CT で右肺上葉に直径 2.5 cm の腫瘍が認められ読影レポートに「臓側胸膜とわずかに接している」とのコメントがあった。その後、病理検査で肺癌と診断がつき病期診断が必要となった。臓側胸膜浸潤の有無で国際対がん連合〈UICC〉の T 分類が異なる(臓側胸膜浸潤なしの場合 T1、ありの場合 T2)。 他に転移がない場合この患者の TNM 分類で正しいのはどれか。
- 判定不能
- cT1N0M0
- pT1N0M0
- cT2N0M0
- pT2N0M0
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
2.cT1N0M0
解説
✔ 最大のカギは「c」か「p」か!
選択肢を見ると、「cT…」 と 「pT…」 の2種類がありますね。 この小文字のアルファベットの意味を知っているだけで、選択肢を半分に絞れます。
- c (Clinical):臨床的分類
- 手術前に行う分類。
- CT、MRI、PETなどの「画像診断」や、触診などの結果に基づいて判定します。
- p (Pathological):病理学的分類
- 手術後に行う分類。
- 手術で切除した臓器やリンパ節を、顕微鏡で詳しく調べて判定します。
✔ 今回のケースは?
問題文には「CTで…」「読影レポートに…」とあり、まだ手術をして切除したとは書かれていません。 「病理検査で肺癌と診断」とありますが、これは気管支鏡検査などで細胞を少し取って(生検)、「がんです」と確定させた段階です。 まだ腫瘍の広がりを手術で全部確認したわけではないので、「臨床的分類(c)」を使います。
この時点で、選択肢3(pT1)と5(pT2)は消えます!
✔ 「接している」と「浸潤」の違い
次に、T1 なのか T2 なのかを決めます。 問題文にヒント(ルール)が書いてありますね。
- 浸潤なし ➡ T1
- 浸潤あり ➡ T2
では、CTレポートには何と書いてありましたか? 「臓側胸膜とわずかに接している」
ここが日本語の読み取り問題です。 画像診断において、
- 「接している」:腫瘍が膜にピタッとくっついている状態。浸潤しているかどうかは、まだ分からない。
- 「浸潤している」:膜を食い破って、外へ入り込んでいる状態。
CTで「接している」だけでは、「浸潤あり」とは断定できません。 臨床分類(c分類)では、「画像で明らかに浸潤が見えない限り、低い方のステージ(浸潤なし)とする」のが基本ルールです。 また、腫瘍サイズも 2.5cm なので、3cm以下の T1 の基準を満たしています。
よって、「浸潤している証拠はない」=「T1」 となります。
✔ 結論
- 手術前(画像診断ベース)だから ➡ c
- 浸潤の確証がなく、3cm以下だから ➡ T1
- 答えは cT1N0M0
出題者の“声”

この問題で試したかったのは、知識量というより「情報の整理力」じゃ。
- 「c」と「p」の区別がついているか?(手術前か後か)
- 問題文のルールを冷静に読めるか?(浸潤したらT2、という条件)
- レポートの言葉を解釈できるか?(接している≠浸潤)
TNMの表を全部暗記していなくても、この3つの論理ステップを踏めば正解にたどり着ける。 現場に出ても、あわてず情報を整理できる技師になってほしいんじゃよ。
臨床の“目”で読む

-なぜ放射線技師に「TNM」が必要なの?-
「診断するのは医者の仕事でしょ?」と思うかもしれません。 しかし、この知識は技師の「撮影技術」に直結するのです。
もしあなたがCTを撮っていて、モニターに「胸膜に接している腫瘍」が見えたとします。 この時、TNM分類の知識がある技師ならこう考えます。
「あ、これが『T1』か『T2』かの分かれ目だ!」 「胸膜への浸潤があるかどうかで、患者さんのステージが変わってしまう(手術法も変わるかもしれない)」 「胸膜の部分をもっと薄いスライスで再構成して、拡大画像を作っておこう!」
このように、「医師が何を見たいか(診断のポイント)」を知っている技師は、痒い所に手が届く画像を提供できます。 だから国家試験に出るのです。
今日のまとめ
- c (Clinical):手術前。画像診断などで決める。
- p (Pathological):手術後。切除したものを病理で見て決める。
- 今回はCTのみの判断なので 「c」 を選ぶ。
- 「接している」≠「浸潤」。確証がなければステージは上げない(T1のまま)。
- 技師がステージを知れば、「見せるべき場所」がわかる!



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