NEW!【第76回 午前 57】出血性ショック!人体はどうやって生き延びるか?

基礎医学大要

大量出血によるショックで認められる所見はどれか。

  1. 血圧の上昇
  2. 尿量の増加
  3. 心拍数の増加
  4. 心拍出量の増加
  5. 末梢血管の拡張

出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)


3.心拍数の増加


解説

✔ 心臓は「回数」でカバーしようとする

人間の体には約4〜5リットルの血液が流れています。 大量出血でこの血液が失われると、細胞に酸素を届けることができなくなり、命に関わります(これがショック状態です)。

この時、体は生き残るために必死の「悪あがき(代償機転)」を行います。

「血液の量(1回に出す量)が減ってしまった…どうしよう?」 「そうだ! 回数(心拍数)を稼げば、なんとか全身に回せるはずだ!」

これが「3.心拍数の増加(頻脈)」の正体です。 血圧が下がりきる前の「初期段階」から心拍数は上がり始めるため、ショックの早期発見に最も重要なサインとなります。


✔ 各選択肢について

1.血圧の上昇

  • 誤り
  • ホースの水(血液)が減っているのに、水圧(血圧)が上がるはずがありません。
  • 血圧は低下します。

2.尿量の増加

  • 誤り
  • 体は水分不足の緊急事態です。「おしっこなんて出してる場合じゃない!」と腎臓が水分を再吸収するため、尿量は減少(乏尿・無尿)します。

4.心拍出量の増加

  • 誤り
  • 心臓に戻ってくる血液(前負荷)自体が減っているので、いくら心臓が頑張っても、送り出される血液の総量(心拍出量)は減少します。

5.末梢血管の拡張

  • 誤り
  • 少ない血液を「脳」や「心臓」などの重要臓器に優先して送るため、手足(末梢)の血管をギュッと収縮させて血流を遮断します。
  • その結果、手足は冷たくなり、顔色は青白くなります(血管収縮)。

出題者の“声”

この問題は、「患者の急変サイン」を見逃さない目を持っているか試しておる。

検査中に患者さんの顔色が悪くなったとする。「大丈夫ですか?」と声をかける。 その時、手首を触ってみて「脈が速くて弱い」と感じたら、それは血圧計で測るまでもなくショック状態の可能性が高い。

「血圧が下がってから慌てる」のではなく「血圧が下がるのを防ぐために、心臓が必死に回数を増やしている段階(代償性ショック)」で気づけるのが重要じゃ。 だからこそ、血圧低下よりも先に現れる「頻脈」を選ばせたわけじゃよ。


臨床の“目”で読む

この設問は、単なる知識問題に見えて、実は 「目の前の患者が『今ヤバい状態かどうか』を判断できるか?」を問うています。

救急CT、IVR(カテ室)、消化管出血や外傷の撮影現場では、画像が出るよりも先に、患者さんの体からのサインに気づかなければなりません。

  • カテ室での「嫌な予感」
    • 血管造影室(アンギオ)などで検査をしている時、モニターの心電図を見て「あれ? さっきまで脈拍70だったのに、急に100を超えてきたな…」と気づく瞬間があります。 同時に血圧が少し下がり始めている。 この「頻脈 + 血圧低下」のセットを見た時、現場の技師は「嫌な予感」がします。 「先生、レート上がってきてます。血圧少し下がってます」 すぐに医師と情報共有することで、手技中の見えない出血や急変にいち早く対応できるのです。
  • 画像だけでなく「バイタル」を見る
    • 心拍数が急に増えてきた
    • 顔色が悪い、冷や汗をかいている(末梢血管収縮)
    • 尿パックに尿が溜まっていない(乏尿)
    • これらはすべて「出血性ショックのサイン」です。 「画像は撮れたけど、患者さんは急変していた」では意味がありません。 「今この患者は危ない」と、バイタルの変化から嗅ぎ取れる技師になってください。

今日のまとめ

  1. 出血性ショック = 血液の枯渇
  2. 体は「頻脈(心拍数増加)」「血管収縮(冷や汗・蒼白)」で血圧を保とうとする。
  3. 尿量は減る(水を逃さないため)。
  4. 血圧が下がる前の「頻脈」こそが、急変の早期発見のカギ!

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