第77回 午前 74

第77回

X線CTで正しいのはどれか。

  1. DLPの単位はmGyである。
  2. 管電圧が低くなるほどノイズは低下する。
  3. ピッチ係数を大きくすると撮影時間は長くなる。
  4. 管電圧が低くなるほど造影領域のCT値は低下する。
  5. dual energy CTを用いて仮想単色X線画像を作成できる。

出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)


5.dual energy CTを用いて仮想単色X線画像を作成できる。


解説

✔ この問題のポイント:CTの基本パラメータと最新技術の理解

この問題は、CT検査を構成する基本的なパラメータ(被ばく、画質、撮影時間)と、最新技術であるデュアルエナジーCT(DECT)の原理を正しく理解しているかを確認する問題です。


✔ 各選択肢について

1. DLPの単位はmGyである。

  • 誤り
  • DLP (Dose Length Product) は、CT検査全体の被ばく量を示す指標で、スキャン範囲の長さ(cm)を考慮します。
  • 単位は [mGy·cm] です。
  • [mGy]は、ある1スライスでの平均線量を示すCTDI (CT Dose Index)の単位です。

2.管電圧が低くなるほどノイズは低下する。

  • 誤り
  • 管電圧を下げると、X線のエネルギーが低くなり、体を透過するX線光子の数が減ってしまいます。検出器に届く情報量が減るため、結果として画像のザラつきであるノイズは増大します。

3.ピッチ係数を大きくすると撮影時間は長くなる。

  • 誤り
  • ピッチ係数とは、寝台が1回転あたりに進む距離をビーム幅で割った値です。ピッチ係数を大きくするということは、寝台がより速く動くことを意味します。そのため、同じ範囲を撮影する場合、撮影時間は短くなります。

4.管電圧が低くなるほど造影領域のCT値は低下する。

  • 誤り
  • CT用造影剤の主成分であるヨードは、エネルギーが低いX線ほどよく吸収する(光電効果が顕著になる)性質があります。
  • そのため、管電圧を下げると、造影されている領域のX線吸収が大きくなり、CT値は高くなります。
  • これは造影効果を高めるテクニックとして臨床で応用されます。

5.dual energy CTを用いて仮想単色X線画像を作成できる。

  • 正解
  • デュアルエナジーCT (DECT)は、2種類の異なるエネルギー(例: 80kVと140kV)で同時に撮影する技術です。この2つのエネルギーでの吸収の差を利用することで、コンピュータ上で「もし単一エネルギーのX線で撮影したら」という仮想単色X線画像を作成できます。
  • これにより、アーチファクトの低減や物質の同定が可能になります。

出題者の“声”

この問題は、CTの基本パラメータが画質や被ばくにどう影響するか、その因果関係を正しく理解しておるかを試しておる。言葉だけを覚えておる者は、必ずワナにはまるぞ。

  • 「電圧を下げる」
    • エネルギーが下がる → 透過しにくくなる → ノイズは増えるが、造影効果は上がる。このトレードオフの関係が見えておるか?
  • 「ピッチを上げる」
    • 寝台が速く動く → 撮影時間は短くなる。この動きをイメージできるか?
  • 「DLP」と聞いたら
    • 「CTDI × 長さ」、つまり単位は「mGy·cm」と即答できるか?

そして最後は、最新技術のDECTじゃ。

「デュアル」というからには、2つのエネルギー情報から何か新しい価値を生み出すはず。その代表例が「仮想単色X線画像」じゃ。

それぞれの技術が持つ「意味」を掴んでおれば、これはサービス問題じゃ。


臨床の“目”で読む

この問題の各選択肢は、すべて私たち放射線技師が日常的に画質と被ばくをコントロールするために使っている知識そのものです。

① 被ばく管理 (DLP)

DLPは、検査ごとの患者さんの被ばく線量を記録・管理するための標準的な指標です。

2020年からは、医療被ばくの線量管理・記録が義務化され、DLPを正しく理解し、記録・管理することは技師の必須業務となりました。

② 造影効果の最適化 (低管電圧撮影)

「管電圧を下げると造影効果が上がる」という原理は、特に血管撮影(CTA)などで積極的に利用されます。例えば、体格の小さい患者さんに対して、被ばくを抑えつつ鮮明な血管像を得るために、通常の120kVから100kVに管電圧を下げて撮影することがあります。

③ デュアルエナジーCTの臨床応用

デュアルエナジーCTは、今や多くの施設で使われる標準的な技術です。

  • 仮想単色X線画像
    • 金属アーチファクトを劇的に低減させ、インプラント周囲の観察を可能にします。
  • 物質密度画像
    • 腎臓結石の成分(尿酸塩か、シュウ酸カルシウムか)を非侵襲的に鑑別したり、痛風の原因である尿酸結晶を描出したりできます。

このように、CTの物理原理を深く理解することは、日々の検査を最適化し、診断価値の高い画像を安全に提供するために不可欠なのです。


今日のまとめ

  1. DLPは被ばく管理の指標で、単位は [mGy·cm]
  2. 管電圧を下げると、ノイズは増えるが、ヨードの造影効果は上がる
  3. ピッチ係数を大きくすると、寝台移動が速くなり、撮影時間は短縮される。
  4. デュアルエナジーCTは、2種類のエネルギー情報から仮想単色X線画像など、付加価値の高い画像を作成できる技術である。

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