【第76回 午前 27】感度をとるか分解能をとるか?コリメータの究極の選択

核医学診療技術学

ガンマカメラの平行多孔型コリメータで正しいのはどれか。

  1. 穴径が小さいほど感度が高い。
  2. 穴径が大きいほど空間分解能が高い。
  3. コリメータの穴の長さが長いほど空間分解能が低い。
  4. コリメータ隔壁厚が薄いほどペネトレーションを起こしやすい。
  5. 高エネルギー型では低エネルギー型よりコリメータ隔壁厚が薄い。

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


4.コリメータ隔壁厚が薄いほどペネトレーションを起こしやすい。


解説

✔ コリメータは「ストローの束」でイメージせよ!

平行多孔型コリメータは、無数の鉛のトンネル(穴)の束です。 このトンネルを「ストロー」に例えると、物理特性が直感的に理解できます。

  • A. 穴の大きさ(穴径 d)と長さ(厚さ L)
    • 分解能(くっきり見たい)
      • 細くて長いストロー(穴径が小さく、長さが長い)越しに覗くと、真正面の狭い範囲しか見えません。
      • つまり、位置ズレが少なくなり、「分解能は高く(良く)」なります。
    • 感度(明るく見たい)
      • 太くて短いストロー(穴径が大きく、長さが短い)越しだと、斜めからの光もたくさん入ってきます。
      • つまり、入ってくる放射線量が増え、「感度は高く」なります(ただしボヤけます)。
  • ★鉄則:分解能と感度はトレードオフ!
    • 「分解能を上げれば(穴を小さく長くすれば)、感度は下がる」 「感度を上げれば(穴を大きく短くすれば)、分解能は下がる」
  • B. 隔壁の厚さ
    • ストローの壁(隔壁)は、斜めから入ってきた不要なガンマ線を遮るための「鉛の壁」です。
    • この壁が薄すぎると、ガンマ線が壁を突き抜けて隣の穴に入ってきてしまいます。これを「ペネトレーション」と呼びます。
    • これが起きると、本来写るはずのない場所に信号が出てしまい、画像がボケたり、星状のアーチファクトが出たりします。

✔ 各選択肢について

1.穴径が小さいほど感度が高い。

  • 誤り
  • 穴が小さい(細いストロー)ということは、通り抜けられるガンマ線の数が減ります。 よって、感度は「低く」なります。(その代わり分解能は良くなります)

2.穴径が大きいほど空間分解能が高い。

  • 誤り
  • 穴が大きい(太いストロー)と、斜めからのガンマ線もどんどん受け入れてしまいます。 どこから飛んできたか分からなくなるため、空間分解能は「低く(悪く)」なります。(その代わり感度は高くなります)

3.コリメータの穴の長さが長いほど空間分解能が低い。

  • 誤り
  • 穴が長い(長いストロー)ほど、斜めの成分をカットする能力が高まります(視野角が狭くなる)。 よって、空間分解能は「高く(良く)」なります。

4.コリメータ隔壁厚が薄いほどペネトレーションを起こしやすい。

  • 正解
  • 鉛の壁が薄いと、ガンマ線を遮りきれずに突き抜けてしまいます。これがペネトレーションです。 これを防ぐために、使用する核種のエネルギー(強さ)に合わせて、適切な厚みのコリメータを選ぶ必要があります。

5.高エネルギー型では低エネルギー型よりコリメータ隔壁厚が薄い。

  • 誤り
  • 高エネルギー(例:131Iなど)のガンマ線は、貫通力が強いです。 それを止めるためには、低エネルギー用(例:99mTc用)よりも、「分厚い隔壁」が必要です。 壁を厚くすると、必然的に穴の面積が減るため、高エネルギー用コリメータは一般的に感度が低くなります。

出題者の“声”

この問題は、コリメータの設計図が頭に入っておるかを試しておる。

「細長い筒で覗くと、遠くがくっきり見えるが、暗い」 「太く短い筒で覗くと、明るいが、周りがボヤける」 このイメージを持つんじゃ。

そして選択肢4。 コリメータは鉛でできておるが、無限に厚くはできん。 壁を薄くすれば穴をたくさん開けられるが、薄すぎると放射線が突き抜けてしまう。 この「物理的な限界」を知っておることが、良い画像を撮るための第一歩なんじゃよ。


臨床の“目”で読む

現場では、この知識を使ってコリメータを「交換」しています。

  • 基本は「LEHR」
    • 日常の骨シンチや脳血流シンチ(99mTcなど)では、「低エネルギー高分解能(Low Energy High Resolution:LEHR)」というコリメータが標準です。 「感度」よりも「分解能(画質の綺麗さ)」を優先した設計になっています。
  • 使い分けのリアル
    • 「どうしても短時間で終わらせたい(じっとしていられない小児など)」
    • ➡ 感度優先の「LEGP(General Purpose)」や「LEHS(High Sensitivity)」に変えることがあります。穴が大きくて短いやつです。
    • 「アドステロール(131I)を撮るぞ」
    • ➡ エネルギーが高いので、絶対に「高エネルギー用(High Energy)」に変えないといけません。もし低エネルギー用のままで撮ると、ペネトレーションで画像が真っ白にボケて使い物になりません。
  • コリメータ交換は慎重に?
    • コリメータは鉛の塊です。一枚数十キロあります。 これを交換するのは、なかなか大変です。 もし落としたら…? 下にある検出器(クリスタル)が割れて、修理費数千万円コースです。 「物理的特性」も大事ですが、現場では「物理的重量」も忘れないでくださいね。

今日のまとめ

  1. 分解能を良くするには ➡ 穴を小さく、長さを長くする。(感度は下がる)
  2. 感度を良くするには ➡ 穴を大きく、長さを短くする。(分解能は下がる)
  3. ペネトレーションは、隔壁が薄いと起こる。
  4. 高エネルギー核種には、厚い隔壁のコリメータが必要。
  5. 現場では、目的に合わせて「LEHR」や「高エネルギー用」を使い分ける!

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