無散瞳眼底写真撮影で正しいのはどれか。
- 明室では撮影できない。
- 観察光には赤外線を用いる。
- 黄斑部と視神経乳頭を重ねて撮影する。
- 画角を大きくすると撮影範囲は狭くなる。
- 瞳孔径が5 mm以上なければ撮影できない。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.観察光には赤外線を用いる。
解説
✔ 無散瞳眼底カメラとは?
- 散瞳薬を使わず、自然な瞳孔径(通常3mm前後)で眼底を撮影できる装置です。
- 被検者の負担が少なく、糖尿病網膜症や高血圧性網膜症のスクリーニングにも有用です。
- 糖尿病網膜症: 糖尿病が長く続くと、目の奥の血管が傷んで出血やむくみを起こす病気。進行すると視力が落ちたり、失明のリスクもあるため、定期的な眼底チェックが大切。
✔ 各選択肢について
1.明室では撮影できない。
- ❌ 誤り
- 推奨は暗室だが、明室でも撮影自体は可能。
- 暗室の方が瞳孔が広がりやすく成功率が高い。
2.観察光には赤外線を用いる。
- ✅ 正解
- 赤外線で位置合わせし、フラッシュ(可視光)で撮影するのが基本。
- 赤外線は瞳孔反射を起こさない利点がある。
3.黄斑部と視神経乳頭を重ねて撮影する。
- ❌ 誤り
- 両者は解剖学的位置が異なるため、通常は2枚に分けて撮影する。
- 黄斑部 : ものを見るときに一番使う「視力の中心」の場所。
- 視神経乳頭:網膜からの視覚情報が視神経として脳へ出ていく出口にあたる部分。
4.画角を大きくすると撮影範囲は狭くなる。
- ❌ 誤り
- 画角を大きくする(広角化)と、より広い範囲が撮影可能になる。
5.瞳孔径が5 mm以上なければ撮影できない。
- ❌ 誤り
- 約3mm以上あれば撮影可能。
- 5mmは散瞳カメラの基準であり、無散瞳には不要。
- 散瞳検査:目薬で瞳孔を大きく開かせてから撮る眼底写真のこと。網膜の奥までしっかり観察できるけど、光がまぶしくなったり、撮影後しばらくピントが合いづらくなるのがデメリット。
出題者の“声”

この問題では、無散瞳眼底カメラの仕組みと使い方をちゃんと理解しておるか、そして散瞳検査と混同しておらんかを見ておるのじゃ。
赤外線でこっそり位置を合わせて、フラッシュで本番!という撮影の流れを知らんと、「明るい部屋じゃダメ?」「瞳孔が開いてないと撮れない?」と、先入観だけで誤答してしまうことがあるんじゃ。
大切なのは、機械の仕組みとその目的をセットで考えることじゃ。
臨床の“目”で読む

無散瞳眼底写真は、今や健診や一般外来でも当たり前に使われていますね。
赤外線で瞳孔を刺激せずに観察できる構造のおかげで、患者の負担も少なく、安全・迅速に撮影できるのが魅力です。
診療現場では、画角45°で「視神経乳頭中心」と「黄斑中心」の2枚を撮影すれば、血管アーケードや乳頭陥凹、黄斑疾患の所見まで一通り評価できます。
ちなみに、室内の照明を2〜3分ほど落としてから撮影すると、自然散瞳が得られやすく、撮影成功率もグッと上がりますよ。
キーワード
- 無散瞳眼底カメラ
- 赤外線観察光
- 黄斑部
- 視神経乳頭
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