメリット:一次X線も通りにくくなるため、グリッド露出係数(B)は大きくなる(=線量を増やさないといけない)。
  • ③ 管電圧(kV)が高い=「突き抜ける」
    • 管電圧を上げると、X線のエネルギーが高くなり、透過力が強くなります。 すると、本来カットされるべき散乱線が鉛の壁を突き抜けてしまいます。 その結果、グリッドの性能である「選択度(Σ)」や「コントラスト改善係数(K)」は低下します。 「エネルギーが高い=高性能」というイメージは間違いです! グリッドにとっては逆風なのです。
  • ④ グリッド密度(N)の単位は「cm」
    • これはJIS規格の決まりです。 グリッド密度は「1 cm あたり」に何本の鉛があるかで表します(本/cm)。 あまり細かすぎる単位(mm)は使いません。

✔ 各選択肢について

1.グリッド露出係数は一次 X 線透過率の逆数で表される。

  • 誤り
  • 「一次X線」ではなく「全X線」透過率の逆数です。

2.同一グリッドにおいては管電圧が高いほど選択度は大きい。

  • 誤り
  • 高電圧では散乱線が突き抜けるため、選択度は小さく(悪く)なります。

3.グリッド密度はグリッド中心部の 1 mm 当たりの鉛はくの数で表す。

  • 誤り
  • 単位は「1 cm 当たり」です。

4.同一グリッドにおいては管電圧が高いほどコントラスト改善比は大きい。

  • 誤り
  • 選択度と同様、高電圧では性能が落ちるため、コントラスト改善比も小さくなります。

5.グリッド密度が同じであればグリッド比が大きいほどグリッド露出係数は大きい。

  • 正解
  • グリッド比が高い(壁が高い)ほど、X線が通りにくくなるため、必要な露出係数(B)は大きくなります。

出題者の“声”

この問題は、グリッドの性能式を丸暗記しているかではなく、「物理現象」をイメージできているかを試しておる。

特に「管電圧」との関係じゃ。 「電圧を上げれば、パワーが上がって何でも良くなる」なんて単純に考えておらんか? グリッドにとって、高エネルギーの散乱線は「手に負えない暴れん坊」じゃ。鉛の壁をすり抜けて画質を落としてしまう。 だから「高電圧撮影ではグリッドの効きが悪くなる(=選択度・改善比が下がる)」。

この理屈さえ分かっていれば、選択肢2と4は瞬殺じゃよ。


臨床の“目”で読む

現場では、この「露出係数(B)」を肌感覚で持っていることが極めて重要です。

  • 「グリッドあり」なら線量アップ!
    • 普段グリッドなしで撮っている手や足を、何らかの理由でグリッドを使って撮る場合、同じ条件(mAs)で撮ると線量不足のザラザラ画像になってしまいます。 今回の正解(選択肢5)にある通り、グリッド比が高いものを使うときは、「条件を3〜4倍にする(B=3〜4)」というのが鉄則です。
  • 患者被ばくとのトレードオフ
    • 「グリッド露出係数が大きい」ということは、裏を返せば「患者さんの被ばくが増える」ことを意味します。 散乱線を消して画質を良くしたい(高グリッド比を使いたい)。でも、その分だけ患者さんに当てるX線を増やさなきゃいけない。 このトレードオフの関係を意識して、最適なグリッド(一般撮影なら8:1や10:1など)を選定するのが、技師の腕の見せ所です。

今日のまとめ

  1. グリッド露出係数(B)の分母は「全X線」透過率。
  2. 高電圧(高kV)撮影では、散乱線が突き抜けるため性能(Σ, K)は落ちる。
  3. グリッド密度の単位は「本/cm」
  4. グリッド比が高いほど、散乱線は消えるが、線量(B)は増える

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