【第76回 午前 26】発生率○○%未満⁉核医学で一番多い副作用の正体とは?

核医学診療技術学

放射性医薬品投与による副作用で誤っているのはどれか。

  1. 223RaCl2 投与後に下痢が起こる。
  2. 99mTc-MIBI 投与時に金属味がする。
  3. 主に標識化合物による薬理作用である
  4. 131I-アドステロール投与時に顔面紅潮が起こる。
  5. 投与時に発生する副作用は血管迷走神経反射が多い。

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


3.主に標識化合物による薬理作用である。


解説

✔ 核医学の絶対ルール「トレーサーの原理」

まず、最も重要な概念から解説します。 一般的に飲まれている「風邪薬」や「降圧剤」は、体の機能を変化させる(熱を下げる、血圧を下げる)ために飲みます。これを「薬理作用」と言います。

しかし、診断用の放射性医薬品は「トレーサー(追跡子)」です。 体の機能を「ありのまま観察する」のが目的なので、体の機能を変えてしまっては困ります。 (例:心臓の検査薬を入れたら心拍数が変わってしまったら、検査になりませんよね?)

そのため、放射性医薬品は「薬理作用が出ないほどの超・微量(ナノモル〜ピコモルレベル)」しか投与しません。これが物質量として極めて微量である理由です。 よって、選択肢3の「主に薬理作用である」という記述は、核医学の根本を否定することになるため誤りとなります。

✔ 放射性医薬品の「5つの鉄則」

  1. 有効期限が短い
    • 放射能は時間とともに減衰(半減期)するため、作り置きができません。常に新鮮なものを使います。
  2. 特異的な集積
    • 特定の臓器や病変にだけ集まる性質(運び屋)を利用します。
  3. 薬理作用がない
    • 前述の通り、微量すぎて生体機能に影響を与えません。
  4. 副作用は極めて稀
    • 発生率は10万人あたり2〜3人(0.003%未満)とされ、造影剤(数%)と比べても圧倒的に安全です。
  5. 被ばくの管理
    • 非密封RI(液体や気体)を扱うため、汚染と被ばく管理が必須です。

✔ 各選択肢について

1.223RaCl2 投与後に下痢が起こる。

  • 誤り(正しい)
  • これは診断薬ではなく「治療薬(ゾーフィゴ)」です。 ラジウムはカルシウムと同様に骨に集まりますが、一部は腸管から排泄されます。その際、α線が腸粘膜を刺激するため、副作用として「下痢」や「嘔吐」が報告されています。治療薬は診断薬よりも副作用が出やすいのが特徴です。

2.99mTc-MIBI 投与時に金属味がする。

  • 誤り(正しい)
  • MIBI(心筋・副甲状腺シンチ)の有名な副作用です。 静脈注射した直後に、口の中に「苦味」「金属のような味」を感じることがあります。一過性ですぐに治まりますが、事前に患者さんに伝えておくと安心されます。

3.主に標識化合物による薬理作用である

  • 正解誤り
  • もし副作用が出たとしても、それは「アレルギー反応」や「血管迷走神経反射」であり、薬そのものの薬理作用(血圧変動など)ではありません。

4.131I-アドステロール投与時に顔面紅潮が起こる。

  • 誤り(正しい)
  • これは有効成分のせいではなく、薬を溶かすために含まれている添加剤(界面活性剤)の影響です。 この添加剤には、急速に静注するとヒスタミンを放出させ、血管を拡張させる作用があります。 そのため、急速静注すると顔面紅潮などの反応が出ることが知られています。 現場ではこれを防ぐため、「時間をかけてゆっくり静注」するのが鉄則です。

5.投与時に発生する副作用は血管迷走神経反射が多い。

  • 誤り(正しい)
  • これが核医学で最も遭遇する「副作用」です。 実は薬のアレルギーではなく、「注射の痛み」「恐怖心」「緊張」によって自律神経が乱れ、血圧低下や徐脈、気分不快を起こす現象です。 これを「血管迷走神経反射」と呼びます。

出題者の“声”

この問題は、「放射性医薬品」を「ただの薬」と勘違いしていないかを試しておる。

一般的な薬は、効能(薬理作用)と副作用が背中合わせじゃ。 しかし放射性医薬品は、「物質としては無に等しい量」しか入れない。 だから薬理作用なんて起きようがないんじゃよ。(治療用RIは別じゃがな)

それなのに「具合が悪くなりました」と患者さんが言う。 その原因のほとんどは、薬のせいではなく、「注射が怖い」「検査が不安」という心のストレス(血管迷走神経反射)なんじゃ。 技師として、薬の知識だけでなく、患者の不安を取り除くスキルも求めておるんじゃよ。


臨床の“目”で読む

現場では、この「副作用の少なさ」が大きな武器になります。

  • 造影剤アレルギーの人でも安心
    • 「私、CTの造影剤で以前ショックを起こして…」という患者さんでも、核医学検査(RI)は基本的に施行可能です(成分が全く違うため)。 「RIは造影剤とは違って、アレルギーは万に一つですよ」と説明すると、安心して検査を受けていただけます。
  • 唯一の敵、血管迷走神経反射
    • 副作用が少ないとはいえ、倒れる人はいます。それが選択肢5の血管迷走神経反射です。 特に若い男性や、極度に緊張している人は要注意。 注射した瞬間に「気持ち悪い…」と言ってサーッと血の気が引いていくことがあります。 そんな時は慌てず、「足を高くして(下肢挙上)、ゆっくり深呼吸」。 これでほとんど回復します。 「薬のせい」にせず、患者さんの様子(顔色・冷や汗)を観察することが、一番の副作用対策なんですよ。

今日のまとめ

  1. 放射性医薬品は微量(トレーサー)なので、薬理作用はほぼ無い
  2. 副作用発生率は0.003%未満と極めて低い。
  3. 最も多い副反応は、緊張や痛みによる血管迷走神経反射
  4. 223Ra(治療薬)は腸管排泄による下痢に注意。
  5. 99mTc-MIBI金属味がすることがある。

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