空間分解能補正を組み込んだPET画像再構成法で、集積部の辺縁を縁取ったような高集積を生じるアーチファクトはどれか。
- アップワードクリープ
- ギブスアーチファクト
- スターアーチファクト
- ストリークアーチファクト
- トランケーションアーチファクト
出典:厚生労働省公開PDF(令和7年版)
2.ギブスアーチファクト
解説
✔ 「くっきり」させようとして「やりすぎた」現象
PET画像は本来、ぼんやりとした眠い画像になりがちです。 そこで近年の装置では、「空間分解能補正(PSF:Point Spread Function補正)」という技術を使い、ボケを数学的に補正して、シャープな画像を作ります。
しかし、この補正が強く効きすぎると、集積が高い部分(腫瘍など)と低い部分(背景)の境界線で、信号値が跳ね上がってしまう現象が起きます。 これを数学用語で「ギブス現象」と呼び、画像上では「腫瘍のフチが白く縁取られたように強調される」アーチファクトとなります。
✔ 各選択肢について
1. アップワードクリープ
- 分野:心筋血流SPECT(特にTl-201)
- 現象:運動負荷直後に撮影すると、ハァハァしていた呼吸が整うにつれて横隔膜が上がり、心臓の位置がだんだん上(頭側)にズレていく現象。
- 結果:画像がブレて、心筋の下壁が欠損しているように見えてしまいます(偽陰性)。
3.スターアーチファクト
- 分野:SPECT(FBP法)
- 現象:高吸収・高集積の点から、星のように放射状の線が出る現象。
4.ストリークアーチファクト
- 分野:SPECT(FBP法)
- 現象:高集積部位(膀胱など)の周りに、帯状・スジ状のノイズが走る現象。
5.トランケーションアーチファクト
- 分野:PET/CT、SPECT/CT
- 現象:「はみ出し」です。CTの視野(FOV)よりも患者さんの体が大きい(腕など)場合、画像が欠けてしまい、正確な吸収補正ができなくなる現象です。
出題者の“声”

この問題は、現代のPETで標準的な「空間分解能補正(PSF補正)」の副作用を理解しているか試しておる。
技術の進歩で画像は鮮明になったが、計算で無理にエッジを立てようとすると「オーバーシュート(行き過ぎた補正)」が起きる。これこそが「ギブス現象」であり、設問にある「縁取り」の正体じゃ。
他の選択肢(アップワードクリープやストリークなど)は、臓器の動きや金属などの「物理的な原因」じゃが、ギブスだけは「計算処理による人工的な過剰演出」なんじゃ。 「きれいな画像=正しい」とは限らないのじゃ。
臨床の“目”で読む

ーなぜギブスアーチファクトを知る必要があるのか?ー
PET/CTの臨床現場でギブスアーチファクトが問題になるのは、腫瘍の評価を誤らせる可能性があるからです。
- SUV値の過大評価
- 腫瘍の縁にできた偽の高集積を拾ってしまい、SUVmax(最大集積値)を実際よりも高く測定してしまう危険があります。
- 治療効果判定の誤り
- 治療によって腫瘍は小さくなったのに、縁取りのアーチファクトが残っていると、「まだ活発な腫瘍が残っている」と誤って判断してしまう可能性があります。
ーPSF補正との関係ー
近年主流となっているPSF(点拡がり関数)補正を組み込んだ再構成法は、画像の分解能を劇的に向上させる一方で、このギブスアーチファクトを増強させることが知られています。
私たちは、新しい技術のメリットだけでなく、その副作用(アーチファクト)も正しく理解し、「これは真の集積か、アーチファクトか」を見極める読影眼を養う必要があるのです。
今日のまとめ
- ギブスアーチファクト = PETの空間分解能補正(PSF)でエッジが強調される現象。
- アップワードクリープ = 心筋SPECTで心臓が上にズレる(運動後の横隔膜挙上)。
- ストリーク = 膀胱などの高集積から出るスジ状のノイズ。
- ギブスアーチファクトはSUVmaxを高くしてしまうので要注意!



コメント
スターアーチファクトは核医学にありますよ。誤った教え方しない方がいいかと。
貴重なご指摘ありがとうございます。確認のうえ、記事内容を修正いたしました。
今後もお気付きの点がございましたら、ぜひお知らせいただけますと幸いです。引き続きよろしくお願いいたします。