粒子線治療用シンクロトロンのリング内でビームが進行方向に加速を受ける箇所の数で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
2.1
解説
✔ シンクロトロンは「ブランコ」と同じ原理
まず、リニアック(直線加速器)を想像してください。 あれは、粒子が一直線に進む間に加速しなければならないので、加速管(加速する場所)がズラーッと長く並んでいます。一度通り過ぎたら二度と戻ってきません。
一方、シンクロトロン(円形加速器)は、粒子がリングの中を何十万周、何百万周とグルグル回ります。 同じ場所を何度も通るなら、加速装置は1ヶ所あれば十分です。
【ブランコの例え】
- 粒子 = ブランコに乗っている子供
- 加速装置 = 背中を押すお父さん
お父さんが何人も並ぶ必要はありません。 「たった一人のお父さん(加速空洞)」が、子供が戻ってくるたびに、タイミングよく(シンクロして)背中をトンッと押してあげれば、子供はどんどん加速して高く上がっていきます。
これがシンクロトロンの名前の由来(Sync = タイミングを合わせる)であり、構造上の最大の特徴です。 よって、加速を受ける箇所(RF空洞)は「1箇所」が正解となります。
✔ 他のパーツは何をしている?
「じゃあ、リングの他の部分は何をしているの?」と思いますよね。 ほとんどの部分は「偏向電磁石(Bending Magnet)」で占められています。
- 加速空洞:ここを通る一瞬だけ加速する(1箇所)。
- 偏向電磁石:加速してスピードが出ると外に飛び出そうとするので、強力な磁石で無理やり内側に曲げて、軌道(リング)の中に留める。
- 四極電磁石:ビームが広がらないように絞る(レンズの役割)。
つまり、シンクロトロンのリングは「加速エリア」と「コース維持エリア」に分かれており、加速エリアは一箇所に集約されているのです。
出題者の“声”

「こんなマニアックな装置、一生触らないよ!」と思ったかな? 確かに、シンクロトロンがある施設は限られておる。
しかし、日本は「重粒子線治療(炭素線)」において世界をリードするトップランナーなんじゃ。 HIMAC(放医研)や兵庫、群馬、佐賀、神奈川、山形…。 これからの放射線治療を語る上で、粒子線は避けて通れない道じゃ。
この問題で聞きたかったのは、細かいスペックではない。 「リニアックは一回勝負だから長い距離が必要」 「シンクロトロンは周回するから一箇所で積み上げる」 この物理的なアプローチの違いを感じ取ってほしかったんじゃよ。
臨床の“目”で読む

「普通の技師には関係ない」と思われがちなシンクロトロンですが、実はその特性が「治療の質」に直結しています。
- エネルギーを変えられるのが最大の武器
- サイクロトロン(別の円形加速器)やリニアックは、エネルギーを変えるのが苦手です。 しかしシンクロトロンは、「何周回して、どれくらい加速してから取り出すか」を自由自在にコントロールできます。 つまり、「ビームの深さ(飛程)」を電気的にサッと変えられるのです。
- スキャニング照射の実現
- この「深さを自由に変えられる」特性のおかげで、腫瘍の形に合わせて塗り絵のようにビームを走らせる「スキャニング照射(IMPT)」が可能になります。 腫瘍の奥側から手前側へ、層(レイヤー)ごとにエネルギーを切り替えて塗りつぶしていく。 この高度な治療を支えているのが、「1箇所の加速空洞で何度も加速調整できる」シンクロトロンの柔軟性なんですよ。
今日のまとめ
- シンクロトロンは、粒子がリングを周回する加速器。
- 同じ場所を何度も通るため、加速する場所(RF空洞)は「1箇所」でよい。
- リニアック(直線)は、一回しか通らないので加速管が長い。
- シンクロトロンのメリットは、エネルギー(深さ)を自由に変えられること。
- これにより、高精度なスキャニング照射が可能になる。



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