我が国の 2022 年時点の統計で正しいのはどれか。
- 死因の第 1 位は肺炎である。
- がんによる死亡数は女性の方が男性よりも多い。
- 胃がん年齢調整死亡率は 2000 年と比べて上昇している。
- 女性の部位別がん死亡数で最も多いのは大腸がんである。
- 男性の部位別がん死亡数で最も多いのは前立腺がんである。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
4.女性の部位別がん死亡数で最も多いのは大腸がんである。
解説
✔ 2022年の日本におけるがん死亡数統計(国立がん研究センター・厚生労働省より)
・男女合計 死因:①悪性新生物(がん) ②心疾患 ③老衰 ④脳血管疾患 ⑤肺炎
・がん死亡数(2022年)
- 男性:約227,800人
- 女性:約165,300人(→ 男性の方が多い)
・部位別がん死亡数(2022年)
- 男性トップ3:①肺がん ②胃がん ③大腸がん
- 女性トップ3:①大腸がん ②肺がん ③膵がん
・胃がんの年齢調整死亡率は減少傾向(2000年比)
✔ 各選択肢について
1. 死因の第 1 位は肺炎である。
- ❌ 誤り
- 第1位は悪性新生物(がん)。
- 肺炎は2022年時点で第5位。
2.がんによる死亡数は女性の方が男性よりも多い。
- ❌ 誤り
- 男性の死亡数の方が多い(男性:約22.8万人、女性:約16.5万人)。
3.胃がん年齢調整死亡率は 2000 年と比べて上昇している。
- ❌ 誤り
- 日本では胃がんに対するスクリーニングや治療法の進歩により、年齢調整死亡率は2000年代以降 減少傾向 。
4.女性の部位別がん死亡数で最も多いのは大腸がんである。
- ✅ 正解
- 2022年の女性がん死亡部位第1位は大腸。
5.男性の部位別がん死亡数で最も多いのは前立腺がんである。
- ❌ 誤り
- 男性の1位は肺がん。
- 前立腺がんは罹患数は多いが死亡数は少ない。
出題者の“声”

この問題では、がん統計の基本的な知識と、“感覚”とのズレを見抜く力が試されるのじゃ。
「がんで亡くなるのは男性より女性の方が多いのでは?」「男性のがんといえば前立腺がんが一番多いのでは?」といったイメージは、実は統計データとは異なることがある。こうした思い込みで選択肢を誤ってしまった者もいるかもしれんな。
ここで特に覚えておいてほしいのは、「死亡数」と「罹患数(りかんすう)」は別物ということじゃ。
例えば、前立腺がんは罹患数(診断される人数)は非常に多いが、治療法の進歩などにより死亡に至るケースは相対的に少ない。だから、死亡数の順位ではトップにはならないのじゃ。
「死亡数の男女差」や「部位別の順位」といった基本的な統計データは、国家試験でも頻出じゃ。厚生労働省や国立がん研究センターが公開している“定番”の統計データには、一度しっかり目を通しておくことをお勧めするぞ。
臨床の“目”で読む

がんの統計データは、単なる数字の羅列ではありません。臨床現場や予防医療において「何を優先して対策すべきか」を考えるための、極めて重要な基礎資料です。
今回の正解肢「女性のがん死亡原因の第1位は大腸がん」という事実は、私たちに何を教えてくれるでしょうか。それは、乳がんや子宮頸がん検診と同様に、女性における大腸がん対策(検診や生活習慣の見直し)が非常に重要である、という揺るぎない根拠です。
また、「前立腺がんは罹患数は多いが死亡数は比較的少ない」といったギャップを知ることも大切です。こうした知識は、「このがんは早期発見できれば予後が良いのか」「進行が比較的緩やかなのか」といった、がんの臨床的な性質を理解する手がかりになります。
放射線技師としても、がん検診の現場で受診者に説明を行ったり、医師と治療方針について連携したりする際に、こうした統計的背景を理解しているかどうかで、専門家としての信頼度が大きく変わります。
数字の奥にある“意味”を読み解く姿勢が、医療現場では常に求められているのです。
キーワード
- 死因順位
- 部位別がん死亡数
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