頸部超音波像を示す。 総頸動脈はどれか。

- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
出典:厚生労働省公開PDF(令和6年版)
2.イ
解説
✔ 頸部の解剖マップを作ろう!
頸部エコー(特に甲状腺レベルの横断像)には、お決まりの配置があります。 画面の左側が患者さんの「右側」、右側が「左側」であることを意識して、地図を読み解きましょう。
- ア(甲状腺左葉)
- 画面中央に広がる、少し白っぽい(中等度エコー)実質臓器です。これがメインの甲状腺です。
- イ(総頸動脈)
- 甲状腺の外側に位置する、真ん丸で真っ黒な管。
- ウ(内頸静脈)
- 動脈のさらに後方にある、少し潰れたような形の黒い管。
- エ(食道)
- 甲状腺の背側(後ろ)に隠れている、層構造(何層かのリング状)を持った管。
- オ(気管)
- 画面中央(甲状腺の峡部の下)にある、中に空気を含んだ構造。空気は超音波を跳ね返すので、表面が白く光り、後ろは真っ暗(シャドウ)になります。

✔ 動脈と静脈、どう見分ける?
画像上で「イ」と「ウ」はどちらも黒い管ですが、どうやって区別すればいいのでしょうか? ここで臨床の必須テクニック「圧迫法(コンプレッション)」が登場します。
- 総頸動脈(CCA):つぶれない!
- 動脈は血圧が高く(約100mmHg)、血管の壁も分厚い筋肉でできています。
- そのため、プローブで上からグッと押しても、形を保ったまま(丸いまま)です。
- エコーで見ると、拍動に合わせてドクンドクンと動いているのが分かります。
- 内頸静脈(IJV):ペチャンコになる!
- 静脈は血圧が低く(数mmHg)、壁もペラペラです。
- そのため、プローブで軽く押すだけで、簡単に潰れて見えなくなります。
- 普段から楕円形や、いびつな形をしていることが多いのも特徴です。
今回の画像では、「イ」はきれいな円形を保っています。これは内圧が高い証拠、つまり動脈です。 一方、「ウ」は少し平べったくなっていますね。これは静脈の特徴です。
出題者の“声”

この問題は、頸部の解剖学的配置だけでなく、各組織の「超音波での見え方(エコー輝度や形状)」を理解しているかを問うておる。
特に食道(エ)の位置じゃ。 「食道は体の真ん中にある」と思っていると、甲状腺の裏(左側)にあるこの構造物が何かわからなくなる。 「食道は左に寄っている」。この豆知識があるだけで、画像の見え方がガラッと変わるはずじゃ。
そして動脈と静脈。 ただの「黒い丸」として暗記するのではなく、「血圧の高さ=硬さ」という生理学的なイメージを持てば、どちらが動脈かは一目瞭然じゃろ?
臨床の“目”で読む

現場(特にカテーテル検査室)では、エコーガイド下穿刺が日常的に行われていますが、ここで最も重要なのが「動脈と静脈の誤認防止」です。
- 穿刺前のルーチンワーク
- 血管に針を刺す前には、必ず「カラードプラ」で血流の向きを確認し、さらに「コンプレッション(圧迫法)」を行います。 「押して潰れるから、これは間違いなく静脈だ」 この確認作業は、当たり前の日常業務です。
- もし間違って刺したら…?
- もし静脈(点滴ルート用など)だと思って、誤って動脈を穿刺してしまったらどうなるでしょうか? 動脈は血圧が高いため、針を抜いた後の止血に非常に時間がかかります。 さらに、内出血が広がって大きな血腫ができたり、仮性動脈瘤といった重篤な合併症を引き起こすリスクも跳ね上がります。 患者さんの安全を守るため、「エコーで動脈と静脈を見分ける能力」は、絶対に間違えてはいけない最重要スキルなのです。
今日のまとめ
- 総頸動脈は、丸くて壁が厚く、押しても潰れない(高圧)。
- 内頸静脈は、動脈の外側にあり、押すと簡単に潰れる(低圧)。
- 食道は、気管の背側、やや「左寄り」(甲状腺左葉の裏)に見える。
- 臨床の穿刺において、動脈と静脈の誤認は重大な合併症につながる。



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