【第76回 午前 31】肺の血管をわざと詰まらせる⁉MAAの驚きの原理

核医学診療技術学

99mTc-MAA の粒子径[μm]はどの程度か。

  1.  0.03
  2.  0.3
  3.  3
  4.  30
  5.  300

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


4.30


解説

✔ MAAは「肺のフィルター」に引っかかるサイズ

99mTc-MAA(大凝集人血清アルブミン)は、肺血流シンチグラフィに使われるお薬です。 この検査の原理は、「肺の毛細血管に粒を詰まらせて(塞栓させて)、その分布を見る」というものです。

では、肺の毛細血管の太さはどれくらいでしょうか? 人間の赤血球の直径が約 7〜8 μm です。毛細血管は、赤血球がやっと通れるくらいの細さなので、直径は約 10 μm 程度です。

MAAが血管に引っかかるためには、「赤血球よりも大きく」なければなりません。 しかし、大きすぎると手前の太い血管で詰まってしまい、末梢まで届きません。 そこで、MAAの粒子径は「10 〜 100 μm(平均 30〜50 μm)」になるように調整されています。


✔ 各選択肢について

1.0.03

  • 誤り
  • これはウイルスやコロイド粒子(99mTc-スズコロイドなど)のサイズです。 こんなに小さいと、毛細血管をスルスル通り抜けてしまい、肝臓や骨髄の網内系(掃除屋細胞)に食べられてしまいます。

2.0.3

  • 誤り
  • これもコロイド粒子のサイズです。毛細血管には引っかかりません。

3.3

  • 誤り
  • 赤血球(7〜8 μm)よりも小さいサイズです。 これでは毛細血管を通り抜けてしまい、全身に回ってしまいます。

4.30

  • 正解
  • 赤血球(約8μm)の約4倍の大きさです。 このサイズなら、肺の毛細血管(約10μm)に確実に引っかかり(一時的に塞栓し)、きれいな肺血流画像が得られます。

5.300

  • 誤り
  • 大きすぎます! 0.3 mmです。 こんなに大きな塊を入れたら、もっと手前の細動脈レベルで詰まってしまい、肺梗塞のような症状を起こしたり、不均一な画像(ホットスポットだらけ)になったりして危険です。

出題者の“声”

この問題は、単なる数字の暗記ではなく、「人体のサイズ感」「検査の原理」を結びつけられているかを試しておる。

肺血流シンチは「毛細血管塞栓法」じゃ。 つまり、「血管(約10μm)より大きくなければならない」。 この時点で、選択肢1, 2, 3は消える。

残るは30か300かじゃが、300μmなんて肉眼で見えるほどの砂粒じゃぞ。そんなものを血管に入れたらどうなるか、想像すればわかるはずじゃ。 「赤血球よりちょっと大きいサイズ」。この感覚を持っておけば、迷うことはないぞ。


臨床の“目”で読む

「血管を詰まらせる」と聞いて、ギョッとした方もいるかもしれません。 「それって、人工的に肺塞栓(エコノミークラス症候群)を作ってるのと同じじゃん!」と。

  • 安全性の秘密
    • その通りです。微小な肺塞栓を作っています。 しかし、MAAで塞栓される血管は、肺全体の血管のうちの「数千分の一」程度に過ぎません。 肺の機能には全く影響がないレベル(安全域)で検査を行っています。 しかも、MAA(アルブミン)は生体内で数時間もすれば溶けてなくなり、血流は元通り再開します。だから安全なんです。
  • 注意が必要な患者さん
    • ただし、例外があります。 「右左シャント(心臓に穴が開いている)」がある患者さんです。 穴を通ってMAAが左心系(動脈側)に抜けてしまうと、脳や腎臓の血管に詰まってしまい、脳梗塞などを起こすリスクがあります。 だから我々技師は、検査中にモニターを見て、 脳に薬が行ってないか常にチェックしています。もし脳集積が見えたら、それはシャントの証拠であり、同時に危険信号でもあるのです。

今日のまとめ

  1. 99mTc-MAAの粒子径は10〜100μm(平均 30〜50μm)
  2. 赤血球(約8μm)より大きく、毛細血管(約10μm)に引っかかるサイズ。
  3. 原理は「肺毛細血管塞栓法」。
  4. 詰まらせる血管数はごくわずかなので、肺機能への影響はない(安全)。
  5. 右左シャントがある場合は、脳梗塞リスクに注意!

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