SPECT による局所脳血流定量で正しいのはどれか。
- 定量値は灰白質より白質が高い。
- 123I-IMP を用いた定量法はない。
- アセタゾラミド負荷により定量値は低下する。
- 部分容積効果により定量値は過小評価される。
- パトラックプロット法では動脈採血を必要とする。
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
4.部分容積効果により定量値は過小評価される。
解説
✔ 「部分容積効果(Partial Volume Effect)」の正体
画像診断装置(SPECTやPET)には、分解能(解像度)の限界があります。 装置の分解能よりも「小さなもの」や「薄いもの」を撮像すると、その信号が枠からはみ出して、実際の濃度よりも「低く(暗く)」写ってしまいます。 これを部分容積効果と呼びます。
脳血流SPECTにおいて、血流が豊富な「灰白質(大脳皮質)」は、実は厚さが数mmしかない非常に薄いシート状の構造です。 SPECTの分解能(約10mm以上)では、この薄さを正確に捉えきれず、信号が周囲(血流の少ない白質や、何もない脳室)に漏れ出して平均化されてしまいます。 その結果、測定される定量値(血流量)は、本来の値よりも「低く(過小評価)」なってしまうのです。
✔ 各選択肢について
1.定量値は灰白質より白質が高い。
- ❌ 誤り
- 灰白質:神経細胞が集まって活動している場所。エネルギーを大量に使うので血流は多いです(約 80 mL/100g/min)。
- 白質:神経線維(配線)が通る場所。血流は少ないです(約 20 mL/100g/min)。 実際の画像でも、外側の皮質(灰白質)が濃く写り、内側の髄質(白質)は薄く写ります。
2.123I-IMP を用いた定量法はない。
- ❌ 誤り
- IMP(アンフェタミン)は脳血流定量によく使われる代表的な核種です。
- ARG法(Autoradiography法):1回の採血と1回の撮像で定量できる、臨床で最も普及している方法の一つです。
- マイクロ・スフェア法:持続採血が必要な古典的な方法です。 IMPは「肺への集積が高い」という特徴があり、それを考慮した計算モデルが確立されています。
3.アセタゾラミド負荷により定量値は低下する。
- ❌ 誤り
- アセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)は、脳血管を強制的に「拡張」させる薬です。 血管が広がるので、正常な反応であれば血流は「増加」します。 もし増加しなければ、「もう広がる余地がない(予備能が枯渇している)」と診断され、脳梗塞のリスクが高い状態と判断されます。
4.部分容積効果により定量値は過小評価される。
- ✅ 正解
- 灰白質のような薄い構造物は、分解能不足により信号が周囲へ漏れ出し、本来の値よりも低く測定されてしまいます。
5.パトラックプロット法では動脈採血を必要とする。
- ❌ 誤り
- パトラックプロット法(Patlak Plot)は、99mTc-ECDを用いた定量法でよく使われます。 この方法の最大のメリットは、「動脈採血が不要」なことです。 画像上の大動脈弓(心プール)のカウントなどを「入力関数」として代用することで、痛い動脈採血なしで定量値を算出できます。
出題者の“声”

この問題は、脳血流SPECTの「生理学」と「物理学」の両方を理解しているかを試しておる。
まず生理学。「灰白質の方が血流が多い」「血管拡張薬を使えば血流は増える」。これは常識として押さえておきたい。
そして物理学。「機械には分解能の限界がある」ということじゃ。 小さいもの、薄いものは、信号が薄まって暗く写る。これが部分容積効果じゃ。 「小さく見えるから、値も小さくなる(過小評価)」。 この感覚を持っていれば、複雑な数式を知らなくても、直感的に正解を選べるはずじゃよ。
臨床の“目”で読む

現場では、この「定量値」を出すために技師が日々工夫しています。
- 採血するか、しないか?
- 定量検査には「動脈採血」が必要なもの(ARG法など)と、「採血なし」でできるもの(Patlak法、Graph Plot法など)があります。 動脈採血は医師しか行えず、患者さんにとっても痛みやリスクを伴います。 そのため、最近の臨床現場では、採血なしで済む「Patlak法(ECD)」や「Graph Plot法(IMP)」が好まれる傾向にあります。これなら技師だけで検査が完結し、患者さんの負担も少ないですからね。
- アセタゾラミド(ダイアモックス)負荷
- 脳梗塞のリスク評価で行う「ダイアモックス負荷」。 薬を入れると脳の血流が一気に増えるので、患者さんは「ふらつき」や「手足のしびれ」、時には「頭痛」を感じることがあります。 撮影中もマイクで「気分悪くないですか?」と声をかけ、異変があれば即座に対応できるように常にモニターを監視しています。 検査はただデータを出せば良いわけではなく、安全管理も重要な仕事です。
今日のまとめ
- 部分容積効果:分解能不足で信号が漏れ出し、定量値は本来より低く(過小評価)なる。
- 脳血流の多さ:灰白質(皮質) > 白質(髄質)。
- アセタゾラミド:脳血管拡張薬。血流を増加させ、予備能を見る。
- IMPでも定量は可能(ARG法、Graph Plot法など)。
- パトラック法は、動脈採血なし(非侵襲)で定量できる便利な方法。



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