第77回 午前 49

基礎医学大要

右心房と右心室の間にある弁はどれか。

  1. 三尖弁
  2. 静脈弁
  3. 僧帽弁
  4. 大動脈弁
  5. 肺動脈弁

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


1.三尖弁


解説

✔ 心臓の弁とは?

心臓には4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)があり、それぞれの部屋の出口には、血液が逆流しないようにする「弁(Valve)」が備わっています。この4つの弁の名称と位置を、血液の流れに沿って理解することが重要です。

  • 右心房→右心室三尖弁
  • 左心房→左心室:僧帽弁
  • 右心室→肺動脈:肺動脈弁
  • 左心室→大動脈:大動脈弁

出題者の“声”

この問題の狙いは、心臓の基本的な解剖、特に4つの弁の「名前」と「位置」を正確に結びつけて記憶できているかを確認することじゃ。

心臓は、血液循環のポンプ役。そのポンプが効率よく働くためには、血液が一方通行で流れることが絶対条件じゃ。その流れを制御しているのが、この4つの「弁」なんじゃな。

右心房と右心室の間は三尖弁」「左心房と左心室の間は僧帽弁」。この左右の対応をしっかり区別できるか。そして、「静脈弁」のような、心臓の外にある全く別の弁と混同しないか。

この問題は、心臓の構造を理解する上での「はじめの一歩」。この4つの弁の配置図を頭の中に描けるようになることが、心臓カテーテル検査や心臓CTなど、あらゆる心臓関連の業務の基礎となるんじゃ。


臨床の“目”で読む

心臓の4つの弁の解剖を正確に理解することは、心臓の画像検査に携わる放射線技師にとって、必須の知識です。それは、多くの心疾患がこれらの「弁」に起因するからです。

  • 弁疾患と画像診断心臓超音波検査や心臓CT/MRIでは、弁の形態や動きを評価します。
    • 狭窄症:弁の開きが悪くなり、血液の流れが妨げられる状態。(例:大動脈弁狭窄症)
    • 閉鎖不全症(逆流症):弁の閉まりが悪くなり、血液が逆流してしまう状態。(例:僧帽弁閉鎖不全症) これらの病態を評価するには、どの弁がどの部屋の出口にあるのかを正確に把握していなければなりません。
  • 構造的心疾患(SHD)インターベンションとの関わり近年、カテーテルを用いて心臓の弁を治療する低侵襲な治療(インターベンション)が急増しています。
    • TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術):大動脈弁狭窄症に対する治療。
    • 経皮的僧帽弁クリップ術(マイトラクリップ):僧帽弁閉鎖不全症に対する治療。

これらの治療では、放射線技師は手術室でX線透視装置を操作し、医師が弁の位置を正確に把握するための画像をリアルタイムで提供します。まさに、弁の解剖知識が臨床現場で活かされる最前線です。

放射線技師が弁の構造を理解していることで、医師とのコミュニケーションが円滑になり、より安全で質の高い治療に貢献できます。「ただ画像を撮る」のではなく、「解剖を理解して、治療をサポートする」。その意識を持つ上で、この問題は基本中の基本と言えるのです。


キーワード

  • 三尖弁
  • 僧帽弁
  • 大動脈弁
  • 肺動脈弁
  • 心臓解剖
  • 構造的心疾患

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