乳房MLO方向撮影で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 圧迫圧は40 N程度とする。
- 乳房圧迫後に乳房支持台の角度を決定する。
- 非検側乳房が照射野内に入らないようにする。
- 乳房外側上部がブラインドエリアとなりやすい。
- 乳房支持台の角度を被検者の大胸筋と平行に合わせる。
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
3.非検側乳房が照射野内に入らないようにする。
5.乳房支持台の角度を被検者の大胸筋と平行に合わせる。
解説
✔ 乳房MLO方向撮影の目的とは?
MLO(Mediolateral Oblique:内外側斜位)方向撮影は、乳がん検診における基本となる撮影法です。
その最大の目的は、一度の撮影で、できるだけ広範囲の乳房組織を描出することにあります。特に、乳がんの好発部位でありながら、通常の上下方向(CC方向)撮影では写しにくい腋窩(わきの下)に近い領域(上外側領域)をしっかりと含めることが重要です。
✔ MLO撮影の基本原則
- 支持台の角度設定
- 上記の目的を達成するため、撮影台(乳房支持台)を、被検者の大胸筋の走行と平行になるように傾けます。角度は個人の体格によって異なりますが、一般的に30~60度の範囲で調整します。これにより、大胸筋ごと乳房組織を前方に引き出しやすくなります。
- 非検側乳房の除外
- 撮影する側と反対側の乳房(非検側乳房)が画像に写り込んでしまうと、乳腺の重なりによって病変が見えにくくなる原因となります。ポジショニングの際には、必ず非検側乳房が照射野に入らないよう、十分に外側へよけてもらいます。
✔ 各選択肢について
1. 圧迫圧は40 N程度とする。
- ❌ 誤り
- 0N(約4kgf)では圧迫が不十分です。乳腺の重なりを分離し、被ばくを低減し、動きを止めるために、100~150N(約10~15kgf)程度のしっかりとした圧迫が必要です。
2.乳房圧迫後に乳房支持台の角度を決定する。
- ❌ 誤り
- 支持台の角度は、被検者の大胸筋の角度に合わせて、ポジショニングの最初に決定します。圧迫してから角度を変えることはありません。
3.非検側乳房が照射野内に入らないようにする。
- ✅ 正解
- 画像の重なりを防ぎ、正確な診断を可能にするための、基本的な配慮事項です。
4.乳房外側上部がブラインドエリアとなりやすい。
- ❌ 誤り
- MLO撮影は、まさにこの乳房外側上部を最大限描出するための撮影法です。MLO撮影で最も描出が困難(ブラインドエリア)となりやすいのは、乳房の内側や下部です。
5.乳房支持台の角度を被検者の大胸筋と平行に合わせる。
- ✅ 正解
- 大胸筋をなるべく広く、かつリラックスした状態で描出するための、MLO撮影におけるポジショニングの基本原則です。
出題者の“声”

MLO撮影は、ただ乳房を挟んで撮るだけではない。解剖学と物理学に基づいた、極めて論理的な技術なのじゃ。この問題は、その「論理」を理解しておるかを試しておる。
「なぜ斜めに撮るのか?」 その答えが、「大胸筋に沿って、上外側領域までしっかり描出するため」じゃ。この目的が分かっておれば、5番の選択肢が正しいこと、そして4番が誤りであることは自ずと見えてくる。
そして、ポジショニングの一連の流れを頭の中でシミュレーションできれば、「角度決定は圧迫前」という2番の正誤も判断できるはずじゃ。 圧迫圧のような具体的な数値も、プロとして当然知っておくべき知識。
一つひとつの選択肢が、マンモグラフィ撮影の基本動作を確認しておるのじゃ。
臨床の“目”で読む

MLO撮影の技術は、マンモグラフィの画像の質を左右する、最も重要な要素の一つです。
ー技師の技量が試されるポジショニングー
適切なMLO画像を得るには、高い技術と経験が求められます。被検者一人ひとりの体格(身長や肥満度)に合わせて最適な角度を見極め、痛みを与えすぎずに、かつ診断に必要な範囲を最大限引き出すためのコミュニケーションとポジショニング技術は、まさに放射線技師の腕の見せ所です。
ー良いMLO画像の評価ポイントー
撮影された画像が良いポジショニングで撮られているかは、以下の点で評価されます。
- 大胸筋が、乳頭の高さまでしっかりと描出されているか?
- 乳房下部(乳房下皺襞)が、しっかりと写し出され、開いているか?
- 皮膚のシワなどが写り込んでいないか?
これらの基準を満たす画像を安定して提供することが、質の高い乳がん検診に不可欠です。
ー角度の目安ー
一般的に、身長が高く痩せ型の方は大胸筋の角度が急になるため角度を大きく(例: 50~60度)し、身長が低くふくよかな方は角度が緩やかになるため角度を小さく(例: 30~40度)設定します。
今日のまとめ
- MLO撮影の最大の目的は、乳がんの好発部位である上外側領域を含め、乳房組織を最大限に描出すること。
- そのために、乳房支持台の角度を被検者の大胸筋の走行と平行に合わせるのが基本。
- 撮影時は、非検側乳房が照射野に入らないよう注意し、圧迫前に角度を決定する。
- MLO撮影で描出が困難なブラインドエリアは、乳房の内側・下部である。
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