DVHで正しいのはどれか。2つ選べ。
- 微分型と積分型がある。
- 肺の障害指標で D₂₀ が用いられる。
- 標的体積内の hot spot や cold spot を評価することができる。
- D₉₅ は目的とする標的やリスク臓器の 95%体積内の最大線量を表す。
- V₂₀ は目的とする標的やリスク臓器のうち 20 Gy 以上照射される体積の割合である。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
1.微分型と積分型がある。
5.V₂₀ は目的とする標的やリスク臓器のうち 20 Gy 以上照射される体積の割合である。
解説
✔ DVH (Dose-Volume Histogram:線量体積ヒストグラム)とは?
DVHは、放射線治療計画において、標的(がん)や周囲の正常組織(リスク臓器)が、「どれくらいの線量を、どれくらいの体積で受けているか」をグラフで可視化するツール。横軸に線量(Gy)、縦軸に体積(%)をとり、線量分布を統計的に評価します。
- 微分型DVH (Differential DVH) :線量を細かな区間(例: 1Gyごと)に分け、それぞれの線量区間に含まれる組織の体積を棒グラフ(ヒストグラム型)で示します。どの線量域に体積が集中しているかが一目でわかります。
- 積分型DVH (Cumulative DVH) :「ある線量(X Gy)以上の線量を受ける体積」を累積してプロットしたもので、滑らかな曲線を描きます。臨床で評価に用いられるのは、主にこちらの積分型DVHです。
✔ 各選択肢について
1. 微分型と積分型がある。
- ✅ 正解
- 上記の通り、DVHには微分型と積分型の2種類が存在します。
2.肺の障害指標で D₂₀ が用いられる。
- ❌ 誤り
- 肺障害(放射線肺炎)のリスク評価では、主に V₂₀(肺全体体積中、20 Gy 以上照射される割合) や 平均肺線量(MLD: Mean Lung Dose) が指標として使われる。
- D₂₀(肺の20%の体積が受ける線量)が指標として使われることは稀。
3.標的体積内の hot spot や cold spot を評価することができる。
- ❌ 誤り
- DVHは、あくまで線量と体積の統計情報を示すグラフであり、空間的な位置情報は含みません。
- ホットスポット(線量が極端に高い部分)やコールドスポット(線量が不足している部分)が「どこにあるか」は、CT画像上に重ねて表示される線量分布図で確認する必要があります。
4.D₉₅ は目的とする標的やリスク臓器の 95%体積内の最大線量を表す。
- ❌ 誤り
- D₉₅は「Dose received by 95% of the volume」の略で、「対象体積の95%が、少なくともこの線量以上を受け取っている」ことを示す値です。
- つまり、標的がどれだけ十分にカバーされているかを示す「最低保証線量」のような指標であり、最大線量ではありません。
5.V₂₀ は目的とする標的やリスク臓器のうち 20 Gy 以上照射される体積の割合である。
- ✅ 正解
- Vₓは「Volume receiving ≥ X Gy」の略です。
- 例えば、肺のV₂₀が30%であれば、「肺全体の30%の体積が、20Gy以上の線量を受けている」ことを意味し、これは肺の有害事象を予測する重要な指標となります。
出題者の“声”

この問題では、放射線治療計画の評価に不可欠なDVHの読み方と、各指標の意味を正確に理解できているかを確認したかったのじゃ。
「D₉₅」「V₂₀」といった略語には見覚えがあっても、その定義を正しく説明できるかが肝心じゃ。
特にD₉₅を“最大線量”と勘違いしてしまった者は、DVHのグラフをもう一度よく見てみるのじゃ。D₉₅は「体積95%」の点から線量軸に引いた値、つまり「標的の大部分(95%)が最低でも受け取っている線量」を示す。この“最低保証”という感覚が重要なんじゃ。
また、「ホットスポットの位置がわかる」という選択肢も典型的なひっかけじゃな。
DVHは便利なツールじゃが、万能ではない。あくまで線量と体積の統計情報であり、空間情報は失われているという限界を理解しておく必要があるぞ。
略語を覚えるだけでなく、その指標が持つ意味と限界をセットで押さえることが、真の理解への道じゃ!
臨床の“目”で読む

DVHは、放射線治療計画の「成績表」であり、治療の質と安全性を議論するための「共通言語」です。私たちはこのグラフから、治療効果と有害事象(副作用)のバランスを読み取ります。
- 標的の評価:D₉₅で治療効果を保証する → 標的体積(PTV)のD₉₅は、処方線量に対して十分に高い値であることが求められます。もしD₉₅が低い場合、それは「標的の一部に線量が足りていない(コールドスポットがある)可能性」を示唆する、極めて重要な警告サインです。
- リスク臓器の評価:V₂₀などで安全性を確認する → 例えば、肺のV₂₀は放射線肺臓炎のリスクと直結します。ガイドラインで示されたV₂₀の閾値を超えている場合、肺炎のリスクが高まるため、ビームの角度を変えるなどして治療計画の修正を検討します。
このように、DVHは単なるグラフではなく、「この計画で攻めるべきか、守るべきか」を判断するための客観的な指標です。
放射線技師は、治療計画システムが算出したDVHを鵜呑みにするのではなく、「このD₉₅はなぜ低いのか?」「V₂₀をもう少し下げられないか?」と吟味し、医師や医学物理士と議論する能力が求められます。その姿勢こそが、患者さん一人ひとりにとって最適な治療を実現する力となるのです。
キーワード
- DVH(Dose‐Volume Histogram)
- D₉₅=最小保証線量
- V₂₀=臓器損傷リスク指標
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