電子線の R₅₀ で正しいのはどれか。
- 単位は g/m である。
- 校正深の計算に必要である。
- PDD から直接求めることができる。
- 質量エネルギー吸収係数を意味する。
- 測定の基準条件はエネルギーに関わらず照射野サイズ 10 cm×10 cm である。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.校正深の計算に必要である。
解説
✔ R₅₀ とは何か?
- R₅₀は、電子線の「質(Quality)」、つまりエネルギーの特性を示す最も重要な指標の一つです。
- 具体的には、水の深さに対する線量の割合を示したPDD(深部量百分率)曲線において、線量が最大値の50%にまで減衰する深さ(cm)を指します。
- このR₅₀は、電子線の正確な線量測定を行うための国際的なプロトコル(IAEA TRS-398やAAPM TG-51など)において、様々な計算の基礎として用いられます。
✔ 各選択肢について
1. 単位は g/m である。
- ❌ 誤り
- R₅₀は「深さ」を示すため、単位は「cm」または水の密度(約1 g/cm³)を乗じた、質量深さ 「g/cm²」 。
2.校正深の計算に必要である。
- ✅ 正解
- 電子線線量計の校正深 dc は R₅₀ の値から演算して決定します。
- dc = 0.6·R₅₀ – 0.1
3.PDD から直接求めることができる。
- ❌ 誤り
- R₅₀はPDD曲線上の点ですが、通常、測定された離散的なデータ点の間を補間計算して50%線量となる正確な深さを求める必要があります。
- グラフを見て「だいたいこの辺り」と目視で読み取るわけではないため、「直接」読み取れるという表現は不正確です。
4.質量エネルギー吸収係数を意味する。
- ❌ 誤り
- 質量エネルギー吸収係数(μₑₙ/ρ)は、放射線が物質と相互作用してエネルギーを与える確率を示す「物質の性質」です。
- 一方、R₅₀は「ビームの性質」を示す指標であり、全く異なる概念です。
5.測定の基準条件はエネルギーに関わらず照射野サイズ 10 cm×10 cm である。
- ❌ 誤り
- 10×10 cmは主にX線の基準照射野です。
- 電子線は散乱しやすいため、深部での側方散乱を十分に含んだ安定したPDD曲線を得るには、エネルギーに応じてより大きな照射野(例: 20×20 cmなど)が必要になります。
出題者の“声”

この問題では、「R₅₀という電子線治療における基本指標が、実際にどう使われ、どんな意味を持っているか」を正しく理解しておるかを確かめたかったのじゃ。
R₅₀と聞くと、「深部量百分率(PDD)の50%の深さだろう?」と何となく覚えておる者も多いじゃろう。じゃが、R₅₀は単なる“深さの目安”ではなく、電子線の線質を表す物理的な基準値であり、校正深の決定に直結する重要パラメータなんじゃ。
また、「PDDから直接求められる」という言葉を、「グラフを描けば勝手にわかる」と早合点してしまうのもありがちな誤解じゃ。
実際には、測定条件の厳密な管理と補間処理の正確さがあってこそ、信頼できるR₅₀が得られるのじゃよ。
思い込みや曖昧な知識で選択肢を選ぶと、ひっかかってしまうぞい。一つ一つの用語の定義と、その背景にある理由をセットで押さえることが肝心じゃ!
臨床の“目”で読む

電子線治療は、皮膚がんや乳房温存術後のブースト照射など、体表面に近い病電子線治療は、皮膚がんや乳房温存術後のブースト照射など、体表面近くにある病変に対する治療で広く使われています。
この治療法の最大の特徴は、標的の深さまで十分な線量を届け、そこから先は線量が急激に落ちるという性質です。つまり、深部臓器(肺・心臓など)への不要な被ばくを効果的に抑えられるという利点があります。
この高い選択性を物理的に保証する起点となるのが「R₅₀」です。
R₅₀は、その電子線ビームの“線質”を示すパラメータであり、以下の点で極めて重要です。
- 線量計の校正深(dc)や線質変換係数(kQ,Q0)の算出に必要
- 治療計画装置(TPS)の線量分布と実測PDDとの整合性確認(QA)に用いられる
つまり、R₅₀は単なる物理パラメータではなく、患者に正確な線量を届けるための“信頼の基準点”なのです。
キーワード
- R₅₀ (g/cm²)
- PDD(深部量百分率)
- 校正深
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