診療録等の電子保存の3原則に含まれるのはどれか。2つ選べ。
- 可用性
- 完全性
- 機密性
- 見読性
- 真正性
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
4.見読性
5.真正性
解説
✔ 診療録等の電子保存における3原則(厚生労働省ガイドラインより)
電子的に保存された診療記録が法的に有効であるための要件として、以下の3つの原則が求められます。
- 真正性(authenticity):記録の作成責任者が明確で、虚偽入力、改ざん、消去・混同が防止されていること。(「誰が、いつ、何をしたか」が保証されている状態)
- 見読性(readability):電子記録の内容を、必要に応じて人間が読める形式で明瞭に表示・印刷できること。(「いつでも見やすく読める」状態)
- 保存性(preservation):法令で定められた期間中、上記の真正性と見読性を保ったまま記録を維持・復元できること。(「長期間、安全に保たれる」状態)
✔ 情報セキュリティの3要素(CIA)
一般的な情報システム全般の安全性を維持するための基本概念です。
- 機密性 (Confidentiality):許可された者だけが情報にアクセスできること。
- 完全性 (Integrity):情報が破壊、改ざん、消去されていない、正確な状態であること。
- 可用性 (Availability):許可された者が、必要なときにいつでも情報にアクセスし、サービスを利用できること。
出題者の“声”

この問題の狙いは、医療情報を電子データとして扱う上で、「法的な保存要件」が何であるかを正確に理解しているかを確認することじゃ。
最大のひっかけポイントは、多くの者が聞き覚えのある「情報セキュリティの3要素(CIA)」との混同じゃな。
「可用性、完全性、機密性」も情報管理ではもちろん重要じゃが、この問題で問うているのは、厚生労働省のガイドラインで定められた「診療記録を電子的に保存するための“おきて”」の方じゃ。
「真正性、見読性、保存性」という3つのキーワードが、法的な証拠能力を持つための必須条件となる。このように「似て非なる3点セット」は、国家試験では知識の正確性を問う格好のテーマじゃ。
正しく覚えておればサービス問題。ここを落とすのはもったいないぞい。しっかり押さえて合格に一歩近づくのじゃ!
臨床の“目”で読む

電子カルテやPACSが普及した現代の医療現場において、「電子保存の3原則」は、私たちの業務と法的責任の基盤となる、極めて重要な概念です。
- 真正性:放射線技師が撮影した画像の撮影情報(撮影者、日時、撮影条件など)が、誰にも改ざんされずに記録として残ること。これが担保されていなければ、医療過誤などの際に証拠として成り立ちません。
- 見読性:保存したDICOM画像が、数年後でも必ずビューアで表示でき、診断に耐えうる画質で観察できること。特殊なフォーマットで保存した結果、「将来のシステムでは表示できない」では話になりません。
- 保存性:法令で定められた5年、あるいはそれ以上の期間、上記の2つの性質を維持し続けられること。バックアップ体制の構築などがこれにあたります。
私たち医療従事者は、日々の記録がこれら3つの原則に則って管理されていることを理解し、そのルールを遵守する責任があります。
「システムが自動でやってくれる」と考えるのではなく、「なぜ、いつログインしたかの記録が残るのか」「なぜ、一度確定したレポートは修正できない(または修正履歴が残る)のか」といったシステムの仕組みの裏にある、これらの原則を意識することが、専門家としての信頼性と医療安全につながるのです。
キーワード
- 電子カルテ
- 電子保存の3原則
- 情報セキュリティの3要素
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