【第76回 午前 12】MRIの信号は競争だ!緩和時間の順位を決めるルールとは?

第76回

MRI で正しいのはどれか。

  1. T2 緩和時間は T2* 緩和時間より短い。
  2. 水の T1 緩和時間は筋肉の T1 緩和時間より長い。
  3. 筋肉の T1 緩和時間は脂肪の T1 緩和時間より短い。
  4. ガドリニウム造影剤は T2 緩和時間に影響を与えない。
  5. 静磁場強度が大きいほど Larmor〈ラーモア〉周波数は低くなる。

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


2.水の T1 緩和時間は筋肉の T1 緩和時間より長い。


解説

✔ MRIを解くための「3つの鉄則」

MRIの問題は、以下の3つの物理法則(イメージ)を持っていれば解きやすくなります。

  • ① T1緩和は「回復の速さ」競争
    • T1緩和(縦緩和)とは、磁気共鳴したプロトンがエネルギーを放出して「元の状態に戻る(回復する)」過程です。
    • 脂肪:分子の動きが適度にゆっくりで、周囲とのエネルギー交換が得意。→ すぐに回復する(T1が短い)
    • :分子が小さく、高速で動き回っているため、エネルギー交換が下手。→ なかなか回復しない(T1が長い)

このレースの結果、T1緩和時間の長さは以下の順序になります。

脂肪(短い) < 筋肉・臓器 < 水(長い)

  • T2*は「邪魔が入る」から速い
    • T2緩和:物質同士の干渉だけで信号が減衰する時間(物質固有の能力)。
    • T2*緩和:物質固有の減衰(T2)に加えて、「磁場の不均一(乱れ)」による減衰が合わさったもの。 純粋な減衰に「磁場の乱れ」という邪魔が入るため、信号はもっと早く消えてしまいます。
    • つまり、常に T2T2*T2*の方が短い)となります。
  • ③ ラーモア周波数は磁場に「比例」する
    • MRIの信号の周波数(ω)は、以下の式で決まります。
    • ω = γ B₀ (周波数 = 磁気回転比 × 静磁場強度)
    • 磁石(B₀)が強くなればなるほど、プロトンの回転(周波数)も速く(高く)なります。

✔ 各選択肢について

1.T2 緩和時間は T2* 緩和時間より短い。

  • 誤り
  • T2*は「磁場の乱れ」を含むため、T2よりも急速に信号が減衰します(短いです)。

2.水の T1 緩和時間は筋肉の T1 緩和時間より長い。

  • 正解
  • 「水」は分子運動が激しくエネルギー放出が遅いため、人体組織の中で最もT1が長い部類に入ります。筋肉は水よりは構造化されているため、T1は短くなります。

3.筋肉の T1 緩和時間は脂肪の T1 緩和時間より短い。

  • 誤り
  • 脂肪は「最もT1が短い(回復が速い)」組織です。 順番は 脂肪 < 筋肉 < 水 です。

4.ガドリニウム造影剤は T2 緩和時間に影響を与えない。

  • 誤り
  • ガドリニウムなどの常磁性体は、T1短縮効果とT2短縮効果の両方を持っています。 (※通常量ではT1短縮(白くなる効果)が目立ちますが、T2にも影響を与えて短くしています)

5.静磁場強度が大きいほど Larmor〈ラーモア〉周波数は低くなる。

  • 誤り
  • 周波数は磁場強度に比例するため、磁場が大きければ周波数も高くなります。

出題者の“声”

この問題は、MRIの基本原理である「緩和時間」と「周波数」の定義を、正確に理解しているかを問うておる。

「水はT1が長い」 これは呪文のように覚えておるかもしれんが、「なぜ?」 が大事じゃ。 水分子は落ち着きがない子供のようなものじゃ。エネルギーをキャッチボールしようとしても、動きが速すぎて受け取ってもらえん。だから元の状態に戻る(緩和する)のに時間がかかるんじゃよ。

一方、脂肪はドッシリ構えたベテラン選手じゃ。エネルギー交換がスムーズじゃから、すぐに回復する(T1が短い)。

この「分子の性格」をイメージできていれば、丸暗記に頼らずとも正解(選択肢2)を選べるはずじゃ。


臨床の“目”で読む

現場では、この「T1緩和時間」の違いが、病気を見つける最大の武器になります。

  • 「黒い水」と「白い脂肪」が解剖の地図
    • T1強調画像(T1WI)は、解剖構造を把握するのに最適です。 なぜなら、人体の周りにある「皮下脂肪(T1短い)」が真っ白に光ってくれるので、輪郭がはっきりするからです。 逆に、水(脳脊髄液や炎症による浮腫)は真っ黒(T1長い)に写ります。 「白ければ脂肪や出血、黒ければ水」という基本コントラストを知っているだけで、画像の読影力がグッと上がります。
  • 2. 造影剤は「脂肪のフリ」をさせる薬
    • ガドリニウム造影剤を入れると、病変部(腫瘍など)がT1強調画像で白く光りますよね? あれは、ガドリニウムが近くの水分子に干渉して、強制的にT1緩和時間を短くさせているんです。 つまり、本来は黒く写るはずの水っぽい腫瘍を、「脂肪のようにT1を短くして、白く目立たせている」のです。 造影剤の正体は、T1短縮マジックの種明かしです。

今日のまとめ

  1. T1緩和時間の長さ: 水(長い・黒い) > 筋肉 > 脂肪(短い・白い)
  2. T2*緩和は、磁場の不均一が含まれるため、T2緩和より短い
  3. ガドリニウム造影剤は、T1もT2も短縮させる。
  4. ラーモア周波数は、静磁場強度に比例して高くなる。

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