画像診断用ディスプレイで正しいのはどれか。
- 不変性試験は2年ごとに行う。
- 輝度比は最大輝度と最小輝度の比である。
- 照度計を用いてコントラスト応答を求める。
- 解像度2,048 × 2,560は3メガピクセルに相当する。
- テストパターンを用いた目視試験は客観的評価となる。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.輝度比は最大輝度と最小輝度の比である。
解説
✔ なぜディスプレイの品質管理が重要なのか?
どんなに優れた装置で撮影した画像も、最終的に表示するディスプレイの性能が悪ければ、その価値は失われてしまいます。
病変の見落としを防ぎ、常に安定した診断環境を維持するため、ディスプレイの品質管理は極めて重要です。
✔ 品質管理の重要用語
- 輝度比 (Luminance Ratio)
- ディスプレイが表示できる最も明るい部分の輝度(Lmax)を、最も暗い部分の輝度(Lmin)で割った値です(Lmax / Lmin)。この値が大きいほど、黒はより黒く、白はより白く表現でき、コントラストの高い優れたディスプレイと言えます。
- 輝度計 vs 照度計
- 輝度計: ディスプレイの画面から出てくる光の強さ(輝き)を測定します。単位は [cd/m²] 。
- 照度計: 周囲の照明などが、机や壁面を照らす光の強さ(部屋の明るさ)を測定します。単位は [lux]。
- 評価方法:主観的 vs 客観的
- 主観的評価: テストパターン(TG18-QCなど)を画面に表示し、人間の目で「異常がないか」をチェックする方法。手軽ですが、評価者によって判断がブレる可能性があります。
- 客観的評価: 輝度計などの測定器を用いて、数値を測定する方法。客観的なデータに基づいた評価が可能です。
✔ 各選択肢について
1. 不変性試験は2年ごとに行う。
- ❌ 誤り
- 不変性試験は、ディスプレイの性能が維持されているかを確認する定期的なチェックです。
- ガイドラインでは毎月~年1回の実施が推奨されており、2年ごとでは頻度が不十分です。
2.輝度比は最大輝度と最小輝度の比である。
- ✅ 正解
- 輝度比の定義そのものです。ディスプレイのコントラスト性能を示す基本的な指標です。
3.照度計を用いてコントラスト応答を求める。
- ❌ 誤り
- ディスプレイのコントラスト(輝度)を測定するのは輝度計の役割です。
- 照度計は、読影室の環境光(部屋の明るさ)を測定するために用います。
4.解像度2,048 × 2,560は3メガピクセルに相当する。
- ❌ 誤り
- 画素数は単純な掛け算です。2,048 × 2,560 = 5,242,880画素 ≈ 約5.2メガピクセル(MP)です。マンモグラフィ用の高精細モニタなどで使われる解像度です。
5.テストパターンを用いた目視試験は客観的評価となる。
- ❌ 誤り
- 人間の目による評価は、評価者の視力やその日の体調にも左右されるため、主観的評価に分類されます。客観的評価には、輝度計などの測定器が必要です。
出題者の“声”

この問題は、画像診断の最後の砦である「ディスプレイ」の品質管理について、その用語と手法を正確に理解しておるかを試しておる。
最大のワナは、「輝度計」と「照度計」の混同じゃな。名前が似ておるが、一方は「画面の光」、もう一方は「部屋の光」を測る、全く別の道具。
他にも、「不変性試験の頻度」や「メガピクセルの計算」といった、知っていれば即答できるが、うろ覚えだと間違える知識もちりばめておいた。
「目視試験は客観的か?」という問いも、一見もっともらしく見えるが、人間の判断が介在する以上、それは「主観的」じゃ。言葉の定義を正確に捉える力が試されておるぞ。
臨床の“目”で読む

ディスプレイの品質管理は、医学物理士や専門家だけが行うものではなく、私たち放射線技師にとっても日常的な業務の一部です。
ー日常的なチェック「TG18-QCテストパターン」ー
多くの施設では、技師が始業前などに「TG18-QC」という標準テストパターンを用いて、簡単な目視チェックを行っています。
- 階調の確認
- パターンの中心や四隅にある、背景との輝度差がわずかな四角形(5%や95%のパッチ)が見えるか? → コントラスト性能のチェック
- 歪みの確認
- 格子模様がまっすぐに見えるか? → 幾何学的ひずみのチェック
- 全体的な印象
- 画面に明らかな色ムラや輝度ムラがないか?
これらの簡単なチェックを日々行うことで、ディスプレイの重大な劣化や異常を早期に発見できます。
ー読影環境の重要性ー
診断の質は、ディスプレイ本体の性能だけでなく、読影室の環境にも大きく左右されます。
例えば、室内の照明が明るすぎたり、窓からの外光が画面に映り込んだりすると、画像のコントラストが低下し、淡い病変を見落とす原因になります。そのため、読影室の照度は50ルクス以下に保つなど、厳密な環境管理が求められます。ディスプレイの輝度だけでなく、部屋の照度も重要、というわけです。
今日のまとめ
- 輝度比は、モニタの最大輝度 ÷ 最小輝度で計算され、コントラスト性能を示す。
- 輝度計は画面の明るさを、照度計は部屋の明るさを測る。この違いを明確に区別すること。
- テストパターンを用いた目視評価は主観的評価であり、測定器を用いた定量的評価が客観的評価である。
- ディスプレイの品質管理は、診断の質を維持し、病変の見落としを防ぐための重要な安全管理業務である。
コメント