無散瞳眼底写真撮影で正しいのはどれか。
- 白黒画像が得られる。
- 撮影は縮瞳させた状態で行う。
- 色覚異常の診断に有用である。
- 視神経乳頭は黄斑部より鼻側に位置する。
- ピント合わせの照明に紫外線を使用する。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
4.視神経乳頭は黄斑部より鼻側に位置する。
解説
✔ 眼底の「地図」を覚えよう
まずは、眼底写真の解剖を整理しましょう。 眼底には2つの重要なランドマークがあります。
- 視神経乳頭:血管が集まっている白く明るい円。ここが「盲点」です。
- 黄斑部:血管がなく、少し暗く見える中心部分。ここが「最もよく見える場所(中心窩)」です。
そして、その位置関係には絶対のルールがあります。 「乳頭(血管の根元)がある方が、鼻側である」

✔ 「無散瞳」ってどういうこと?
通常、眼の奥を覗くには、瞳孔を開く目薬(散瞳薬)を使います。しかし、健診などで全員に目薬をさすのは大変ですし、数時間はまぶしくて運転もできません。 そこで開発されたのが「無散瞳眼底カメラ」です。
- 観察・ピント合わせ
- 「赤外線」を使います。
- 赤外線はまぶしくないので、人間の眼は反応しません。つまり、暗い部屋にいるのと同じで、自然に瞳孔が開いたまま(自然散瞳)になります。この隙に位置合わせをします。
- 撮影の瞬間
- 「可視光(ストロボ)」をバシッと焚きます。
- 一瞬だけ強い光でカラー写真を撮ります。撮った直後はまぶしくて瞳孔が閉じます(縮瞳)が、もう写真は撮れているのでOKです。
✔ 各選択肢について
1.白黒画像が得られる。
- ❌ 誤り
- 眼底写真は、血管の状態や出血の色を見るために「カラー画像」で記録します。
2.撮影は縮瞳させた状態で行う。
- ❌ 誤り
- 「縮瞳(瞳孔が閉じている状態)」では、鍵穴から部屋の中を覗くようなもので、狭すぎて何も見えません。 暗室効果を利用して、「自然散瞳(瞳孔が開いた状態)」にして撮影します。 (※「無散瞳」とは「薬で強制的に開かない」という意味で、「閉じたまま撮る」という意味ではありません!)
3.色覚異常の診断に有用である。
- ❌ 誤り
- 眼底写真は「形(網膜の剥離や出血)」を見る検査です。 色を感じる機能(色覚)の検査には、石原式色覚検査表などが使われます。
4.視神経乳頭は黄斑部より鼻側に位置する。
- ✅ 正解
- 「乳頭は鼻側、黄斑は耳側」。 これは眼底写真のイメージで覚えてください。
5.ピント合わせの照明に紫外線を使用する。
- ❌ 誤り
- 紫外線は眼に有害ですし、見えません。 使用するのは「赤外線」です。
出題者の“声”

この問題は、眼底の「左右」が分かっているか、そしてカメラの「光源」の理由を知っているかを問うておる。
学生さんはよく「右眼の写真か、左眼の写真か?」で迷うようじゃな。 「視神経乳頭がある方が、鼻(内側)」じゃ。
そして「赤外線」。 まぶしい光(可視光)を当てると瞳孔がキュッと閉じてしまう。 だから、気づかれないように「見えない光(赤外線)」でこっそり近づき、最後にバシャッと撮る。 この仕組みを知っておれば、紫外線などという危険な選択肢は選ばんはずじゃ。
臨床の“目”で読む

健診業務などで眼底カメラを扱う際、一番のコツは「患者さんの誘導」です。
- 「視線の固定」
- 無散瞳カメラの中には、視線を固定するための「固視灯(緑色の点滅など)」があります。 患者さんがキョロキョロすると、黄斑部が中心に来ません。 「中の光をぼんやり見ていてください」と声をかけることで、眼球をいい位置に固定できます。
- まぶたとの戦い
- 高齢の方は、まぶたが下がってきて瞳孔を隠してしまうことがあります(眼瞼下垂)。 そのままだと写真の上半分が黒くケラれてしまいます。 そんな時は、技師がそっと指でまぶたを持ち上げて、瞳孔を露出させて撮る必要があります。
眼底写真は、動脈硬化や糖尿病の魔の手が忍び寄っていないかを知る、唯一の「血管を直接見られる窓」です。 きれいな写真を撮ることは、患者さんの未来を守ることにつながります。
今日のまとめ
- 視神経乳頭は「鼻側」にある。
- 黄斑部(中心窩)は「耳側」にある。
- 無散瞳カメラの位置合わせには「赤外線」を使う(縮瞳させないため)。
- 撮影の瞬間は「可視光(ストロボ)」でカラー撮影する。
- 撮影時は、暗室で自然散瞳させるのが基本。



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