脳 SPECT で正しいのはどれか。
- ¹²³I–IMP は主に線条体に集積する。
- ¹²³I–イオマゼニルは大脳白質に集積する。
- ¹²³I–イオフルパンは投与後速やかに撮影する。
- ⁹⁹ᵐTc–HMPAO は標識後数時間は安定である。
- ⁹⁹ᵐTc–ECD は高血流域で血流量を過小評価する。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
5.⁹⁹ᵐTc–ECD は高血流域で血流量を過小評価する。
解説
✔ SPECT脳血流剤の違いを理解しよう
- 脳SPECTでは、複数の放射性医薬品が使われますが、それぞれに標的・動態・安定性・撮影タイミングなどの特性があります。
- 特に、薬剤の初期抽出率や代謝・トラッピング特性を理解することで、正確な読影や定量評価が可能になります。
✔ 各選択肢について
1. ¹²³I–IMP は主に線条体に集積する。
- ❌ 誤り
- IMPは脳全体に血流依存で分布するため、線条体だけに特異的に集積するわけではない。
2.¹²³I–イオマゼニルは大脳白質に集積する。
- ❌ 誤り
- イオマゼニルは中枢型ベンゾジアゼピン受容体に結合し、灰白質(大脳皮質)に集積する。
3.¹²³I–イオフルパンは投与後速やかに撮影する。
- ❌ 誤り
- イオフルパン(DaTSCAN®)は線条体のドパミントランスポーター(DAT)に結合。
- 投与後3~6時間後に撮像する。
- 投与直後に撮像するとバックグラウンドが除去できず、集積ピークがまだ成立していないため、カウントが不十分でノイズが増える。
4.⁹⁹ᵐTc–HMPAO は標識後数時間は安定である。
- ❌ 誤り
- HMPAOは標識後の安定性が短く(30~60分以内)、再分布も起こるため「数時間安定」は不正確。
5.⁹⁹ᵐTc–ECD は高血流域で血流量を過小評価する。
- ✅ 正解
- ECDは高流量領域で抽出効率が飽和しやすく、血流をやや低めに評価する傾向がある。
出題者の“声”

この問題では、脳SPECTで使われる放射性医薬品の特性をちゃんと区別できておるかを見たかったのじゃ。
とくに重要なのは、「どの薬剤がどこに集まりやすいか」「どういうタイミングで撮影するか」じゃな。
一見似たような名称でも、IMP・ECD・HMPAO・イオフルパン・イオマゼニルなどは、それぞれ集積先・動態・評価目的がまるで違う。
中でも今回の正解であるECDの”過小評価”は、実臨床でもよく問われるポイントじゃ。
「薬が入ったから正確に写ってるはず!」ではなく、「薬剤ごとの限界や特性を踏まえて結果を読む」、その姿勢を養ってほしいのじゃ。
臨床の“目”で読む

脳SPECTでは、薬剤の特性に応じて評価の仕方を変えるのが基本です。
たとえば⁹⁹ᵐTc–ECDは、初期抽出率がやや低く、高血流領域(運動野や視覚野)では飽和が起こりやすい。そのため、実際の血流よりやや低く(=過小に)見えることがあります。
この性質を知らずに、「血流が少ない」と早合点してしまうと、誤診や過小評価につながるリスクがあります。
一方で、IMPやHMPAOは初期抽出率が高く、高血流域の評価にも強いという特徴があります。
このように、目的や評価対象によって薬剤を選び、撮影条件を調整することが求められるのが、脳SPECTの面白さでもあり難しさでもあります。
技師としては、薬剤の生理学的特性を理解しながら画像を読むスキルが不可欠です。
キーワード
- 脳SPECT
- ⁹⁹ᵐTc-ECD
- DaTSCAN®(¹²³I–イオフルパン)
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